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ホーム全日病ニュース(2020年)第967回/2020年7月15日号不適切な医療機関HPで143サイトが改善されず

不適切な医療機関HPで143サイトが改善されず

不適切な医療機関HPで143サイトが改善されず

【厚労省・医療情報提供内容等検討会】ネットパトロール事業の状況を報告

 厚生労働省は7月2日の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(尾形裕也座長)に、虚偽・誇大広告を含む医療機関の不適切なホームページ(HP)に対するネットパトロール事業の状況を報告した。2020年3月末時点で、1,204サイトが審査の対象となり、医療機関に通知されたものの、改善が確認されていないHPが143サイトあった。
 ネットパトロール事業は、美容医療などで医療機関のHPの虚偽・誇大広告を原因とした消費者トラブルが相次いだことから、2016年8月から始まった。医療広告ガイドラインと照らした違反の有無を都道府県から委託を受けた業者が監視する。違反があれば、違反であることを伝え、自主的な見直しを求める。改善が認められない場合は、都道府県に伝え、都道府県が指導する。
 2020年3月31日時点の対応状況を厚労省が報告した。対応では、「通報受付」と「能動監視」がある。「通報受付」は主に一般から厚労省への通報による。「能動監視」では通報を待たずに、違反の事例に多いキーワードなどで検索し、特定する。昨年度からは全国消費生活情報ネットワークシステムによる消費者からの苦情相談データを活用し、キーワードを抽出しているという。
 報告内容をみると、「通報受付」での審査は974サイト、「違反あり」とされたのは919サイト、医療機関に通知されたが、改善が確認されなかったのは134サイトあった。改善は717サイト、広告中止は32サイト、医療機関対応中は66サイトだった。
 「能動監視」で審査を行ったのは230サイト、「違反あり」とされたのは218サイト、医療機関に通知が行われたが、改善が確認されなかったのは9サイトあった。改善は138サイト、広告中止は2サイト、医療機関対応中は74サイトだった。
 分野では、美容(162サイト)、歯科(800サイト)、がん(16サイト)が多くなっている。
 一つのHPで平均約5カ所の違反が確認された(5,884カ所)。このうち、約半数(2,963件)が、主に自由診療の広告規制である「広告が可能とされていない事項の広告」に該当した。
 自由診療である美容医療の違反割合をみると、「美容注射」が38%で最も多く、次いで「発毛・AGA」の13%、「アンチエイジング」の9%、「リフトアップ」の8%となっている。歯科では、「インプラント」が48%で約半数を占める。
 違反の種類で2番目に多いのは、「誇大広告」の900件、3番目は、いわゆる「ビフォー・アフター」で700件。4番目は「比較優良広告」で394件となっている。また、「その他」は340件だが、この中で、特に「美容」において、「キャンペーン」と銘打ち費用により誘引する事例が目立つ。

全国統一の検索サイトの検討進める
 医療機能情報提供制度の全国統一の検索サイトの構築に向けた議論も行った。今年度中に調査研究事業報告書を作成し、システムを具体化させ、2024年度までの稼働を目指す。
 医療機能情報提供制度は患者・国民が適切な医療機関を選択できるよう、都道府県がHPを通じて医療機関の情報を提供するもの。2007年度からスタートしたが、認知度が低く、あまり活用されていないとの課題がある。また、掲載情報やシステムの作り方が都道府県でばらつきがあることも問題視されている。
 厚労省の「NDBを活用した全国医療機能情報提供制度・全国薬局機能情報提供制度に関する調査研究」は昨年度、全国統一システムの基本方針をまとめた。方針を①報告する医療機関の負担軽減②正確な情報の報告・管理③各地域の独自性を活かす情報提供④わかりやすい情報提供─に整理した。
 例えば、医療機関が届け出ていた実施件数の報告はNDB(ナショナル・データ・ベース)で集計し、医療機関の負担を軽減する。報告時期は統一し、公表項目を標準化することで正確性を担保する。都道府県の独自項目は統一後も引き続き自由に設定できるようにし、外国語での利用も可能とする。
 これらの方針を踏まえ、今年度は新たな調査研究で、システムの具体化を図り、年度内に報告書を公表する予定だ。その後、実際のシステム構築を開始し、2024年度までの稼働を目指す。
 日本医療法人協会副会長の小森直之委員は、「今回の新型コロナの感染拡大では、医療機関が予防接種を休止せざるを得なくなるなど、提供する医療が急に変わることがあった。公表項目の更新は1年というが、それより短い頻度で変わる場合の医療機関の対応はどうなるのか」と質問。厚労省は年度内で変わる項目の取扱いは今後の検討課題と回答した。
 また、小森委員は都道府県独自の公表項目が全国統一システムと分離されるのかを質問。厚労省は、「統一できない公表項目は、全国統一システムとリンクされる形になる」と説明した。
 一方、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、現状の報告制度が、「かかりつけ医を見つけるために有効なシステムのはずなのに、そうなっていない」と指摘。患者目線で情報が検索できるシステムの構築を求めるとともに、かかりつけ医機能の公表項目を充実させるべきと主張した。これに対し、日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「かかりつけ医に求める機能は患者・国民により異なる」と述べ、公表項目の選定には慎重な検討が必要とした。

認定医師を広告ガイドラインに追加
 医師少数区域などで勤務した医師が、「医師少数区域経験認定医師」である旨を広告できることを医療広告ガイドラインに加えることを、同日の検討会で了承した。また、医療広告ガイドラインの記載の変更も了承した。
 医師偏在対策の一環で、医師少数区域などで勤務した医師が、厚生労働大臣から「医師少数区域経験認定医師」に認定される制度が今年度から始まった。原則として同一の医療機関に週32時間以上、6カ月以上勤務した医師が対象となる。認定を受けると、医師の派遣などを行う地域医療支援病院の管理者になることができる。

 

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