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環境が厳しくなる中で経営企画部門の機能強化が不可欠に

環境が厳しくなる中で経営企画部門の機能強化が不可欠に

シリーズ●病院事務長が考えるこれからの病院経営④人材育成が病院の発展を左右

 病院の経営環境が厳しくなる中で、経営の一翼を担う病院事務長の役割はますます大きくなっています。シリーズの第4回は、上尾中央総合病院の加藤守史部長代理にご寄稿いただきました。

病院事務長に求められる役割とスキル
 病院事務長に求められる役割とスキルに関しては、病院の経営主体や規模、機能の違いにより異なり、その病院が置かれている環境にも大きく左右されると思います。健全経営と良質な医療を提供することは一体であることは自明の理であり、経営部門の事務長が負う責任は必然的に重くなります。当グループには規模や機能の違う病院があるが事務長の役割については、共通している部分もあると思っています。病院執行部に対して、目標設定や計画を立案するための経営を判断するために必要なデータの収集と提供、年度予算など立てた目標や計画の進捗の管理を行うのが事務長だと思います。もともと多くのデータを取り扱う役職ですが、事務長が取り扱うデータは今後ますます増えていくことは容易に予想ができます。事務長はデータに強くなくてはなりません。院長は、常に自院の経営の事態を理解し、正しい経営判断を下さねばなりません。しかし、実際には日々の臨床に追われて、経営状況を正確に把握できないこともあります。また、スタッフに協力を仰ぎたくても、売り上げや費用、患者数といったデータを漠然と示すだけでは理解を得られず、適切な判断ができないこともあります。院長を含めた執行部が経営判断をするための地域医療圏において、さまざまなデータを用いての病院の立ち位置や方向性を導き出すことは事務長の役割だと思います。また、事務長の仕事では、健康保険法や医療法など各種法制度、財務、経理、労務管理、物品管理、システム管理などについての幅広い知識や企画力が求められます。同時にさまざまな専門職種で構成される組織を管理する役割も求められます。院長の周りには情報共有できるスタッフが多くありません。それゆえに、ストレスを感じていることが多いはずです。院長とは、日々コミュニケーションをとり、必要な情報を共有することが重要です。的確な事例を挙げて、意見を具申することもあります。同じ執行部として、悪い情報もすべて共有することも役割だと思います。病院経営には厳しい時代です。経営戦略や経営管理、組織作りなど多くの課題を考え、解決していかなくてはならない時代です。いろいろな情報を収集して、病院に求められる医療を提供するため、物事にスパイスを加え、資源を成果に変え、経営状態を高めるためには、職員がそれぞれ課題を見つけて解決していくことが不可欠です。そのための支援やアドバイスを能力や状況に合わせて行う事が事務長の役割の一つだと思います。

地域医療構想、地域包括ケアシステムの対応
 当院が位置している医療圏は高齢者の増加などを背景として、2025年以降も医療需要が増加すると見込まれています。近隣の医療圏に多くの入院患者が流出している中で、一般病床の利用率は、全国平均、県平均を下回っている状況にあります。また、将来必要となる機能別の病床の必要量と現時点での病床機能報告との比較では、地域包括ケア病棟など回復期機能の不足が見込まれています。その中で当院は、地域の基幹病院として救急医療、がん治療、先進医療を中心に医療を提供しています。救急医療では24時間365日診療体制をとっており、断らない医療を実践しています。医療圏の中核病院に位置づけられ病院独自で循環器疾患の24時間救急受け入れの整備や、県の急性期脳梗塞治療ネットワークにも参加しています。当院が位置している医療圏では当院を含め3つの医療機関が特定集中治療室管理料の基準をもち医療圏の高度急性期医療に尽力しています。手術支援ロボットの導入など、先進医療も積極的に導入しています。また、当院は医療圏の南端に位置しており疾患によってはカバーする範囲に偏りがあり、人間ドック・健診部門が併設されており、長期間にわたり地域住民の健康増進に当たっています。2015年11月より地域医療支援病院の運用を開始し、登録紹介医との緊密な連携を構築し、外来患者の紹介・逆紹介に対する「かかりつけ医制度」を推進しています。FAX検査予約等による検査機器の共同利用による医療機関の機能分化の強化と連携の推進に努めています。毎月2,000件以上の逆紹介をしていますが、病床稼働率は高い水準を維持しています。紹介患者を受け入れていくために、病床回転率を上げ効率的に病床運営を行うことが課題の一つとなっています。また、増加が見込まれる在宅医療等の需要に対応するため、医療・介護を横断的に支援する機能を強化し、在宅医療等に関わる多職種による連携体制の構築を行う必要があります。地域における高齢化の進展等に伴う医療需要の変化に的確に対応していくために、地域医療構想調整会議における検討状況も踏まえて、今後の対応について、検討していく必要があります。地域支援病院である当院は、診療所等では提供が困難な高度治療や検査、手術などを必要なときに迅速かつ効果的に提供するため医療機関の機能分化の強化と連携の推進に努めており、地域に必要な医療を安定的かつ継続的に提供していくため、必要な人員の確保・育成が課題です。また、地域の中で信頼され生き残っていくには地域医療構想調整会議での協議等を踏まえながら、地域に不足する機能に対する対応についても検討していく必要があります。

病院に求められる組織
 病院を取り巻く環境は厳しさを増す中、今後経営部門を拡充・強化する医療機関はますます増加することと思います。医療経営が厳しくなる中で、院内の業務改善のニーズは高まり、地域医療や医療機関の機能分化が進む中で、経営企画部門は院内のみならず院外への対応も重視されるようになっているからです。例えば、厚生労働省はDPCなどによって医療機関の経営データを収集し、病院の経営実態を把握するようになっています。病院側も医療経営についてのエビデンスを蓄積し理論武装をしなければ、そうした行政側と対等に渡り合うことはできません。そこで病院の企画や運営を補佐する経営企画部門の役割は大きいものと言えます。経営企画部門はその重要性が高まり出番が増えていけばいくほど、裏方となり縁の下の力持ちとして組織を支えるべきです。そのほうが調整役としての機能を上手に果たせるからです。業務改善のためには、院内の日常業務に絶えず目を配り、部門間を調整し、スタッフが働きやすい環境を整える必要があるが、そうした仕事は裏方として行います。また、経営戦略の実行でも、前面に立つのはあくまでも院長であり、経営企画部門は裏方として病院を支え、こうした組織を作っていくことも事務長には求められます。

病院に必要な人材の育成と確保
 病院の成長には優秀なスタッフが不可欠であります。病院のような労働力が大きく流動する業界では、優秀な人材がよりよい環境を求めて退職するケースもみうけられます。せっかく成長してきたスタッフが生きがいや仕事へのやりがいを見いだせる環境づくりが重要です。人材育成は、スポット教育を行っても効果は限定的です。教育と成長が継続的に循環することによって、よりよい組織環境ができます。人材育成を重要視している組織では、スタッフの定着と意欲の向上につながり、優秀なスタッフも集まりやすくなります。病院にとって人材育成は容易なことではなく、お金と時間もかかります。しかし人材育成を大切な投資として、どこまで真剣に取り組むことができるかが今後の病院の発展を左右すると考えます。当院では、事務職の人材育成にもキャリアラダーを用いていますが、キャリアラダーでの評価を賃金への反映のための評価としていません。当面は、能力開発のみを目的として、スタッフが達成感とやりがいを感じながら確実にステップアップを踏んでいくための人材育成システムとして活用していきたいと思っています。人材は十人十色、特に事務職スタッフの能力の幅にもかなりの個人差があります。したがって、組織における必要なスタッフ像を体系的に明確にしておくことが大切です。

最後に
 病院の事務長には、医事の知識をはじめ多くの法律の理解を必要とします。自身や組織のネットワークを駆使して医療界の動向をキャッチして今後の見通しを立てるなど、幅広い経験と視野を持つことが重要です。日本では、高齢者の在宅シフトや病床転換など、医療界が大きく動いています。今後は医療費削減の流れを受け、診療内容の見直しの必要性が高くなることが予想されます。また、診療報酬改定が今後、地域医療構想にどのように関わっていくのかまだ明確に示されていませんが、病床編成など求められる時代であり、次期改定にむけ自院の役割や機能を明確に示せるよう準備が必要であります。その他、院長と上手く連携を取りながら細かい業務をこなす能力、職員との円滑な関係を築くコミュニケーション力、マーケティングも任される場合は医療以外の幅広い専門知識が必要となる時代となっています。

 

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  • [1] 病院事務長に求められる役割とスキル|第899回

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170801/news10.html

    2017年8月1日 ... 医療政策が大きく変わりつつある中で、経営の一翼を担う病院事務長の役割はますます
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