全日病ニュース

病院の医業利益率が10ポイント超の減少

【病院３団体】新型コロナの影響で病院経営は深刻な状況に

　全日病（猪口雄二会長）と日本病院会（相澤孝夫会長）、日本医療法人協会（加納繁照会長）の３団体は５月18日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う病院への影響を示すため、病院経営状況緊急調査（速報値）の結果を発表した。新型コロナ患者を受け入れた病院の４月の医業収入は前年比で12.7％の減少。医業利益率は11.8％のマイナスで、前年比12.1ポイントの落ち込みとなった。調査対象病院全体の医業利益率の落ち込みは10ポイントであった。
　緊急調査の結果を受け、３団体は加藤勝信厚労相に要望書を提出した。「特に新型コロナ感染患者の入院を受け入れた病院の経営状況の悪化は深刻であった。（コロナ患者を受け入れていない病院を含め）病院への緊急的な助成がなければ、今後の新型コロナへの適切な対応は不可能となり、地域での医療崩壊が強く危惧される」と訴えた。
　調査は３ 団体に加入する全病院（4,332病院）を対象に行い、５月15日時点の有効回答数は1,141病院（26.3％）。調査結果では、部分的に有効でない回答もあり、経営状況全体の回答数は1,049病院となっている。
　回答病院を規模別にみると、100 ～199床が398病院で最も多く、次いで20～ 99床が229病院、300 ～ 399床が153病院。また、「帰国者・接触者外来」を設置している病院は29.0％、新型コロナ患者の入院を受け入れた病院は26.3％、一時的に病棟を閉鎖した病院は13.7％だった。なお、公立・公的病院と民間病院は区別していない。
　今年４月の経営状況を前年比で比べた。有効回答全病院（1,049病院）の結果（下表を参照）をみると、医業収入は10.5％ の減少（ 入院8.9％ 減、外来11.5％減）、医業費用は1.4％の減少（医薬品費4.3％減、給与費1.3％増）。医業利益率はマイナス9.0％で前年比10ポイントの減少となっている。
　新型コロナ患者を受け入れた病院の医業収入は12.7％の減少（入院12.2％減、外来12.0％減）、医業費用は2.0％の減少（医薬品費6.9％減、給与費1.4％増）。医業利益率はマイナス11.8％で、12.1ポイントの減少。
　新型コロナ患者の受入れなどにより、一時的に病棟を閉鎖した病院は、さらに状況が厳しい。医業収入は14.9％の減少（入院14.2％減、外来14.9％減）、医業費用は1.6％の減少（医薬品費6.7％減、給与費2.3％増）。医業利益率はマイナス16.0％で前年比15.7ポイントの減少となった。
　患者数の状況では、外来の初診患者がいずれも４割以上減少している。手術は２割程度、救急受入れ件数は35％程度減少している。
　会見で、全日病の猪口会長は、「病院はそもそも非常に利益の薄い経営構造にある。このような状況が続けば、経営的に立ち行かなくなる病院が続出する」と強調。「これから第２波、第３波が来れば、対応することができなくなり、医療崩壊が現実化する」と訴えた。また、「医業費用は、人件費が多くを占め、固定費が大部分を占めるため、そんなに下げられない」と説明した。
　医法協の加納会長は、「新型コロナ患者に対応したのに、その分の支援が受けられていない状況」と指摘。新たな支援が不可欠とした。猪口会長は、「新型コロナ患者への入院の診療報酬は倍増されたが、その他の減収分があり、全体でカバーされていない」と述べた。