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ホーム全日病ニュース(2020年)第960回/2020年4月1日号自己申告等で通算した労働時間に基づき追加的健康確保措置

自己申告等で通算した労働時間に基づき追加的健康確保措置

自己申告等で通算した労働時間に基づき追加的健康確保措置

【医師の働き方改革推進検討会】代償休息等の管理は医師が自ら行う

 厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(遠藤久夫座長)は3月11日、医師の働き方改革で時間外労働上限の暫定特例措置等が適用される医師への追加的健康確保措置の取扱いを議論した。複数医療機関に勤務する医師に対しては、本人の自己申告等により把握した「副業・兼業先での労働時間」を通算した上で、追加的健康確保措置を実施することを決めた。取扱いの詳細については、様々な意見が出ており、引続き議論する。
 年間1,860時間までの時間外労働を認める暫定特例措置等では、連続勤務時間制限、勤務間インターバル、代償休息など追加的健康確保措置が義務化される。複数医療機関で働く医師の時間外労働時間は通算されるのが原則で、一つの医療機関に勤務するのと同様に、追加的健康確保措置の実施が担保される取扱いを検討している。
 労働基準法には労働時間の把握や管理そのものを義務付ける規定はない。このため、通算した労働時間は、医師本人の自己申告等によって把握する。ただ、政府が一般労働者の副業・兼業を推進する方向性にある中で、厚労省の労働政策審議会労働条件分科会で、実効性のある労働時間管理のあり方の議論が別途行われている。
 医師に追加的健康確保措置を適切に行う観点では、簡便な方法として、◇面接指導等を毎月あらかじめ決めておいた時期に実施する◇勤務間インターバル、代償休息等の日々の管理は医師自ら行い、定期的に医療機関に報告する─とした。
 複数医療機関に勤務する医師に対し、どちらの医療機関で代償休息を取得させるかについては、面接指導の基本的な考え方があり、例えば、常勤と非常勤の場合は常勤で勤務している医療機関が実施する。そのような整理ができなければ、各医療機関で調整する。
 代償休息は、同月内に取得する必要があり、所定労働時間中に取得する場合や勤務間インターバルの幅の延長で対応する場合がある。今回、厚労省は、「必要な疲労回復を目的とする代償休息の趣旨に鑑み、あらかじめ予定されていた休日も、代償休息として算入できる」ことを提案した。休日であっても、しばしば出勤を命じられる医師にとっては、確実に休息を取ってもらう観点で有効と、厚労省は説明したが、労働組合側の委員は難色を示した。
 月の時間外・休日労働が155時間を超えた場合は、労働時間短縮措置を実施する必要がある。労働時間を把握するため、医師本人から月に一度、副業・兼業の労働時間の状況を報告してもらい、労働時間を通算し155時間を超えていれば、その翌月に短縮措置を講じる。こうした自己申告を基にした労働時間管理を可能とするため、医療機関は医師に対して、これらの取扱いを院内に周知する必要があるとした。
 面接指導する医師は産業医でなくてもよく、その場合の産業医の役割も整理された。日本医師会の今村聡委員は、「産業医は臨床医を兼ねている医師が大部分。現実離れの仕組みを作ると、成り手がいなくなる。どれだけの数が必要か。1回の面接でどれだけの時間がかかるかを想定すべき」と主張した。厚労省は、暫定特例水準等の指定を受ける医療機関数を想定し、全国で1万5,000人程度確保する必要があると回答した。
 暫定特例水準等の医療機関は、「評価機能」により、3年に1度、訪問評価の受審が義務化され、労働時間の削減状況などが評価される。その「評価機能」の組織体制も整理された。既存の法人を指定し、地方事務局の必置は求めない。法人内に委員会を設置、厚生労働大臣による一定の関与を行うことで、中立性・客観性を担保する。次回会合で具体的な法人を示す予定だ。

医師労働時間短縮計画GLで骨子案
 医師労働時間短縮計画策定ガイドラインの骨子案が示された。計画策定の義務化は、暫定特例水準等の指定を受ける予定がなくても、時間外労働時間が年間960時間を超える医師が勤務する医療機関であれば、対象となる。第1期は2021年4月1日までの任意の日から2024年3月31日まで。労働時間とともに、任意項目を含め、労務管理・健康管理、意識改革・啓発の各事項を記載する。労働時間数の目標を設定し、時間短縮に取り組む。
 また、医師の働き方改革に関する好事例が紹介された。
 具体例として、◇Beaconによる勤怠管理システムで当直中の医師の実労働時間を自動集計(ペガサス馬場記念病院)◇「自己研鑽」や「業務外の研究」を整理し、一覧表で共有(聖路加国際病院)◇医師事務作業補助者を増員し、診断書の代行入力等を実施(美心会黒沢病院)◇夜勤を希望する医師以外は夜勤を免除し、当直専門の医師を非常勤で雇用。受入救急車数などに応じて手当を付与(八女発心会姫野病院)─などが示された。

 

全日病ニュース2020年4月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年4月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190415.pdf

    2019年4月15日 ... スクシフト・タスクシェアや兼業の問. 題について発言していく ... する検討会(岩村正彦
    座長)は3月28. 日、2024年4月に ... 実施できなければ、代償休息を提供し. なければ
    ならない。 ... 見直し等に関する検討会(遠藤久夫座. 長)に、医師偏在 ...

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