全日病ニュース

全日病ニュース

重症度、医療・看護必要度の見直し

重症度、医療・看護必要度の見直し

【診療報酬改定シリーズ●2020年度改定への対応①】医療保険・診療報酬委員会 副委員長 太田圭洋

 2020年4月に診療報酬改定が行われた。急性期の病院に対しては、入院料の根幹にかかわる重症度、医療・看護必要度(以下、必要度)に大幅な見直しが行われたことから、多くの病院に影響が出ることが予想される。本来であれば、各病院が新たな必要度基準への対応にさまざまな取り組みに苦労しているところであるが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応、それによる経営状況の悪化から、それどころではなくなっている病院がほとんどだろう。
 しかも、もともと9月末まで(入院料4では2021年3月末まで)は経過措置が設けられていることから、現在まで直接の影響を受ける状況でなかったこと、また、昨今の新型コロナウイルス第2波と思われる急激な感染拡大のもと、なんらかの診療報酬上の臨時の対応として救済措置が継続される可能性も高いことから、内部で必要度見直しへの対応の議論も対策も行われていない病院も多いのではなかろうか。しかし、経過措置や診療報酬上の臨時の対応もいつかは終りを迎える。病院経営管理に携わる者はそのことを十分理解し必要な対応を行っていただく必要がある。
 まず、しっかりと今回の改定における重症度の見直しの内容をご確認いただきたい。大きく分けて、①各入院料に求められる施設基準の見直しと②評価項目、判定基準の見直しがある。
 入院料に求められる施設基準の見直しとして、図に示すように、急性期一般入院料1では、従前30%(必要度Ⅱでは25%)であった必要度が、31%(同29%)に基準が引き上げられている。また許可病床400床以上の医療機関においては、必要度Ⅱを用いることが要件とされた(9月末までの経過措置あり)。
 評価項目、判定基準の見直しは、さらに複雑である。「B14又はB15に該当、かつ、A得点1点以上かつB得点3点以上」の基準が削除されたことに加え、A項目の「免疫抑制剤の管理」が注射剤に限った評価となった。さらにA項目での救急に関する評価が変更された。具体的には必要度Ⅰでは救急搬送後の入院の評価が2日から5日へ、必要度Ⅱでは、新たに、入院日に救急医療管理加算ⅠもしくはⅡ又は夜間休日救急搬送医学管理料を算定している患者は、入院後5日間はA項目の評価対象とされた。C項目に関しても、大幅な見直しが行われている。入院での実施割合が9割以上の手術(2万点以上)及び検査が追加され、C項目の評価対象日数もさまざま延長されている。
 今回の必要度見直しは、病院の機能分化の一環として、急性期一般入院料1の算定病床数を削減させることを目的としている。中医協では基準をどの程度にするか診療側、支払い側の意見が対立し調整がつかず、前回改定と同じく公益裁定に持ち込まれた。今回の31%/ 29%という基準は中医協に出された資料によると、現在の病院の下25%タイル値で切られたことになる。すなわち4分の1の病院が、なにも対策が行われないと急性期一般入院料1が算定できなくなるところに線が引かれたということである。かなり厳しい数値であり、対応が必要となる病院も多いはずだ。

重症度、医療・看護必要度Ⅱへの移行を促す
 また、今回の改定は必要度Ⅱへの移行を促す意図がちりばめられている。400床以上の病院が必要度Ⅱの評価が必須になったことに加え、必要度Ⅱでも救急関連の評価が加わるなど、今後、必要度Ⅱの評価に誘導されていくことが予想される。先ほど述べた基準31%/ 29%も、必要度Ⅱの方がシミュレーション上はすこしやさしいところで線が引かれている。必要度Ⅱの測定には専用のソフトが必要であり、現在、その測定ソフトの妥当性評価が日本病院会で行われている。今後のことを考えると、一度、自院が必要度Ⅱでどれくらいの数字になるのか把握しておいた方が良いだろう。
 全体として、今回の必要度の見直しは、外科系疾患に強く重症患者対応の多い大規模病院には追い風になるものの、内科系疾患の対応が多い中小病院には厳しい見直しとなっている。特に「B14又はB15に該当、かつ、A得点1点以上かつB得点3点以上」の基準が削除されたことにより、大幅に必要度が下がった病院も多い。必要度は3か月の実績が求められるため、9月末までの経過措置終了後になんの臨時の救済策もとられない場合、6月~8月の実績で入院料を届ける必要が出てくる。新型コロナ感染症への対応で大変な時期ではあるが、再度、今回の改定内容を確認いただき、適切に対応いただきたい。

 

全日病ニュース2020年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] ニュース 1 1

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2011/110101.pdf

    2011年4月1日 ... 昨年は民主党政権のもと、10年ぶりの診療報酬全体のプラス改定が行われ. ました
    。 ... 制上の措置を講じるための関連法案を提出し. てまいり ... 療体制あるいは
    社会保障制度の根幹に ... ということになっている病院救済の方.

  • [2] 介護職員処遇改善加算

    https://ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2012/120301.pdf

    目指す第一歩が今改定である」と概括、主 ... するための措置である」と指摘した
    。 ... *①勤務間隔時間(休息時間)」と「②勤務の拘束時間の長さ」の2項目は、
    基準の根幹をなす重要なものと位置づけている ... の救済方法として既存の「原子
    爆.

  • [3] 研修会等

    https://www.ajha.or.jp/about_us/50years/pdf/50years.pdf

    2011年3月31日 ... 診療報酬の改定等は、中央社会保険医療協議会. (医療協)と ... を無視し、医療
    の商品化を根幹とした低医療費によっ. て運営されて ... ③暫定措置. イ 現在の准
    看護婦養成所等は当分の間残存し、近き. 将来に新看護婦養成機関へ移行する。
    ロ)中卒の ... 被災会員に会費減免の救済措置を決定した。 ○ 埼玉県 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。