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ホーム全日病ニュース(2020年)第968回/2020年8月1日号超党派議連がコロナ禍で苦しい病院経営の状況をヒアリング

超党派議連がコロナ禍で苦しい病院経営の状況をヒアリング

超党派議連がコロナ禍で苦しい病院経営の状況をヒアリング

【病院5団体・日医】第二次補正の予備費などを念頭に病院への直接的な支援を訴える

 全日病をはじめとする病院5団体と日本医師会は7月17日、超党派「コロナと闘う病院を支援する議員連盟」総会に出席し、病院経営に関してヒアリングを受けた。全国の病院が、新型コロナの影響で苦しい経営状況にあることを報告し、第二次補正の予備費や2021年度概算要求を念頭に、病院への直接的な支援が必要と主張した。
 全日病からは神野正博副会長が出席し、「病院の機能により、新型コロナの影響は異なるが、すべての病院が大変な状況にある」と訴えた。

126名の国会議員が参加
 議連は、新型コロナの影響で、「医療機関の経営が危機にさらされている」ことから、「万全の体制をもって経営を続けられるように資本注入を含め、長期的支援体制の整備が必要」との趣旨で、7月7日に設立された。共同代表は、自民党の中谷元・衆議院議員、公明党の富田茂之・衆議院議員、国民民主党の羽田雄一郎・参議院議員。幹事長は国民民主党の増子輝彦・参議院議員となっている。
 冒頭、事務局長で自民党の山口壯・衆議院議員が挨拶。「第二波といっても言い過ぎでない状況にある。医療提供体制を確保できないと、国民の命と健康は守れない。一次、二次補正で措置したが十分ではない。むしろ不十分だ。病院の経営をしっかりと支える必要がある。病院への実地調査も実施した上で、概算要求に向け提言する」と述べた。同日で、126名の国会議員が議連に加わったことも報告された。
 ヒアリングで病院団体は、全日病、日本病院会、日本医療法人協会が行った病院経営状況緊急調査(5月17日)の結果を報告しつつ、日病の相澤会長が全体の状況を説明した。
 相澤会長は、「日本の医療提供体制は医療機関がモザイクのように組み合わさって、面として地域を支えている。これが一つでも欠ければ、全体の体制が崩れてしまう。元々、病院の経営は、医療法人全体で平均3%弱の利益に過ぎない状況で、新型コロナの影響により、赤字に陥っている。財務省は損失補てんを行わないとの姿勢のようだが、医療機関への直接的な支援がないと、日本の医療が守れなくなるという相当な危機感がある」と訴えた。
 病院経営状況緊急調査は、日病の島弘志副会長が、有効回答病院1,203病院の今年4月の医業利益率が、◇新型コロナ患者受入れ病院で▲10.8%◇新型コロナ患者未受入れ病院で▲5.5%◇一時的病棟閉鎖病院で▲14.4%。影響の大きかった東京に限ると、◇新型コロナ患者受入れ病院で▲24.2%◇新型コロナ患者未受入れ病院で▲15.8%◇一時的病棟閉鎖病院で▲29.4%であったことなどを説明した。
 神野副会長は、病院の機能の違いにより、新型コロナの影響が異なることなどを指摘。4月の状況では、急性期の病院で影響が大きいが、回復期や療養の機能を担う病院は、急性期より遅れて経営への影響が出てきており、「すべての病院が大変な状況にある」と強調した(右上の写真)。
 また、恵寿総合病院(神野理事長)の状況について、「感染リスクのある状況での医療従事者の献身的な仕事には、頭が下がる思いだ。しかし、このままでは病院を維持するため、ボーナスの一部カットという苦渋の決断をせざるを得ない」と厳しい状況を訴えた。

日医は骨太方針2020に懸念示す
 日本医師会の今村聡副会長は、日医の提案として、◇新型コロナウイルス感染症等感染防止対策実施医療機関安心マーク◇医療従事者支援制度の創設を提案した。
 安心マークは、感染症対策のチェックリストを作成し、それをクリアした医療機関に「安心マーク」を提供し、患者の受診時の安心につなげるもの。医療従事者支援制度は、新型コロナウイルスに感染した医療従事者や医療機関への支援を保険の仕組みで行うもの。国や医療団体の補助により保険の財源(約32.5億円)を賄い、休業支援給付金や死亡見舞金を給付する。
 また、診療所の今年4月の対前年同月比の医業利益(外来総点数)の減少率が、小児科(▲39.2%)と耳鼻咽喉科(▲36.6%)で特に影響が大きいことを報告した。内科は▲13.2%、整形外科は▲23.3%、皮膚科は▲21.0%。
 同日、閣議決定された骨太方針2020に対しては、◇薬価調査・薬価改定◇医療機関経営◇オンライン診療の3点について、懸念事項を示した。
 今回の骨太方針では、薬価調査については実施の方針が明記され、薬価改定については、「十分に検討し、決定する」となった。しかし、今村副会長は、「販売側・購入側ともに薬価調査を実施できる環境ではない。仮に調査を実施しても、適切な市場実勢価格を把握することは極めて困難」と主張した。
 医療機関経営については、ヒアリングでの病院団体の主張と同様に、来年度予算編成を待つことなく、国による実態把握とともに、「至急追加支援をお願いする」と述べた。「新型コロナが収束に向かったとしても、受診控え、健診控えは容易に回復しない」との見通しを示した。
 オンライン診療は現在、初診からのオンライン診療を認め、診療報酬も支払う特例的な対応が講じられている。
 今後、検証作業が行われるが、今村副会長は、「足元の利用状況や患者満足度は感染リスクと比較してのもの。平時の対面診療と比較できるわけではない」と注意を促した。その上で、骨太方針の文言のように、「一気に『仕組みを構築』することを目指すのではなく、丁寧な合意形成を図るよう要望する」と主張した。

民間病院の活躍で医療崩壊起こらず
 日本医療法人協会の加納繁照会長は、「日本で医療崩壊が起こらなかった理由」と題して、日本の医療提供体制の特徴を説明するとともに、民間病院が地域医療に果たした役割を強調した。
 海外では「巨大病院しか急性期を担えない」という「巨艦主義」が、新型コロナ対応では裏目に出て、「医療崩壊」に至った国が生じた。
 これに対し、日本では、民間病院が地域医療の多くを支えることにより、「新型コロナ重症患者」、「新型コロナ中等・軽症患者」、「一般急性期患者」の対応で、棲み分けができ、「世界に誇る致死率の低さにつながった」と加納会長は説明した。
 その上で、◇第三次補正予算の編成◇補助金が公的病院に有利になっていることの是正◇緊急手段として、控除対象外消費税負担の免除を要望した。
 日本精神科病院協会の平川淳一副会長は、同協会の96病院の調査結果として、今年4月の医業利益率などを報告した。
 医業利益率は5.8%であり、対前年同月比で7ポイント減少している。医業収益が減少した病院は、全体の72.9%で、医療利益の減少の平均は▲1,892万円となっている。また、精神科において急性期を担う病棟のある病院で、医業収入の減少幅が大きい傾向があった。
 全国自治体病院協議会の小熊豊会長も、病院経営の緊急調査結果を報告した。520病院の医業収入(対前年同月比)をみると、◇新型コロナ患者受入れ病院は4月で▲11.2%、5月で▲17.6%◇新型コロナ患者未受入れ病院は4月で▲6.6%、5月で▲12.5%◇病棟閉鎖・削減した病院は4月で▲11.6%、5月で▲18.6%となっている。
 小熊会長は、「地域医療構想では、診療実績の少ない公立・公的病院に病床削減を求める対応が迫られている。しかし、『平時の医療』と『非常時の医療』というものがあり、非常時の医療を確保する視点を改めて考える必要がある」と地域医療構想に再考を促した。

 

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