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ホーム全日病ニュース(2020年)第966回/2020年7月1日号業界団体が2020年度薬価調査見送りを主張

業界団体が2020年度薬価調査見送りを主張

業界団体が2020年度薬価調査見送りを主張

【中医協・薬価専門部会】診療側委員は薬価調査見送りに理解示す

 中医協の薬価専門部会(中村洋部会長)は6月10日、2020年度に実施する予定の薬価調査について、医薬品卸・製薬業界関係者からヒアリングを実施した。新型コロナウイルス感染症拡大による医薬品流通への影響は大きく、薬価調査の実施に反対する意見が出され、診療側委員も同調した。
 同日の薬価専門部会もオンラインで開催し、YouTubeで放映された(写真)。
 薬価調査は通例、薬価改定の前年に、2年に1度実施されてきたが、2018年度の薬価制度抜本改革において、その中間年にも薬価調査・薬価改定を行うことが決まった。中間年の薬価調査のやり方について、すべての医薬品卸から、大手事業者を含め調査対象を抽出し、全品目の薬価調査を実施することが中医協で了承されたが、その他の具体的な方法は議論されてこなかった。
 2020年度には初めて中間年の薬価調査が行われる予定だが、医薬品流通は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けている。厚生労働省は5月27日の薬価専門部会に、現在の状況と今後の見通しを関係団体からヒアリングすることを提案し、了承された。
 ヒアリングで日本医薬品卸売業連合会の渡辺秀一会長は、新型コロナ感染症の緊急事態宣言下でほとんどの医薬品卸業者が医療機関・保険薬局への営業活動を自粛したと報告。緊急事態宣言解除後も、医療機関から納品以外の訪問を自粛する要請が続き、5月中旬時点で6割弱の卸業者が見積書の提示に至っていないと報告した。
 今後は、未妥結減算制度も念頭におき、短期間での価格交渉となるため、単品単価契約や早期妥結などを踏まえた適切な価格交渉は困難と指摘。「実施できる状況ではない」と訴えた。
 日本製薬団体連合会と米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)を代表して日薬連の手代木功会長は、製薬メーカー各社は、新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンの研究開発・臨床試験を進め、安定供給の確保に努めていると説明。原薬等を海外から調達している品目では、調達コストの上昇が生じていることも報告した。その上で、薬価調査・薬価改定を実施する状況にはないと主張した。日本医師会の松本吉郎委員は、「通常の医薬品流通とは全く異なる状況にあることがわかった。意見を尊重すべきだ」と理解を示した。
 田宮憲一薬剤管理官は、「現時点では、来年度に薬価改定を実施するとされている。その前提となる薬価調査を実施するか否かは、7月の骨太方針がひとつのタイミングであり、政府の方向性を踏まえつつ決定する。薬価調査を実施する場合の調査内容は、(総務省の統計調査の承認手続き等のため)6月中に中医協で了解をもらい、準備を進める必要がある」と述べた。
 保険者側の委員からは、薬価調査の実施を前提に、薬価調査の方法を中医協で議論すべきとの意見が出された。
 同日の中医協総会でも、薬価調査のヒアリング結果が報告された。診療側委員から、薬価調査実施見送りを求める意見が相次いだ。

 

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