全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2020年)第963回/2020年5月15日号医療・介護のリハビリテーションの連携について報告書

医療・介護のリハビリテーションの連携について報告書

医療・介護のリハビリテーションの連携について報告書

【高齢者医療介護委員会】介護のリハビリ開始までのタイムラグ短縮を提言

 医療と介護のリハビリテーションの連携に関する調査報告書がこのほど、高齢者医療介護委員会でまとまった。「退院からの通所・訪問リハビリテーション・医療提供施設への円滑な移行に関する調査研究事業」で、2019年度の老人保健健康増進等事業として実施した。
 医療機関を退院後に介護保険の通所・訪問リハビリテーションに移行するまでのタイムラグが、その後の利用者のADL の変化に影響することが調査結果から明らかとなり、報告書はタイムラグを短くするために情報提供を早期に行うことを提言している。
 リハビリテーションは、急性期・回復期・維持期(生活期)と一貫した提供が重要であり、疾患別リハビリテーションから維持期リハビリテーション等への円滑な移行が求められる。また、要介護者・要支援者に対する維持期・生活期のリハビリテーションについては、介護保険への移行が進められていることから、特に医療・介護間の連携が求められる局面といえる。
 このような状況を踏まえ、高齢者医療介護委員会は医療・介護間のリハビリテーションの連携に関する実態や課題を把握し、今後の連携推進に資する知見を得ることを目的に調査を実施した。
 調査では、病院・診療所(発送数3,500・回収率28.0%)、介護老人保健施設(同1,500・20.1%)、介護医療院(同121・33.1%)、通所リハ事業所(同5,121・13.7%)、訪問リハ事業所( 同5,121・11.2%)に対して、郵送によるアンケート調査を実施した。また、アンケートに先立って事前インタビュー調査を実施した。

(1)介護保険におけるリハビリテーションの実施内容
 退院後の介護老人保健施設、介護医療院、通所リハ、訪問リハにおけるリハビリテーションの実施内容をみると、筋力向上訓練、関節可動域訓練などの身体機能に働きかけるリハビリテーションが多く、更衣・調理・掃除等の生活行為や仕事・余暇活動練習等の社会参加に関する内容が少ないことがわかった。このため、医療・介護間の情報提供においては、身体機能に偏ることなく、生活期のリハビリテーションにおける活動や社会参加の意識を喚起するアプローチが有効としている。

(2)退院からの通所・訪問リハ開始までのタイムラグ
 退院から介護保険のリハビリテーションが開始されるまでのタイムラグをみると、介護老人保健施設や介護医療院では、ほぼすべての疾患において中央値が1.5日以内となっていた。これは、退院7日前には入所の相談を開始し、退院後に直接入所しているためと考えられる。
 一方、通所リハ、訪問リハについては、医療機関併設の訪問リハでは平均8.5日、医療機関併設の通所リハでは11.1日のタイムラグが生じていた。また、400床以上の病院を退院した利用者は通所リハ、訪問リハともにタイムラグが長かった。
 退院から通所・訪問リハビリの開始までの日数(タイムラグ)は、利用に関する事前の相談や退院の連絡を早期に行ったケースほど短い傾向がみられた。相談・連絡が退院2日前以降になると、タイムラグは顕著に長くなる傾向にある。また、入院していた医療機関からの診療情報提供書の提供時期が遅くなるほどタイムラグが長くなる。

(3)通所・訪問リハ開始までのタイムラグとADLの変化
 調査では、通所リハおよび訪問リハについて、退院後のタイムラグと通所リハ・訪問リハ開始から1カ月後のADL の変化(Barthel Index の上昇幅)を調べた。
 その結果、退院後から通所リハの利用開始日までのタイムラグが14日以内の利用者は、15日以上の利用者に比べてBI の上昇幅が有意に大きかった。
 また、退院から訪問リハの利用開始日までのタイムラグが7日以内の利用者は、8日以上の利用者に比べて、BIの上昇幅が有意に大きいことがわった。
 これらの結果を踏まえ、報告書はタイムラグを短くするために、「利用に関する最初の相談」や「退院の連絡」、「診療情報提供書の提供」等の連絡や情報提供を早期に行うことが有効と提言している。

 

全日病ニュース2020年5月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 退院からの通所・訪問リハビリテーション・医療提 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/200410_4.pdf

    大きい。これに対し、更衣・調理・掃除等の生活行為や、仕事・余暇活動練習等の社 ...
    ②退院から通所・訪問リハビリテーションまでの日数(タイムラグ)について、利用に ... ③
    タイムラグの長さと ADL の変化との関係についてみると、退院後に通所リハビリテー.

  • [2] 令和元年度 老人保健事業推進費等補助金「退院からの通所・訪問 ...

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/200410_3.pdf

    タイムラグの長さと ADL の変化との関係についてみると、退院後に通所
    リハビリテーションに移行した. 者については、退院から通所 ... 実際に介護側に伝達する
    書式としては、リハビリテーション計画報告書、生活行為申し送り表(日本. 作業療法士
    協会作成 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。