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ホーム全日病ニュース(2020年)第970回/2020年9月1日号5月の医業収益率は4月より悪化、6月はわずかに回復

5月の医業収益率は4月より悪化、6月はわずかに回復

5月の医業収益率は4月より悪化、6月はわずかに回復

【3団体病院経営調査】7月以降の感染拡大で再び視界不良

 全日病、日本病院会、日本医療法人協会の3団体は8月6日、2020年度第1四半期の病院経営状況調査の結果を発表した。病院経営は新型コロナの影響で、4月に大幅に悪化し、5月はさらに悪化し、6月はわずかに回復した。しかし7月以降の感染拡大で、状況は依然として視界不良の状況が続いている(第一報は8月15日号に掲載)。
 調査期間は7月13日~8月3日で、3団体に加盟する全病院(4,496病院)を対象にメールで調査票を送付し、1,459病院の回答を得た(有効回答率32.5%)。前回調査では4月のみの状況だったが、今回は4月~6月の第1四半期を対象期間とした。病院経営状況調査は今後も引続き実施する。
 赤字病院の割合をみると、全病院で4月は2019年度の47.1%から69.4%に増えた。5月は34.8%から62.8%に増えた。6月は55.5%から67.7%に増えた。コロナ患者受入れ・受入れ準備病院に限ると、4月は54.4%から82.1%、5月は40.9%から80.0%、6月は68.2%から82.1%まで赤字病院の割合が高まる。
 経営指標の比較では、全病院の医業利益率は4 月が▲9.1%、5 月が▲8.4%、6月が▲12.1%。2019年度と比べると、4月は10.5ポイント、5月は12.3ポイント、6月は5.8ポイントの落ち込みとなった。6月の落ち込みは4月、5月に比べ、わずかに改善したが、賞与月であるため、医業利益率は二桁のマイナスである。
 コロナ患者受入れ・受入れ準備病院の医業利益率は4月が▲11.4%、5月が▲11.1%、6月が▲14.8%。2019年度と比べると、4月は12.4ポイント、5月は14.8ポイント、6月は7.1ポイントの落ち込みで、全体より悪い。一時的外来・病棟閉鎖病院だと、医業利益率は4月が▲16.2%、5月が▲16.3%、6月が▲19.3%。2019年度と比べると、4月は16.8ポイント、5月は20.0ポイント、6月は10.5ポイントの落ち込みになるほど悪化した。
 また、賞与の支給状況をみると、減額支給の割合は全体で27.2%、コロナ患者受入れ・受入れ準備病院で23.3%、一時的外来・病棟閉鎖病院で24.3%となっている。
 これらの結果を受けた総括では、「全病院の外来患者・入院患者ともに、4月は大幅に減少したが、5月はさらに悪化しており、6月には入院・外来患者数は、わずかに回復の兆しはみえるものの、医業損益は大幅な赤字が継続していた。特に新型コロナ患者を受け入れた病院、外来や病棟の一時閉鎖に至った病院では、6月に至るも10%を優に超える大幅な赤字が継続しており、コロナ患者に対する診療報酬引上げが行われたものの、経営状況の悪化に歯止めはかからなかった」とまとめた。
 また、コロナ患者を受け入れなかった病院も、第1四半期を通じて対前年で経営が悪化していることも指摘した。

病院への直接的な財政支援が必要
 同日、記者会見で日本病院会の相澤孝夫会長は、「病院の経営はこれまでずっと厳しかったが、新型コロナの影響でさらに厳しくなった。6月になってやや回復したと思ったら、7月に入り、また感染が拡大してきた。このような状況が半年続けば、病院経営は壊滅的な状況になる」と危機感を示した。その上で、第二次補正の予備費などを念頭に、病院に対する直接的な支援が必要と訴えた。
 続いて全日病の猪口雄二会長が補足的に2点を指摘。まず、「東京都の病院が輪をかけて経営状況が悪い」と述べ、東京都の医業利益率の落ち込みが、2019年度と比べ、4月が21.0ポイント、5月が23.1ポイント、6月が12.2ポイントと全国平均の2倍程度悪くなっていることを示した。賞与も3分の1程度が減額になっているとした。
 続いて、第二次補正予算で新型コロナ患者の受入れの有無にかかわらず、支給される感染症対策の補助金について、「国による支給の趣旨が都道府県に伝わっておらず、減額査定が行われているときく。趣旨が徹底され、満額支給されるよう求める」と述べた。
 また、第二次補正予算は新型コロナ対策への補助であることを踏まえ、「経営が厳しい病院は、福祉医療機構により低利・無利子の特別融資などでなんとかしのいでいる。しかし、借金だからいずれ返さなければならず、この状況が長期間続けば持たない」と、直接的な財政支援の必要性を訴えた。
 相澤会長も、「病院はいま、ケガで出血しショック状態に陥っている。まずは輸血に相当する緊急の直接的な支援が必要だ。その後は、診療報酬での対応を議論すべき」と述べた。
 記者からは、「診療報酬は医療サービスの対価であり、医療サービスが変わらないのに、患者負担が増えることに国民の納得が得られないとの意見があるがどう答えるか」との質問が出た。
 これに対し相澤会長は、「実際に国民に、医療提供体制を守るのにこれだけの費用が必要であると状況を説明し、議論すべきだ。きちんと説明していないのに、勝手に理解が得られないと決めつけるのはおかしい」と反論した。
 日本医療法人協会の加納繁照会長は、「控除対象外消費税問題が依然として、病院の負担になっている。医療を課税にすれば、国民負担は増えるが、(診療報酬に上乗せされているため)内税が外税に変わるような側面もある。きちんと説明すれば、一定の理解は得られると思う」と課税化の議論を求めた。
 また、猪口会長は、新型コロナの感染拡大に対応するための体制確保について、「ホテルなどの施設の確保が進まず、自宅は難しいとして、軽症者が病院に来ることが起きている。病院は中等症以上の患者を対象にすべきで、もう少し軽症者の施設を増やしてほしい」と国や自治体に対応を求めた。
 また、今回の病院経営状況調査では、様々なデータを集計している。
 医業利益率を入院基本料別にみると、一般病棟入院基本料では4 月が▲10.4%、5 月が▲10.6%、6 月が▲13.8%、2019年と比べた落ち込みは4月が11.1ポイント、5月が13.5ポイント、6月が6.3ポイント。回復期リハビリテーション病棟入院料では4月が9.8%、5 月が11.7%、6 月が5.6%、2019年と比べた落ち込みは4月が1.1ポイント、5月が2.9ポイント、6月が2.8ポイントとなっている。
 地域包括ケア病棟入院料等では4月が▲7.8%、5月が▲8.1%、6月が▲17.5%、2019年と比べた落ち込みは4月が9.1ポイント、5月が7.8ポイント、6月が10.8ポイント。療養病棟入院基本料では4月が▲2.1%、5月が2.4%、6月が▲3.6%、2019年と比べた落ち込みは4月が6.4ポイント、5月が5.2ポイント、6月が3.5ポイントとなっている。回復期や慢性期は、急性期よりも遅れて新型コロナウイルスの影響が来る傾向があるが、すべての病院が影響を受けている。

 

全日病ニュース2020年9月1日号 HTML版

 

 

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    2020年6月15日 ... 全日病の猪口雄二会長は5月27日、新型コロナウイルス感染拡大による病院経営
    状況緊急調査(最終報告) ... 今年4月の対前年比の状況で、医業収入は△7.7%(
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    、7.5ポイントの落ち込みだった。医業利益率は、新型コロナ患者受入病院(339
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  • [2] 病院の医業利益率が10ポイント超の減少|第964回

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20200601/news01.html

    2020年6月1日 ... また、「帰国者・接触者外来」を設置している病院は29.0%、新型コロナ患者
    入院を受け入れた病院は26.3%、一時的に病棟を閉鎖した病院は13.7%だった。
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  • [3] 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業

    https://www.ajha.or.jp/topics/novel_coronavirus/pdf/200619_2.pdf

    制の整備等について、都道府県の取組を包括的に支援するため、「新型コロナ
    ウイルス感. 染症緊急包括 ... 新型コロナウイルス感染症患者等について、感染症
    の予防及び感染症の患者に対. する医療 ... 帰国者・接触者外来等の設備整備を
    支援する。 エ 整備対象 ... 新型コロナウイルス感染症患者の搬送を行うため、都
    道府県内の患者受入れを調 ... には、一時的にでも当該患者を受け入れること。
    ただし、 ...

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