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ホーム全日病ニュース(2020年)第961回/2020年4月15日号新型コロナウイルス対応で初診からのオンライン診療認める

新型コロナウイルス対応で初診からのオンライン診療認める

新型コロナウイルス対応で初診からのオンライン診療認める

【オンライン診療検討会】受診履歴・患者情報ない場合も検討

 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(山本隆一座長)は4月2日、新型コロナウイルス対応で、感染が収束するまでの時限的な対応として、オンライン診療を初診から認めることを了承した。厚労省は、緩和を要望していた政府の規制改革推進会議に報告した上で、細部を詰める。初診料の取扱いなど診療報酬での対応も必要だ。
 医療は対面診療が原則であるため、対面に代替できる程度の患者の有用な情報をオンライン診療で確保できる場合に、例外的に認める形を取っている。具体的には、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で、対象となる患者や提供体制、通信環境など様々な規定を定めている。初診からのオンライン診療は基本的に認めていない。
 新型コロナウイルスの発生により、厚労省は感染状況に応じて、特例的な対応を段階的に講じている。
 2月28日の事務連絡では、慢性疾患を抱える定期受診患者に対し、診療計画を作成していなくても、かかりつけ医が情報通信機器で診療し、それまでも処方されていた医薬品の処方箋情報をファクシミリなどで薬局に送付。薬局は、その処方箋情報に基づき、調剤し、服薬指導ができることを明確化した。感染源との接触を少なくして、感染を避けるのが目的だ。
 3月11日の検討会では、慢性疾患を抱える定期受診患者の血圧が上昇するなど病状が変化した場合に、それまで処方したことのなかった医薬品の処方も可能とすることを了承した。
 これらは、「再診」の枠内だが、初めての医療機関を受診する場合や新たな症状・疾患で受診する「初診」についても、新型コロナウイルス感染の拡大を踏まえ、今回対応を図ることになった。想定するのは、◇継続した発熱等、新型コロナウイルスへの感染を疑う患者の治療◇軽度の発熱、上気道症状、腹痛、頭痛等で対症療法として解熱剤等の薬を処方─のようなケースだ。初診であっても、オンライン診療で対応できる症状・疾患の範囲が考えられる。
 対象となる患者としては、「ケース1 すでに診断され、治療中の慢性疾患で定期受診中の患者」、「ケース2 過去に受診履歴のある患者」、「ケース3 過去に受診履歴のない患者」、「ケース4 過去に受診履歴はないが、かかりつけ医等からの情報提供がある患者」─をあげた。検討会はこれらの是非を議論した(左の上図を参照)。
 厚労省は、特例を認める際に考慮すべきこととして、初診に対するオンライン診療のリスクの考え方を整理した。
 それによると、◇全身状態の把握や一定の診断ができないリスク◇オンライン診療を行うまでオンライン診療で対応可能な状態や疾患であるかの把握ができないリスク◇なりすまし(適切な本人確認が困難)や通信傍受等、セキリュティに関するリスク◇費用徴収や処方薬横流し等のリスク◇すぐさま治療が必要なケースに対応ができないリスク◇重症化兆候を見逃すリスク◇患者が想定した疾患以外を見逃すリスク─がある(左の下図を参照)。

受診履歴のない患者には慎重に対応
 これらを踏まえた検討会での議論の結果、患者の状態が把握できている「ケース1」や、受診履歴のある「ケース2」、受診歴はないが患者情報が得られる「ケース4」については、委員の合意が得られた。
 受診履歴もなく患者情報も得られない「ケース3」は、「新型コロナウイルス患者が明らかに増加している期間のみ、外来医療提供体制が危機的な状況である地域に限定」した上で、認めることを論点とした。その場合でも、「診断や重症度の評価に関するリスク」、「緊急的な処置や治療が困難である」、「運用のリスク」への対応が求められる。
 厚労省は、「診断や重症度の評価に関するリスク」に対し、「初診からオンライン診療を行うべきではない症状や状態のリストを作成し、患者にリストに該当しないことや基礎疾患がないことを確認する」ことなどを示した。「緊急的な処置や治療が困難であること」に対しては、対面診療による医療提供体制を確保しておくことを要件にするとした。「運用のリスク」に対しては、汎用ソフトを用いた場合の受診フローで推奨例を示すことなどをあげ、それぞれの対策を講じる必要があるとした。
 委員からは特に、「ケース3」の患者にオンライン診療を認めることに関し、賛否両論があった。
 慎重な対応を求める意見のほうが多く、「全く診たことのない患者をオンライン診療により、初診で診療することは非常にリスクがある。重症化を見逃すおそれがある」(今村聡委員・日本医師会副会長)などの意見が出た。
 一方で、フューチャー株式会社代表取締役会長の金丸恭文委員は、「医療崩壊を起こさせないため、非常時対応として、オンライン診療で医療が完結する環境を作るべき」と主張した。山本座長は、「ケース3」の実施にあたっては、リスクを低減させる方策など、さらなる検討が必要と総括した。
 厚労省は、初診からのオンライン診療で合意を得たことを踏まえ、特例的な対応の詳細を詰めるとともに、簡易な情報通信環境によるオンライン診療の検討や、実施が可能な医療機関リスト作成も進める考えを示している。

 

全日病ニュース2020年4月15日号 HTML版

 

 

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    2019年4月15日 ... 検討会(山本隆一座長)は3月29日、 ... る場合は、医師と看護師が患者の病状 ... 協会
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  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200401.pdf

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    東京都千代田区神田猿楽町 2−8−8 住友不動産猿楽町ビル 7F/ TEL(03)5283−
    7441/ FAX(03)5283−7444 ... 検討会(山本隆一座長)は3月11日、.

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