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ホーム全日病ニュース(2020年)第960回/2020年4月1日号医学部の「地域枠」を一般枠と区別し明確化

医学部の「地域枠」を一般枠と区別し明確化

医学部の「地域枠」を一般枠と区別し明確化

【厚労省・医師需給分科会】恒久定員にも「地域枠」を組み込む

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会(片峰茂座長)は3月12日、大学医学部が設定する「地域枠」は一般枠と区別して選抜するものと位置づけた。地元出身者枠との区別や奨学金の有無との関係を今後さらに整理する。医師養成課程における医師偏在対策で「地域枠」の活用が重視されており、今後増員を図ることから、概念の明確化を行う。
 「地域枠」は、医師少数区域など特定の地域で診療に従事することを義務付けるもの。多くの場合、入学時に奨学金が付与され、特定地域での診療の義務を果たせば、返還を免除される。
 厚労省は、◇キャリア形成プログラムで定める医師不足地域で一定期間診療に従事することにより、奨学金返還義務が免除される◇地域枠学生として志願時に、そのような条件で診療にあたることを都道府県と本人・保護者が同意している◇都道府県境を超えて設定できる─との位置づけを示した。
 「地域枠」は入学試験の選抜時に、「一般枠」と区別することを明確化した。これまで一般枠で採用し、その後、医学生による「手上げ」で「地域枠」を埋めていた事例もあり、「地域枠」の定義が不明確だった。また、「地域枠」の具体的な設定は、都道府県の地域医療対策協議会で行うとした。
 厚労省の当初案では、「地域枠」と「地元出身者枠」を分けた。「地元出身者」とは、「当該都道府県に一定期間居住していた、もしくは当該都道府県内の高校を卒業する学生」である。しかし、「地元出身者を採用するのが、『地域枠』との言葉の使い方も定着している」(権丈善一委員・慶応大学教授)との意見が出た。また、「地元出身者」であり、かつ「地域枠」の場合もある。大学独自の「地域枠」を設定している場合もあり、奨学金の取扱いを含め、これらを整理し、厚労省が、「表」にして示すことになった。
 また、これまでの「地域枠」では、奨学金を返済し、特定の地域での診療の従事を放棄する離脱者が問題となっていた。厚労省の調査では、離脱者は入学後の年数とともに増える傾向にあり、特に学部6年次、卒後1~3年目に多かった。離脱理由は「希望する進路と不一致のため」が最多。次いで、「自己都合(理由不明)」、「留年・退学」、「結婚」となっている。
 なお、臨床研修で離脱者が出た場合は、離脱者を採用した臨床研修病院の補助金が減らされる。専門医研修では、離脱者が採用されないような仕組みを整えることや、都道府県の合意を採用の要件とすることを日本専門医機構に求めている。
 委員からは、「希望する進路と不一致のため」離脱した理由について、詳細に把握し、それに応じた対応策を検討する必要があるとの意見が相次いだ。

新たな医師需給推計の方法を了承
 2022年度以降の医師養成数を決める際に用いる新たな医師需給推計の推計方法も大筋で了承した。新たな医師需給推計は、医学部入学定員のうち、臨時定員の期限が2021年で切れるため、2022年度以降の医師養成数を決める際に、将来の医師の需給を見込み、適切な医師養成数を判断するために行う。
 現状で恒久定員は8,409人、臨時定員は1,011人。臨時定員は本来2019年度で終了するはずだったが、2021年まで2年間延長している。前回の医師需給推計でも、足元で医師は日本全体で不足しているが、人口減少に伴う医療需要の低下で、将来的に需給は均衡し、その後医師は過剰になると推計した。しかし、これは日本全体のことで、地域では医師偏在が放置されている。このため厚労省は、同分科会などで議論し、過去よりも強力な医師偏在対策を実施する方策を講じている。
 日本精神科病院協会の野木渡委員(代理)は、「地域の病院では医師不足が続いている。それでも臨時定員は廃止するのか」と質問。これに対し片峰座長は、「臨時定員は一旦廃止して、地域の医師不足の実情に応じて、恒久定員を超える分を『地域枠』で増やせる仕組みを議論する。恒久定員に『地域枠』を組み込むことも議論される」と述べた。厚労省も肯定した。
 新たな医師需給推計の手法については、基本的に前回と同様としている。医師・歯科医師・薬剤師調査などの基礎データを最新のものに反映させる。ただ、変更点として、①海外医学部卒医師の将来的な伸び②医師の働き方改革に関する検討を踏まえた時間外労働時間制限の設定を反映させる。
 海外医学部卒医師は近年、日本人がハンガリーなど外国の大学医学部を卒業し、日本の医師免許を取得するケースが増えている。ただ、中国人や韓国人が日本の医師免許を取得するケースも少なくない。今後、どのような変遷を示すかは予測が難しく、現状の推移を基にした推計とした。医師の時間外労働時間の前提は、近く公表される実態調査の結果を踏まえ設定する。

 

全日病ニュース2020年4月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 厚労省・医師需給分科会> 2020~2021年度の医学部臨時増員は現状

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180501/news03.html

    2018年5月1日 ... 2020~2021年度の医学部臨時増員は現状通り|第916回/2018年5月1日号 HTML
    版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本 ... 地域の医師偏在を考えれば
    恒久定員に地域枠を組み込むことを検討すべき」と発言した。

  • [2] 2020年度以降の医学定員の臨時増員の取扱いを検討|第915回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180415/news03.html

    2018年4月15日 ... 2020年度以降の医学定員の臨時増員の取扱いを検討|第915回/2018年4月15日
    号 HTML版。21世紀の医療を考える「 ... 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する
    検討会・医師需給分科会」(片峰茂座長)は3月23日、2020年度以降の医学部入学
    定員の臨時増員の ... を解決するため、政府は2008年度以降、地域枠の設定を中心に
    医学部の入学定員を恒久定員と臨時定員の両方で段階的に増やしてきた。

  • [3] 厚労省の医師需給推計方法に疑問。

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160601/news09.html

    2016年6月1日 ... 出産・子育てなど女性医師の労働時間を男性医師比「0.8」と高めに推計厚労省の医師
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