全日病ニュース

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ホーム全日病ニュース(2020年)第968回/2020年8月1日号ウェブを活用して新たな付加価値を発信

ウェブを活用して新たな付加価値を発信

広報委員会委員(織田病院評議員/株式会社ナレッジハンズ 代表取締役) 井内 徹

ウェブを活用して新たな付加価値を発信

広報媒体の変化に対応し、全日病の存在をアピール

 「全日病の委員会」シリーズの第7回は、広報委員会の取組みを紹介します。井内徹委員に、寄稿していただきました。

全日本病院協会における広報の目的を再定義
 広報委員会は、会員病院への情報提供として「全日病ニュース」の発行、ホームページ(以下、HP)の充実と更新情報のメールでの通知、全日病学会における委員会企画での病院広報事例発表、HOSPEX Japan での講演企画などを行っている。
 現在、当委員会では、HP のリニューアルを行っているが、そもそも全日病において「広報」が達成すべき「目的」は何か、との議論が活発になっている。
 「広報」により達成する「目的」が異なれば、「広報」によって提供する情報自体も異なり、また、訴求すべき対象者(ターゲット)が、一般(患者)向け、医療従事者向け、病院経営者向けなのか、によっても広報の内容自体が大きく変わってくるからである。
 当委員会内においても明確な結論にはたどり着いていないが、「広報」活動の重要な「目的」として、以下のⅠ~Ⅲの点に沿って、説明していく。

I. 鮮度の高い、わかりやすい医療制度や病院経営に関する情報提供
 医療制度や病院経営に関する情報提供は、主に「全日病ニュース」において取り組まれているが、内容のさらなる充実について、常に委員会にて議論が交わされている。
 全日病ニュースでは、医療制度や厚生労働省での各種検討会の状況をわかりやすく伝えるだけでなく、病院経営における経営課題の解決に結びつく事例をまとめた記事などの掲載を増やし、幅広い内容の記事を提供することを考えている。例えば、病院の経営改善や診療報酬制度に関する内容をまとめた「病院事務長シリーズ」、広報に関する取り組みを記事にした「病院広報シリーズ」、若手経営者の取り組みを紹介する「若手経営者シリーズ」なども掲載し、病院経営について様々な角度から記事掲載を行っている。さらにICT 利活用に先駆的な病院から学ぶ「ICT 利活用シリーズ」、地域密着型病院における地域連携を考える「地域連携シリーズ」などの連載も開始している。
 今後も「地域医療構想」、「地域包括ケアシステム」、「BCP」等の連載企画を準備中であり、各種企画シリーズとしてインタビュー形式で会員病院の生の情報を発信することとしている。
 また、新しいHP 上では、読み手の利便性を高めるため、全日病ニュース発刊と同時に、HP 上での記事閲覧が可能となる機能や過去の全日病ニュース記事を検索できる機能を追加するようHP の改修を予定している。鮮度の高い情報を「紙媒体」だけでなく、「ウェブ」上でも閲覧、検索が可能となることで、今までよりも幅広い読者を得ることにも繋がり、全日病の存在をより深く知って頂くことにもなると考えている。

II. 広く研修参加を促すための研修告知/研修内容説明
 研修事業は、全日病を安定的に運営していくための最も重要な事業の一つである。しかし、研修参加者に対するアンケートを集計すると(図1)、参加のきっかけとして「上司の命令」を挙げる方が多く、全日病の理事や委員会メンバーが経営されている病院からの参加者が顕著に多いという特徴がある。言い換えれば、残念ながら、2,500を越える会員病院から広く研修参加者を集められる状況になっているとは言えず、研修に関する「広報」のあり方を見直していかなければならないと認識している。
 アンケート結果を踏まえて、当委員会では、以下の①~③の新しい取り組みを考えている。
①実施予定の研修をより見やすいHPへの改修
 HP上の研修情報は、HP のトップ画面からは階層を下って、情報を探す必要があり、すぐに研修情報に行きあたらないという問題があった。そこで、同じドメイン内に、研修専用ページを立ち上げ、研修情報をより見やすく再整理する。
 また、今までHP上で、年間を通じて、どのような研修がいつ頃開催されるかの網羅的な情報提供ができていなかった。病院によっては、研修参加の予定を年度開始前後に決定する病院も多く、病院の研修予定策定のタイミングと情報提供のタイミングをできる限り合わせ、見やすい年間研修スケジュールなども掲載することで、情報の把握を容易にするよう改善していく。
 資格別やカテゴリー(「経営者」、「医師」「看護師」、「医療従事者」等)別に研修をスクリーニングする機能や、過去研修に参加された方へのインタビュー(声)や写真・動画なども豊富に掲載し、研修の内容が具体的に伝わりやすい仕組みの導入も進めている。
②研修参加者を集めるために、過去参加者へのアプローチ
 研修に参加された方へのアンケート結果を見ると、研修内容に満足されている方も多い。研修内容に満足されている過去の参加者に対して、次回の研修参加者を紹介してもらう目的で、過去参加者へ研修実施の通知をメール等で行っていくことも考えている。まさに、過去参加者からの勧め(口コミ)で、研修者を増やしていければ理想的である。
③SNSによる研修情報の提供やインターネット広告の活用
 近年、一般企業が開催する研修は、広報媒体ツールとして、HP への研修内容の掲載だけでなく、SNSの活用やSNS へのインターネット広告掲載によって集客を図っている研修も増えている。SNS の普及により、同じ資格者、同じ興味を持ったグループなど特定のターゲットに、直接情報提供(広報)することも可能であり、広告予算も安価で抑えられる。
 また、ネットを介して広報を展開することで、会員病院の医療従事者へ直接アプローチすることも可能であり、さらに全日病会員病院以外の医療従事者への訴求も可能となる。
 当委員会も時代の変化を敏感に感じながら、今後も広報のあり方を考えていく必要があると思っている。

III. 広報活動による新しい付加価値の提案
①HP上での会員病院への受診誘導(アイデア)
 全日病のHP のアクセスを分析すると、HP 上の「みんなの医療ガイド」のアクセス数が圧倒的に多いことがわかる。その「みんなの医療ガイド」を閲覧しているウェブユーザーは、全日病関係者や医療従事者というよりも、病名や医療用語を検索して「みんなの医療ガイド」に誘導されてきた一般の市民である。しかも、そのアクセス数はHP の充実を図ってきた成果もあり、増加傾向を辿っている。
 一方で、アクセス数が増加している恩恵を全日病やその会員病院は十分享受できていないとも言える。一般市民によるアクセス数の増加を、何らかの成果に繋げていくため、HP 上に新しい仕組みを導入することを予定している。
 その仕組みとは、例えば、「熱中症」で検索してきた方が「みんなの医療ガイド」の「熱中症」記事に辿りついた場合、スマホの位置情報を「ON」にしている方に対して、近くで「全日病会員病院でかつ熱中症の診察が可能な病院」の情報を、HPの地図上で提示することができる機能である。
 実現するためには、事前に会員病院にどういった疾病の診察が可能か、そもそもこういったサービスを利用したいか、など会員への同意も含めた事前調査が必要ではあるが、このような新しい付加価値提案を今後もHPを通して積極的に発信していきたいと考えている。

②HP上での新しい切り口での情報提供
 新しい取り組みとして、2018年より大手ゼネコン(賛助会員)とタイアップし、新病院の建築事例を全日病HPで公開する取り組みを始めた。今後、新しい病院建築を考えている経営者や担当者の参考になればと考えている。他の大手ゼネコンとのタイアップも重ねながら、多くの事例を集めることができれば、病院建築という最重要課題に対する参考材料になるのではないだろうか。

最後に
広報委員会の活動と病院広報

 「広報」媒体は、この10年で「紙媒体」から「電子媒体」に大きく変化を遂げてきている。その時代の変化に適応し、限られた予算の中で、必要とされている情報を効率的に特定のターゲットに届ける仕組みが必要である。
 病院の広報においても、ウェブ上での情報展開の得手不得手が患者数に如実に差ができる時代になっており、広報委員会にて考えている「広報」に関する論点と、「病院広報」が考えるべき論点は、全く同じではないか、と感じている。「病院広報」においても、まず広報の「目的」を議論し、その目的に沿った形で、紙媒体、電子媒体の情報内容を考える。
 また、HP やSNS での情報提供がより重要となっており、電子媒体上の情報鮮度をいかに高めていくかが重要なポイントである。
 加えて、AIやウェブ機能を活用した新しい広報活動のアイデアを出していくことや地元企業との連携なども重要な論点だろう。
 ただ一方で、時代が変化しても、常に問われるのは、情報の質であることも自明の理である。医療制度の変化に関する新鮮な情報提供、病院経営の一助となるような具体的な実践例、満足度の高い研修情報など、高い情報の質が保たれるよう当委員会では引き続き活発な議論を展開し、新しい取り組みにも果敢にチャレンジしていきたいと考えている。

広報委員会・委員

委員長  高橋 肇
副委員長 小森 直之
委員  井内 徹
委員  石川 賀代
委員  江口 有一郎
委員  黒澤 一也
委員  竹川 勝治
委員  田中 志子
委員  細川 吉博
特別委員 高橋 泰
担当副会長 織田 正道

 

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