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ホーム全日病ニュース(2020年)第970回/2020年9月1日号医師事務作業補助者の負担軽減効果など示す

医師事務作業補助者の負担軽減効果など示す

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【実態調査結果】病院にとっては加算の充実と実務者の確保が課題

 日本医師事務作業補助研究会(矢口智子理事長)は8月5日、医師事務作業補助者の実態調査の結果を公表した。診療報酬などで多くの文書提出が求められ、医師の負担になっている。実態調査では、医師事務作業補助者による負担軽減効果が示されるとともに、診療報酬の加算の充実が、病院の医師事務作業補助者の配置のインセンティブになることが示唆された。
 医師事務作業補助者は、2008年度診療報酬改定で医師事務作業補助体制加算が創設されたことにより、全国的に普及してきた。その後の診療報酬改定でも、点数の引上げや対象病院の拡大があり、医師事務作業補助者は年々増加している。現在、約4万人が病院で業務に従事していると推計される。2020年度改定でも、点数の引上げと対象病棟の拡大があった。
 2018年の届出数は「加算1」が1,859施設、「加算2」は969施設で合計2,828施設。調査は2019年3~4月に実施。1,686施設と医師事務作業補助者3,135人から有効回答を得て集計した。
 医師事務作業補助体制加算状況をみると、病床数に対する医師事務作業補助者の配置は、20対1(加算1で758点、加算2で710点)が最も多く18.0%、次いで15対1( 同970点、同910点)が17.9%、25対1(同630点、同590点)が10.6%である(点数は2020年度改定後)。
 医師事務作業補助者の配置効果の質問では、加算の届出ありの病院の96.9%が「医師の事務負担軽減」で「よくなった」と回答した。「よくなった」の回答は、「医師の残業時間」で49.0%、「チーム医療」で50.5%、「患者サービス」で66.3%だった。医師事務作業補助者の回答では、86.6%が「医師の負担、働きやすさ」に効果があったと回答した。
 医師事務作業補助者が実施している業務で最も多いのは、「保険会社様式診断書」(82%)、次いで「病院様式診断書」(78%)、「介護保険主治医意見書」(71%)、「外来検査の指示」(67%)、「外来診察予約・変更や調整」(66%)となっている(複数回答)。 
 勤務環境の評価については、「勤務時間が安定している」ことや、「女性が長く続けられる仕事である」という肯定的な意見が多い一方で、派遣やパートなどの勤務形態が多く不安定であるとの回答も4割以上となっている。医師事務作業補助者は、女性が圧倒的に多く、96%を占める。
 医師事務作業補助者の経験年数は、「1年未満」と「10年以上」が多く、両極端に分かれる。年代では40代が最も多く、経歴は「他業種からの転職」が4割を占める。雇用形態は「正社員」が過半数を占める。ただ雇用形態については、法人形態で違いがある。例えば、自治体病院では正職員が13%に過ぎず、契約社員・パートタイマー・派遣職員がその他を占める。一方、医療法人では78%が正社員である。

病院全体のマネジメント向上が効果
 病院に「医師事務作業補助者を配置していない理由」をきくと、「実務者が確保できない」が36.4%で最も多い。次いで「収益上のメリットがない」(34.0%)(複数回答)。
 医師事務作業補助体制加算の収入で、人件費分をすべて診療報酬で補うことはできない。しかし、同日会見した唐澤剛顧問は、「病院経営の全体としてのマネジメントの向上を効果と考えてほしい」と述べた。その上で、診療報酬収入でも、例えば加算1(15対1)の場合、患者一人に対し入院初日に970点、100床で病床利用率を85%とすると、患者の入院日数を勘案し月200万円、年間2,400万円になると試算。「そんなに低くはないと思う」と述べた。
 また、唐澤顧問は、医師事務作業補助者が会計やレセプト請求の医療事務者と異なり、医師とともに診療現場にいることの意義を強調。仕事を経験する中で、専門性を高める余地が大きいとした。そして、将来的には、書類作成代行業務を超え、チーム医療や地域包括ケアに貢献できる職種となり、名称も「臨床支援士」とするなど、資格制度につなげることに期待を示した。

 

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