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ホーム全日病ニュース(2020年)第959回/2020年3月15日号循環器病の基本計画策定で四病協などからヒアリング

循環器病の基本計画策定で四病協などからヒアリング

循環器病の基本計画策定で四病協などからヒアリング

【厚労省・循環器病対策推進協議会】美原副会長が全日病会員の取組みを説明

 厚生労働省の循環器病対策推進協議会(永井良三座長)は2月27日、循環器病対策基本法に基づく循環器病対策推進基本計画策定に向け、四病院団体協議会、日本医師会、日本看護協会などからヒアリングを行った。また、これまでの各団体のヒアリング結果を踏まえ、厚労省が基本計画の論点案を提示。論点案に対しては、様々な意見が出ており、次回以降も引き続き議論を行っていく。

循環器病診療体制構築の取組み
 全日病副会長の美原盤委員が、四病協として特定の活動は行っていないと前置きした上で、各団体の会員病院がそれぞれの地域で、循環器病の診療体制の構築に努めていることを報告した。地域の診療体制においては、急性期から回復期、慢性期までの医療連携、人材確保、人材育成、診療データの活用などが課題になっていると強調した。
 数年程度の短期で重点的に取り組むべき対策としては、「地域医療構想の実現」、「医師の偏在対策」、「医師の働き方改革」に対応した循環器病の提供体制の確保をあげた。特に治療医の確保を喫緊の課題とした。一定の判断基準で、毎年・3年・5年ごとの経過観察を設けて、特定健診など健診項目にMRI/MRAを導入することも提案した。医療機関別・二次医療圏別に診療プロセス・アウトカムに関する評価を行うことも短期的対策に位置づけた。
 10年単位の長期の重点的な対策としては、両親を含め学童期からの生活習慣病予防教育の重要性を強調し、具体例として、減塩啓発、禁煙指導、運動推進をあげた。脳梗塞に対する骨髄幹細胞再生医療など最新医療の早期導入の必要性も指摘した。
 全日病会員の取組みとして、脳神経センター大田記念病院(広島県)の事例を紹介。大田記念病院は、鞆の浦漁業協同組合の養殖わかめを使った健康レシピの食事を病院給食で提供するなど、「鞆の浦わかめプロジェクト」を実施している。わかめには、体内の余計なナトリウムを排出する効果があると言われている。また、大田記念病院は医療圏で、t-PA(血栓溶解療法)や血栓回収術の実績が高く、実績は公開されている。
 美原副会長は、全日病会員病院の調査で、200床未満の病院の6%が、脳梗塞発症後4.5時間以内に、組織プラスミノーゲン活性化因子の投与を求める「超急性期脳卒中加算」の施設基準を満たしていることを示した。
 群馬県では、美原記念病院が事務局の日本脳卒中協会群馬県支部と、前橋赤十字病院が事務局の群馬脳卒中救急医療ネットワーク(GSEN)が連携し、脳卒中の医療提供体制を支えている。t-PAや血栓回収術が可能な脳卒中受入れ病院を明確化しているほか、メディカルコントロール協議会主催で脳卒中救急に関わる人材育成にも取り組んでいることを示した。
 日本医師会の羽鳥裕常任理事は、短期の重点的な対策として、「適切な塩分摂取量管理、運動指導、投薬管理等の実施」をあげ、心不全患者のステージを「かかりつけ医がいかに丁寧にみていくことができるかが重要」と強調した。ステージに合わせたケアの違いを指摘するとともに、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムの体制構築が必要とした。
 中長期の重点的な対策として、◇幼少期からの健康教育◇ライフステージに合った診療体制の整備を指摘した。ライフステージに合った体制では、「先天性心疾患患者が成長し、小児科から専門医へ移行できるよう、適切な診療等に関する情報の移行・連携体制の構築」を例示した。
 日本看護協会の熊谷雅美常任理事は、短期の重点的な対策として、急性期の高度な看護実践によるクリティカルケアの実践をあげた。回復期・慢性期では、循環器病ケアチーム・外来・訪問看護における認定看護師・専門看護師などの役割発揮と活用を強調した。
 中長期の重点的な対策では、◇病院外来・診療所の看護機能の強化◇ナース・プラクティショナーの活躍◇エビデンス構築のための調査研究の推進─を主張した。
 また、日本医療機器産業連合会、米国医療機器・IVD 工業会、欧州ビジネス協会医療機器・IVD 委員会、日本製薬工業協会からもヒアリングを行っている。
 ヒアリングを受け、循環器病の診療体制をめぐり、拠点病院を指定するがん医療の提供体制を参考にした体制づくりを主張する意見など、委員から様々な意見が出た。美原委員は、「画一的な診療体制の構築は難しい。地域の実情に合わせ、地域医療構想や医師偏在対策、医師の働き方改革への対応と整合性を図りつつ、取り組む必要がある」と述べた。
 前回までのヒアリングを踏まえ、厚労省が同日、基本計画の論点案を提示した。大項目として、「循環器病の予防や普及啓発」「保健、医療、福祉サービス提供体制の充実」「循環器病の研究推進」の3本柱を提示した。
 2つ目の項目では、小項目として、◇健診の普及◇搬送体制◇機能連携や役割分担◇多職種連携◇患者が相談できる総合的な取組み◇緩和ケア◇後遺症への支援◇治療と仕事の両立◇専門職への教育・研修◇小児期・若年期から配慮が必要な対策─を設けている。
 これらに対しては、委員から様々な意見があり、項目の見直しを含め、論点案を整理し、次回以降も議論を続ける。
 研究推進については、委員から、適切なデータを収集し、調査・研究につなげるため、循環器病の患者のレジストリの仕組みを整えるべきとの意見が相次いだ。

 

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