全日病ニュース

ホーム > 全日病ニュース(2020年) > 第971回/2020年9月15日号 > 医師の働き方改革の議論を再開、年内にとりまとめ
全日病ニュース

医師の働き方改革の議論を再開、年内にとりまとめ

医師の働き方改革の議論を再開、年内にとりまとめ

【厚労省・働き方改革推進検討会】兼業合わせ年960時間超えの医師への対応が課題に浮上

 厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(遠藤久夫部会長)は8月28日、5カ月ぶりに議論を再開した。医師の働き方改革については、当初、2024年度からの医師の時間外労働規制の施行に向け、今年の通常国会に法案を提出する予定だったが、新型コロナの影響もあり、議論がストップしていた。今回、厚労省は年内に議論をまとめ、来年の通常国会に法案を提出する方針を示した。ただ、2024年度からの時間外労働規制の施行は変わらないため、制度設計とその準備が急がれる。
 同日、厚労省は前回(3月11日)に了承した骨子案を整理した医師労働時間短縮計画策定ガイドライン案を示した。
 医師に対する時間外労働規制では、原則として年960時間を上限としつつ、年1,860時間の特例水準を設けた。しかし、地域の医療提供体制の確保のため認められる水準(B水準)は、暫定的な特例という位置づけで、2035年までに廃止することを目標としている。このため、B水準を選択する病院は、医師の健康確保と地域の医療提供体制の確保を両立させつつ、各医療機関における長時間労働の医師の時間外労働を短縮させていく必要がある。
 そのために、医師労働時間短縮計画を立て、着実に実施していくことが求められている。

多くの医師が兼業で年960時間超え
 医師労働時間短縮計画策定ガイドライン案の骨子は、前回の検討会で了承されていたが、今回のガイドラインにはペンディング(保留)の事項が追加されている。
 特に、「策定義務対象医療機関」の項目で、新たに検討が必要な事項が出てきた。これまで「策定義務対象医療機関」は、36協定が医療機関単位で締結されることを踏まえ、医師の副業・兼業先の労働時間は含めずに、年960時間を超える時間外労働の医師が働いている医療機関に、計画の策定を求めることを想定し、議論してきた。
 しかし、一つの医療機関では年960時間を超えず、副業・兼業先の労働時間を含めると、年960時間を超える医師が大学病院などで、少なくないことがわかってきた。
 同日、報告された「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」(研究代表者=裵英洙・慶應義塾大学特任教授)によると、調査対象とした地方大学と都市部に近い大学の6診療科において、週平均労働時間の年換算で、いずれの診療科でも大学病院だけだと年960時間を超えなかった。兼業先を合わせると4診療科で、年960時間を超えた。ただし、個別にみれば、どの診療科にも大学病院だけで、年960時間を超える医師はいる。
 これらの状況を踏まえ、副業・兼業を合わせた医師の労働時間を把握し、長時間労働の医師に対して、追加的健康確保措置を実施し、時間外労働を短縮する仕組みが大きな課題になることがわかった。
 副業・兼業の把握は、基本的には自己申告による。千葉大学副学長の山本修一委員は、「大学病院の手が届かない兼業先の労働時間も管理し、適切に追加的健康確保措置などを実施するのは大変だ。大学病院としては、長時間労働になる副業・兼業はやめるよう言わざるを得なくなる」と発言した。
 早稲田大学法学部教授の島田陽一委員は、「医師が自由意思で副業・兼業している場合は通常の自己申告に基づいた対応でよいかもしれないが、地域の医療提供体制確保のために副業・兼業が不可欠である場合は、違う考え方による仕組みが必要だ」と主張した。
 副業・兼業を含めた時間外労働を減らすことを、一つの医療機関が行うことには限界があるため、医師の働き方改革を実施する上で、地域医療提供体制の見直しが不可欠との意見は複数の委員から出た。厚労省は、医師の働き方改革・地域医療構想・医師偏在対策を一体的に進め、地域医療を確保しつつ、医師の時間外労働を減らす必要があることを強調した。

災害時の特例では面接は「簡便」に
 前回までの議論で積み残しになっていた課題についても、一定の整理がなされた。
 災害時における追加的健康確保措置の取扱いは、労働基準法の規定を参考に、適用除外の規定を医療法上に位置づけることになった。ただし、面接指導対象の月100時間以上の時間外労働が見込まれる者については、健康リスクが高いと考えられることから、災害時でも実施を求めるが、「簡便なもの」とすることができる。
 追加的健康確保措置の連続勤務時間制限・勤務間インターバルが確保できない場合の代償休息については、休日で消化できることに批判が出ていた。このため、「休日以外が望ましい」とし、面接指導により必要性が認められる場合は、「休日以外に取得させる」と整理した。
 医師労働時間短縮計画を承認し、評価する「評価機能」を担う法人については、具体的な指定先を検討する際に、①医療現場に精通している②労働時間短縮の取組みを客観的に評価する体制が整備されていることに加えて、地域医療提供体制との関係も分析できる③全国をカバーできる体制がある─が求められることが示された。
 これに関し、日本医師会副会長の今村聡委員は、「日本医師会はこれらの3つに該当する。ただ、日医だけで運営できるかというと、体制整備や財政基盤に様々な課題がある。他法人と連携することを含め、前向きに議論に参加したい」と意欲を示した。

 

全日病ニュース2020年9月15日号 HTML版