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医学部入学定員の臨時定員枠を2022年度も維持

医学部入学定員の臨時定員枠を2022年度も維持

【厚労省・医師需給分科会】恒久定員枠に「地域枠」を設定

 厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」(片峰茂分科会長)は8月31日、大学の医学部入学定員の臨時定員枠を2022年度も維持することを了承した。
 これまでの議論では、2022年度以降、臨時定員枠の削減を検討する予定としていたが、新型コロナの影響で十分な議論が行えなかったため、2023年度以降の課題とする。ただし、2022年度から恒久定員内に、地域枠を設定することを都道府県と大学に働きかけることも決めた。
 医学部入学定員は医師不足への対応で、地域枠を中心に2008年度から段階的に、臨時定員枠として増やしてきた。その期限が2019年度で切れ、2年間延長した。2022年度からは、従来の臨時定員枠を廃止し、恒久定員枠を含め、地域枠を中心に増員分を設定する方向で分科会の議論が進んでいた。
 マクロ需給推計によると、将来的に医師は過剰になるが、医師の偏在は依然として深刻であり、全体での医師数の抑制と医師の偏在是正を同時に進める必要があるためだ。
 同日、医師の働き方改革を背景に、医師の労働時間を週60時間程度に制限するなどの仮定を置いた最新の医師需給推計の結果が示されている。
 それによると、2023年の医学部入学者が医師になると想定される2029年頃に需要と供給が約36万人で均衡し、それ以降は医師が過剰になる。週60時間は年間960時間の時間外労働に相当する。医師以外の労働者の時間外労働の上限である週55時間に制限する場合は、2032年頃に約36.6万人で均衡する。
 これらを踏まえ、全日病副会長の神野正博委員は、「2023年度以降の臨時定員枠の取扱いが定まらないまま、恒久定員内に地域枠を設定することを推進することについては、納得できないとの意見もあると思うが、地域枠は医師の地域定着に有効な手段であり、恒久定員内の地域枠の設定を進めてほしい」と厚労省案に賛意を示した。
 また、「地域・診療科による医師不足は続いている。全体の医師数を抑制するのは、医師偏在是正が前提であり、偏在対策の効果がきちんと出ているかを検証しながら、今後の医学部入学定員の議論を進めることが大事だ」と強調した。
 他の委員も概ね厚労省案に賛意を示し、臨時定員枠の延長と恒久定員内に地域枠を設定することを了承した。
 なお、2020年の恒久定員は8,397人、臨時定員は933人、合計9,330人。現在でも恒久定員に839人の地域枠が設定されており、地域枠は1,679人で、医学部定員の6人に1人が地域枠という状況になっている。

「地域枠」の定義を明確化
 地域枠については、明確な定義がなく、混乱が生じていたため、厚労省が明確な定義を示した(下表を参照)。
 地域枠は大学の医学部が、一般とは別枠方式で学生を募集する。対象は「地元出身者もしくは全国より選抜」。卒業・医師免許取得後に従事要件を課す。従事要件は①卒直後より当該都道府県内で9年間以上従事(医師少数区域等に4年間程度従事)②都道府県のキャリア形成プログラムに参加。奨学金の貸与は必ずしも問わないとした。
 これまで、特に、地域枠と地元出身者枠の定義が曖昧であった。地元出身者枠は、「従事要件」は課さず、対象を地元出身者に限定するもので、各都道府県が偏在対策を講じるために、厚労省が一律の条件設定をせずに、柔軟な運用ができるものと位置づけた。なお、それ以外のものを大学独自枠とした。
 慶應義塾大学教授の権丈善一委員は、「これまでは地元出身者という医学部入学前の属性が、医師の地域定着に効果があるとの研究結果を踏まえ、いわゆる地元出身者枠を推進してきた。しかし、今回の『地域枠』は従事要件を課すことで、卒後の地域従事が地域密着に効果があるかを期待するものとなり、新しい試みになる」と評価した。
 岩手医科大学理事長の小川彰委員は、「この地域枠の定義を学生に理解しろといっても無理がある」と指摘。厚労省は、受験生に周知するためには、説明の仕方を工夫する必要があることを認めた。聖路加国際病院副院長の山内英子委員は、「若い医師がどのように行動するか」を想定し、仕組みを考える必要性を強調。「地域枠の縛りをきつくする北風政策だけでなく、太陽政策も考えるべき」と述べた。

 

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