全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2020年)第970回/2020年9月1日号「重症度、医療・看護必要度」の経過措置の半年延長を提案

「重症度、医療・看護必要度」の経過措置の半年延長を提案

「重症度、医療・看護必要度」の経過措置の半年延長を提案

【中医協総会】特例措置の拡大を含め、近く事務連絡を発出

 厚生労働省は8月19日の中医協総会(小塩隆士会長)に、2020年度診療報酬改定で設けた9月30日までの経過措置の一部を、半年間延長することを提案した。入院基本料の「重症度、医療・看護必要度」の施設基準の見直しなどがある。また、新型コロナの感染拡大に伴い、現状で実施している基本診療料の様々な施設基準の特例措置の拡大も提案した。
 ただ、支払側の委員は配慮の必要性は認めつつも、「エビデンスのない大雑把な対応で、現時点で賛成とは言えない」(幸野庄司委員・健康保険組合連合会理事)と主張。厚労省の提案は会長預かりとなり、近日中に事務連絡として特例措置の取り扱いが示される。
 厚労省は同日、新型コロナによる医療機関における診療報酬への影響を整理した。まず、新型コロナ患者を受け入れている医療機関では、体制の変更により、看護師などの配置が変動している。例えば、新型コロナ疑い患者のための外来体制を組むために、他部門から人員を再配置しなければならない。新型コロナ患者の入院では、多床室の個室化や動線の確保、病棟機能の変更、勤務体制の再編などで人員の再配置が必要になる。
 新型コロナ患者を受け入れていない医療機関でも、患者の受療行動の変化により、実績要件が満たせなくなるかもしれない。急性期病棟では、学会の声明や厚労省の事務連絡などを踏まえ、手術や検査を延期している。患者の退院調整も難航している。それにより、「重症度、医療・看護必要度」の該当患者数の減少や平均在院日数の長期化が起きる。回復期病棟でも、急性期病棟からの患者の減少や退院調整の難航により、回復期リハビリテーション病棟ではリハビリ効果に係る実績指数の低下、地域包括ケア病棟では診療実績指数の低下などが発生している。
 また、新型コロナのまん延防止のため、連携する医療機関同士の会議や研修が滞り、参加人数の調整やWEB開催の実施によっても、平時と同様の運用は困難であり、施設基準で求められている体制要件を満たせない場合がある。
 厚労省の提案はこれらの状況を踏まえた提案となっている。
 2020年度改定の9月30日までの経過措置では、◇急性期一般入院料などの「重症度、医療・看護必要度」◇回復期リハビリテーション病棟入院料1・3の「リハビリテーションの効果に係る実績の指数」◇地域包括ケア病棟入院料(特定一般入院料の注7も同様)の診療実績の半年間延長を提案した。経過措置の対象は他にもあるが、患者の受入れ実績が関わるものを半年間延長の対象とした。
 また、現状で実施されている基本診療料の様々な施設基準の特例措置については、新型コロナ患者を受け入れた医療機関だけでなく、「職員が新型コロナに感染し、または濃厚接触者となり出勤ができない医療機関」も同様に取り扱う。これまでは新型コロナ患者を受け入れた医療機関に「平均在院日数」や「重症度、医療・看護必要度」、「在宅復帰率」などで、施設基準を満たしていなくても、満たしているとみなす特例措置を講じていた。また、「その他の実績要件等」も特例措置に加える。
 緊急事態宣言が出された場合、これらの特例措置は「すべての医療機関」が対象となる。緊急事態宣言が一部の都道府県であっても、「すべての都道府県」を対象とする。特例措置の期間は月単位で判断する。

診療側は賛成し支払側が難色示す
 これらの厚労省の提案に対し、診療側からは賛意が示された。日本医師会常任理事の松本吉郎委員は、特例的な取扱いは、「緊急事態宣言の発令で判断するのではなく、今年3~5月と同様の状況になった場合」とするなど、より柔軟な対応を求めた。日本病院会副会長の島弘志委員は、「急性期一般入院料4については元々、経過措置が来年3月末までになっており、それに合わせることになり、厚労省の提案は妥当」と述べた。
 しかし、支払側からは異論が出た。経過措置の延長について、健保連の幸野委員は、「新型コロナが医療機関に影響を与えていることは理解するが、エビデンスもなく、一律に対応すれば、来年3月末にどう判断するのか。また延長になって切りがなくなるのではないか」と懸念を示すとともに、「一律対応ではなく、地方厚生局が個別対応で判断すべき」と主張した。
 特例措置の取扱いについては、協会けんぽ理事の吉森俊和委員が、「新型コロナ患者を受け入れている医療機関と、そういう体制を整えずに院内感染が起きてしまった医療機関を同等に取り扱うことに違和感がある」と述べた。日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「新型コロナの感染状況は地域により濃淡があるが、100%の医療機関が(患者減や感染防止対策など)新型コロナの影響を受けている」と理解を求めた。

 

全日病ニュース2020年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 2020年度厚生労働省第二次補正予算案

    https://ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200615.pdf

    2020年6月15日 ... 中医協(小塩隆士会長)は5月25日. に、持ち回りで総会を開き、新型 ... 発の
    エビデンスを示すことができたと. いう。 「唾液」のみの検体採取で ... 臨時的な
    取扱い(その20)」を発出した。 臨時的な取扱いで実施が可能と ...

  • [2] 2020.7.1 No.966

    https://ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200701.pdf

    2020年7月1日 ... る事務連絡が発出されたことを紹介す. るとともに、「最後は都道府県と現場 ...
    中医協総会(小塩隆士会長)は6月. 10日、地域医療構想の実現の ... 営について
    エビデンスを蓄積し理論. 武装をしなければ、そうした行政側と.

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。