全日病ニュース

中小病院の病院機能評価認定率向上を目指して②

美原　　盤（全日本病院協会 副会長、診療アドバイザー）
岩渕　泰子（病院機能評価委員会 特別委員、看護アドバイザー）
中嶋　照夫（病院機能評価委員会 特別委員、事務管理アドバイザー）

　全受審支援プロジェクトの目的は、全日病会員の多くを占める中小病院の病院機能評価受審をエンカレッジすることにある。その意味から今回の受審支援対象病院は、地域包括病棟（37床）の樫村病院を選定し、受審支援の状況を全日病ニュースの上で経時的に報告することになった。
　支援活動の第一歩は、対象病院の姿と実情を詳細に把握することが必要である。そのために病院の理念、行動指針、年間目標、組織図、現況調査票、そして自己評価票などの提出をお願いした。
　「理念」とは、その病院の考え方、存在意義を表すもの、「行動指針」とは、理念達成のために具体的にどのように行動するかを定めたもの、そして「目標」とは、ある目的に対して一定の期間(例えば1年間)にどこまでのレベルに到達するかを示したものである。当該病院の「理念」、「年間目標」は「行動指針」に近い内容のものであり、「年間目標」は客観的に評価できるものではなかった。これらの用語についてはその意味を認識し、それぞれの内容を検討することが重要と思われた。
　現況調査票に記載する項目は、単に病院のデータ管理姿勢を問うものではない。事務部門が発出すべきデータ類は、労基法の他、多くの法制度で病院管理上必要とされる内容が網羅されている。中小病院においては事務部門のマンパワーが十分でないことも多いと思われるが、病院規模の大小にかかわらず適切にデータを把握する体制を構築することが必要である。
　自己評価調査票については、診療・看護・事務管理、それぞれのアドバイザーが担当項目についてコメントした。当該病院においては、自らＣ評価としている項目が多かった。初めての受審であり、謙遜、あるいは厳しく自己評価しているものと推察されたが、求められるハードルを必要以上に高く捉えているようにも感じられた。このことが中小病院の受審を妨げる大きな要因になっているのではないだろうか。
　機能評価はそれぞれの病院の見合った機能を求めているのであり、中小病院に大病院と同じ内容を要求しているのではない。自分たちが行っている医療に自信をもって欲しい。とはいうものの、医療の質におけるストラクチャー、プロセスを意識した対応は必要である。Ｃ評価として、マニュアルがない、手順が明確でない、などの記載があった。マニュアル（ストラクチャー）は業務の標準化には必須であり、実際にこれに沿って業務が行われる（プロセス）ことが期待される。そのためには実際に普段行っている業務をマニュアルとして明文化し、その流れを検討することから始めたらよいと思われた。
　以上、今回は書類のチェックを行った。これからそれぞれの担当アドバイザーが現地を訪れて支援することを予定している。機能評価は医療の質改善のためのツールであり、職員が一丸となって準備されることをお願いする。

鈴木紀之特別委員の追悼
　鈴木紀之氏は、平成16年から当協会の機能評価委員会に特別委員として参画されました。彼は、セミナーや学会時の委員会企画等において多くの講演や発表をされ、委員会の活動を意義高らしめる等その功績は非常に大です。
　しかし、昨年来体調を崩し、長い闘病生活を余儀なくされました。本稿主題の中小病院機能評価受審率向上キャンペーンは、彼の独創的提案から生まれました。この運動を契機として、会員病院の受審促進により『医療の質向上』への貢献が大いに期待されており、今春、まさに提案が胎動を始めました。この時に合わせるかのように、薬石効なく、彼は、去る4月24日ご永眠されました。謹んで、ご冥福をお祈り申し上げます。