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ホーム全日病ニュース(2020年)第968回/2020年8月1日号薬価調査は実施し、薬価改定は新型コロナの影響を勘案

薬価調査は実施し、薬価改定は新型コロナの影響を勘案

薬価調査は実施し、薬価改定は新型コロナの影響を勘案

【骨太方針2020】医療機関への経営支援は「必要な対応を検討」

 政府は7月17日、経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太方針2020)を閣議決定した。医療関係者が反対し、取扱いが注目されていた薬価調査・薬価改定については、調査の実施を明確化した上で、薬価改定の実施の可否は、「新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して、十分に検討し、決定する」との文言になった。
 中医協では、診療側の委員も製薬企業・卸売業の関係者も、「医療現場は薬価調査を実施できる環境にはない」と指摘。仮に調査を実施しても、薬価改定を行う上で適切な市場実勢価格を把握できないとの主張で一致していた。しかし、政府は「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に基づき、骨太方針2018、2019に明記された方針に沿って、薬価改定を実施する方針を変えず、閣議決定まで議論が続いた。
 その結果、最終的には、薬価改定の可否について、含みを持たせる表現に落ち着き、今後の検討に委ねられる余地が生じることになった。
 社会保障給付費の上限(シーリング)については、例年の骨太方針で方針を示してきた。しかし今回は、「基盤強化期間内から改革を順次実行し、団塊の世代が 75 歳以上に入り始める 2022年までに基盤強化を進めることを通じ、より持続可能なものとし、次世代に継承する」との文言にとどまった。
 そもそも今回の骨太方針は、新型コロナの影響で閣議決定が1カ月程度遅れており、それに伴い、各省庁の来年度予算の概算要求も1カ月程度遅れることもあり、骨太方針の内容は簡素にするとの方針が示されていた。

オンライン診療は前倒しで推進
 一方で、新型コロナとともにある「新たな日常」の観点では、デジタル化・オンライン化の推進を強調した。オンライン診療について、「電子処方箋、オンライン服薬指導、薬剤配送によって、診察から薬剤の受取までオンラインで完結する仕組みを構築する」と明記。電子処方箋の運用などは、予定を前倒しして取り組む課題となった。
 時限的・特例的な取扱いとして実施している初診からのオンライン診療は、その効果や課題を検証し、関係者の意見をきく。その上で、「システムの普及促進を含め、実施の際の適切なルールを検討する」としている。
 検査体制の強化では、感染拡大防止と経済活動の段階的引上げの両立を図るため、戦略的に検査能力を拡充する。PCR検査は幅広く行い、医療従事者や入院患者、施設入所者などに対して、感染の可能性がある場合は積極的に検査を行うとした。HER-SYSの早急な定着・活用で、患者情報などを関係者で迅速に共有できる体制を構築する。
 医療提供体制については、診療報酬の引上げや、補正予算による病床確保・設備整備などを通じた支援、危機対応融資の拡充など、これまで講じてきた対策を改めて明示している。
 また、G-MISにより空床状況や人工呼吸器の保有・稼働状況・人材募集状況など医療提供状況を把握する。「医療のお仕事Key-Net」を通じた人材確保も図る。また、医療現場で必要となる感染防護具や医療器材、医薬品原薬などの確保・備蓄、国内生産体制の整備を進める。
 悪化する医療機関の経営への支援では、緊急包括支援交付金の効果を踏まえつつ、引続き状況を把握し、「必要な対応を検討し、実施する」と明記するにとどめた。全体の医療提供体制の整備では、感染症への対応の視点を含めて、可能な限り早期に工程の具体化を図るとしている。
 新型コロナの効果的な治療法・治療薬やワクチンなどの研究開発は、「日本を含め世界の叡智を結集」することで、さらに加速させる。

 

全日病ニュース2020年8月1日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190901/news05.html

    2019年9月1日 ... 中医協の薬価専門部会(中村洋部会長)は7月24日、2020年度の薬価制度改革に
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  • [2] 地域医療構想推進へ

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  • [3] 全日病ニュース 2017年2月1日号

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    直前になるため、2018年. 度が最 ... の増加を勘案し、基準病床数の見直し.

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