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ホーム全日病ニュース(2020年)第968回/2020年8月1日号豪雨被災地での保険診療の取扱いを事務連絡

豪雨被災地での保険診療の取扱いを事務連絡

豪雨被災地での保険診療の取扱いを事務連絡

【厚労省・事務連絡】診療録を失った場合の概算払いなどに対応

 厚生労働省は7月6日、熊本県を中心に被害があった「令和2年7月豪雨」による被災に伴う保険診療や診療報酬の取扱いを事務連絡した。被災により医療機関が、診療録やレセプトコンピュータなどを失った場合に、6月診療分の概算請求を認めるとともに、医療機関が浸水し、仮設の建物で診療した場合も、保険診療として認めるなどの対応を講じる。
 概算払いは、原則として2020年4月分から2020年5月分までの診療報酬等支払実績を用いる。入院と外来に分けて、1日あたりの診療報酬支払額を算出し、6月分の診療実日数に応じて、6月分の概算支払額を確定する。薬局と訪問看護ステーションは外来分として取り扱う。
 また、6月診療分(7月提出分)の請求期限は、災害救助法の適用地域の医療機関などに限り、2020年7月14日までとする。
 また、被災者を受け入れたことで医療機関が定数超過入院となった場合でも、減額措置を適用しない。通常の規定では、「災害等やむを得ない事情」があれば、当該月の入院に限り減額の対象としないことになっているが、今回は減額措置を、「当面の間」、適用しないとしている。
 施設基準の取扱いでは、被災者の受入れによる入院患者の急増や、職員の一時的な不足で、看護職員数と入院患者の比率や看護師割合、月平均夜勤時間数が、入院基本料の施設基準を満たせなくなった場合でも、基準が1割以上変動した場合に求められる届出を行う必要はない。
 保険調剤では、被災により被保険者証の番号や医療機関の記載がない処方箋でも、被災地の薬局であれば、保険調剤として取り扱う。ただし、処方箋を受け付けた場所が、救護所や避難所救護センターなど医療機関以外であることが明らかな場合は、取り扱うことができない。
 また、処方箋がない場合も、事後的に発行されることを条件に一定の要件で保険調剤を認める。一定の要件では、◇交通の遮断などやむを得ない状況がある◇主治医に電話で確認またはメモで処方内容が確認できる─ことなどをあげた。
 訪問看護ステーションについても、特例的な取扱いを示している。

避難所の医療などでQ&Aを示す
 そのほか、様々なケースで被災地において提供される医療の保険診療としての取扱いをQ &A の形で示した。以下で、主な質問に対する回答を示す。
 AMAT(全日本病院協会災害時医療支援活動班)を含め、DMAT(災害派遣医療チーム)やJMAT(日本医師会による災害医療チーム)などボランティアにより、避難所や救護所で行われる診療は、保険診療として認められず、患者に一部負担金を求めることはできない。なお、災害医療チームの医療の経費は災害救助法の補助対象となっている。
 被災地の医療機関の医師などが自発的に避難所などを巡回し、診療を行った場合も、保険診療とは認められない。保険調剤も認められないが、災害救助法の適用となる場合は、都道府県に請求することになる。
 一方、被災地の医療機関の医師などが、避難所にある程度継続して居住している患者に、定期的な診療が必要と判断し、患者の同意を得て、継続的に避難所を訪問して診察を行った場合は、訪問診療料などを算定できる。ただし、通院による療養が困難な患者が対象となる。
 同じ避難所で複数人に、同一日に訪問診療を行う場合は、「同一建物居住者」の取扱いとなる。「同一建物居住者」とそれ以外では、診療報酬点数で4倍程の差がある。単一建物の人数で区分される在宅時医学総合管理料や施設入居時等医学総合管理料については、被災前の居住場所に応じた区分を用いるが、避難場所で人数が減少している場合は、その人数に応じて算定できる。
 透析では、被災地の医療機関で透析設備が、被災により使用不可能となっている場合に、被災前から当該医療機関に入院し透析を行っている患者が、真にやむを得ない事情により、透析を目的として他医療機関を受診しても、当面の間、入院基本料や特定入院料の控除は行わないとした。
 被災地の医療機関が、被災により患者を入院させたことで、平均在院日数や「重症度、医療・看護必要度」、在宅復帰率、医療区分2・3の患者割合などの基準を満たさなくなった場合も、当面の間、届出を行う必要はない。特定集中治療室管理料とハイケアユニット入院医療管理料は、入院基本料を算定した上で、「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合の算出から除外する。
 被災地以外の医療機関で、被災地の医療機関から転院を受け入れた場合の平均在院日数や「重症度、医療・看護必要度」の取扱いは、当面の間、受入れ患者を除いて算出する。特定集中治療室管理料とハイケアユニット入院医療管理料の取扱いは、被災地の場合と同様となっている。

 

全日病ニュース2020年8月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 令和2年7月豪雨による被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2020/200707_1.pdf

    の取扱いについては、当面、下記のとおり取り扱うこととしたので、関係団体. へ
    の周知を ... 今回の被災により診療録及びレセプトコンピュータ等を滅失、汚損
    又は ... 療又は調剤等を行う場合、当該仮設医療機関等と浸水等した保険医療機関
    等.

  • [2] 平成23年東北地方太平洋沖地震及び長野県北部の ... - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2011/110316_1.pdf

    2011年3月15日 ... 県北部の地震による被災に伴う保険診療関係等の取扱いについては、当面、下. 記
    のとおり取り扱うこと ... 療又は調剤等を行う場合、当該仮設医療機関等と全半壊
    等した保険医療機関. 等との間に、場所的 ... カルテ及びレセプトコンピュータ
    全部又は一部が汚損又は滅失し、診療報. 酬を請求できない場合 ...

  • [3] 平成28年熊本地震の被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2016/160418_1.pdf

    2016年4月18日 ... ついては、当面、下記のとおり取り扱うこととしたので、関係団体への周知を ...
    これに代替する仮設の建物等(以下「仮設医療機関等」という。 ... 療又は調剤等
    を行う場合、当該仮設医療機関等と全半壊等した保険医療機関 ... カルテ及び
    レセプトコンピュータの全部又は一部が汚損又は滅失し、診療報.

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