全日病ニュース
三位一体の議論を着実に進めることを確認
三位一体の議論を着実に進めることを確認
【医療部会】神野副会長は状況変化踏まえた対応求める
社会保障審議会医療部会(永井良三部会長)が8月24日、5か月ぶりに開催された。新型コロナの影響で止まっていた地域医療構想・医師の働き方改革・医師偏在対策の三位一体の議論を今後着実に進めていくとの認識を共有した。これらの課題に新型コロナの状況がどう関わってくるかについては、委員から様々な意見があった。オンライン診療やデータヘルス改革などICTを活用した医療体制の推進の議論も進めていくことも確認した。
新型コロナに対しては、「最重要の課題として、スピード感をもってこれに全力を注ぐ」。行政の具体的な課題としては、◇局所的な病床数の不足◇医療機関間の役割分担◇マスクなど感染防護具、人工呼吸器など医療物資の確保・備蓄─をあげた。医療現場の課題では、◇患者の医療機関への受診控え◇局所的な病床数の不足◇特定の診療科における医師・看護師不足─に対応する必要があることを強調。これらを踏まえた医療提供体制の構築の議論を進めていく。
同日は、全日病の猪口雄二会長に代わり委員となった神野正博副会長が初参加した。猪口会長の日本医師会副会長就任に伴い、医療部会の委員は神野副会長が代行することになっていた。神野委員は、厚生労働省の今後の課題の整理を踏まえ、3点を指摘した。
まず、「これまで病院は他産業と同様に、効率性を重視し、在庫を極力少なくするJust-in-timeを進めてきた。しかし新型コロナでサプライチェーンが途切れ、個人防護具の入手も困難になった。Just-in-case(念のため)がリスク顕在化の際の対応として求められており、在庫にもある程度余裕を持たせることが大事になった」と指摘。その体制をどう構築するかが、地域単位での整備を含め、重要になるとした。
次に、オンライン診療について、「3密を避けるため、オンライン診療は有効な手段になる。しかし、OTCより強い効果の薬を手軽に入手するといった目的で使われると、保険財政的にもよくない。薬の処方では一定の制限が必要かもしれない」と述べた。
また、今後、地域医療構想・医師の働き方改革・医師偏在対策の三位一体の議論を進めていくことになるが、新型コロナを踏まえ、従来のスケジュールを見直す必要があると指摘した。
一方、データヘルス改革は今後、具体的な情報の取扱いが課題になる。厚労省は今後2年間で実行する当面の計画を説明。医療情報の有効活用が、新たな日常に対応するデジタル化を通じた強靭な社会保障につながるとした。
今後2年間は「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」、「電子処方箋の仕組みの構築」、「自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大」を実行する。神野委員は、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)などICT活用をさらに進めることが、「医療・介護連携、生活支援に役立つ」と期待を示した。
全日病ニュース2020年9月1日号 HTML版