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ホーム全日病ニュース(2020年)第972回/2020年10月1日号たくさんの病院がオンライン資格確認等システムに参画していただいています

たくさんの病院がオンライン資格確認等システムに参画していただいています

たくさんの病院がオンライン資格確認等システムに参画していただいています

【シリーズ●ICT 利活用の取組み――その⑤】厚生労働省保険局医療介護連携政策課長 山下 護

 来年3月から、オンライン資格確認等システムが始まります。システム導入の意義や今後のスケジュール、医療機関に対する支援について、厚生労働省保険局の山下課長に解説していただきました。

1.マイナンバーカードで保険資格の確認がオンラインでできる(令和3年3月開始)
 令和3年3月から、従来の健康保険証とは違い、顔写真が掲載され、ICチップがあるマイナンバーカードを利用し、保険資格の確認が受付で即時にできるようになる。病院の皆様から大変期待の高い「オンライン資格確認等システム」について解説する。
 各医療機関(病院・診療所・歯科診療所・薬局)は、社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険中央会が構築している「オンライン資格確認等システム」とつながる。患者が、医療機関の窓口にある顔認証付きカードリーダーに自分のマイナンバーカードを置くと、マイナンバーカードのICチップを通じて、患者の確実な本人確認と加入する保険の資格がオンライン資格確認等システムから確認できる仕組みである。
 この仕組みが実現すると、医療機関の窓口での保険証入力作業や資格過誤による返戻レセプトへの対応作業が大幅に解消されることになる。また、患者本人から同意を取得した上で、患者自身の過去の薬剤情報等をかかりつけ医・薬剤師等に提供することも実現できる。他にも、患者は、高額療養費の限度額認定に関する認定証の情報も取得できることとなる。なお、誤解のないように言うと、利用するのは「マイナンバーカード」であり、「マイナンバー」ではない。1人ひとりに付番されている12桁のマイナンバーを健康保険の現場で使うことはなく、あくまでもマイナンバーカードにあるICチップを使うこととなる。また、これまで医療機関の窓口で患者の健康保険証を預かっていた流れも変わる。患者自らマイナンバーカードを扱うので窓口の職員が患者のマイナンバーカードを預かることもない。

2.マイナンバーカードで保険資格を確認することの医療機関側のメリット
(1)保険証番号入力の手間の削減
 現行の運用では、初診の患者が来た場合、医療機関の窓口で健康保険証を受け取り、保険証記号番号、氏名、生年月日、住所等を医療機関のシステムに入力する必要があった。また、来院が二度目以降の患者については、来院ごとに、健康保険証を確認し、患者が加入している保険が以前と替わっていないか確認するとともに、替わっていれば、医療機関の窓口で患者の新しい健康保険証の番号を入力し直していた。これが「資格確認」によって生じる事務である。
 オンライン資格確認等システムが導入されれば、マイナンバーカードを通じて、患者の最新の保険資格を自動的に医療機関システムで取り込むことができるため、職員による各種の患者情報の入力事務が省略できる。特に不特定多数の患者が来院する病院では、目に見えて業務の省力化を図ることができる。

(2)資格過誤によるレセプト返戻作業の削減
 オンライン資格確認等システムを導入することにより、患者の保険資格がその場で確認できるようになる。これにより、資格過誤によるレセプト返戻が減る。資格過誤によるレセプト返戻の場合、医療機関の職員は、患者に対して電話や手紙により連絡をとり、再申請に必要な正しい資格情報を収集する必要があるが、こうした資格過誤によるレセプト返戻作業を大幅に減らすことができる。

(3)薬剤情報・特定健診情報の閲覧(資料1)
 これまで世帯単位であった健康保険証の被保険者番号(後期高齢者医療制度は除く。)については、本年秋以降順次、従来の番号にさらに2桁の番号を追加することで個人単位の被保険者番号に替わる。これにより、来年2021年10月からのレセプトでは、2桁が追加された個人単位の被保険者番号でレセプトを請求することになる。
 結果的に、これ以降、患者1人ひとりのレセプト情報から薬剤情報を抽出し、蓄積することが可能となり、患者の同意を得て、診療している主治医の方に見ていただく仕組みを構築する。特に、不特定多数の患者が訪れる病院では、外来での患者の聞き取りから、過去の治療歴等を正確に聴き取ることが難しい場合もあるだろう。そうした場合に、患者の同意を得て、薬剤情報を見ることができれば、患者の症状が薬剤情報から推測でき、より適切な診療ができるのではないか。さらに、オンライン資格確認等システムには、1人ひとりの加入者の特定健診の情報も格納されることから、例えば喫煙歴、血糖値なども見ることができる。

(4)災害時における被災者への対応
 通常時は、薬剤情報・特定健診情報を閲覧するためには、マイナンバーカードによる本人確認をした上で、患者本人が同意した場合に限られる。
 一方で、災害時は特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認がなくても、薬剤情報・特定健診情報の閲覧ができるよう検討する。
 災害で患者が普段飲んでいる薬剤を紛失等し、医療機関等で薬剤名を特定する必要が生じる場合などでも、オンライン資格確認等システムに参加していれば、薬剤情報等を閲覧することが可能となる。オンライン資格確認に参加していなければ、災害時の薬剤情報等の迅速な閲覧が出来ない。特に病院は、災害時に被災者の治療の拠点となることから、ぜひ参加していただきたい。

(5)患者側の利便性向上
 高額療養費制度の所得区分を示す限度額適用認定証は、加入者(患者)が保険者へ必要となった際に申請を行わなければ、発行されない。しかし、オンライン資格確認等システムに参加していただくことで、加入者から保険者への申請がなくても、医療機関等は患者の同意を得て、当該システムから加入者の限度額情報を取得でき、加入者は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなる。

資料1 薬剤情報・特定健診情報の閲覧

資料2 利用開始に向けた準備スケジュール

資料3 医療機関等向けポータルサイト

資料4 医療機関・薬局への補助

3.医療機関における対応(今後のスケジュール(資料2)と国による支援策)
 来年2021年3月から本格的に始まるマイナンバーカードによるオンライン資格確認の実現に向け、医療機関が円滑に顔認証付きカードリーダーの導入及び各医療機関のシステムの改修ができるよう、社会保険診療報酬支払基金が「医療機関等向けポータルサイト」(資料3)を構築している。おかげさまで、構築して1か月半で約42,000の機関に登録していただいている。このサイトを通じて顔認証付カードリーダーを選び、注文することができる。また、資料4にあるとおり、自院でのシステム改修に要した費用の補助を用意しており、その申請もこのサイトから行うこととなるため、必ずアカウント登録をしていただきたい。

4.今後の発展の可能性
 医療機関の窓口、診療の現場、患者など、従来の医療機関での受診の流れを大きく変える「マイナンバーカードの健康保険証利用」及び「オンライン資格確認等システム」だが、この仕組みが医療を大きく発展させる可能性がある。
 すべての医療機関・薬局がオンライン資格確認等システムに参加した場合を考えてみると、このシステムを通じて、全医療機関が一つのネットワークを構築することになるのだ。
 それだけではない。もし、患者1人ひとりのレセプトの情報がオンライン資格確認等システムに格納されることになれば、薬剤情報だけでなく、治療や処置の内容、どの部位をどの診断機器で検査したのかという情報も患者ごとに確認することが可能となる。さらに、薬剤情報のデータベースにもなっている月ごとのレセプト請求について、仮に、患者負担を請求する時点で、処方内容のデータをオンライン資格確認等システムに格納できるようにすれば、リアルタイムで処方情報が閲覧できるようになる。
 もちろん、上記のような仕組みを実現するためには医療に関わるすべての方々の協力が欠かせない。私たちは、関係する皆様の協力を得ながら、すべての医療機関に参画していただけるよう、健康保険に加入する加入者により良い診療を届けるべく、「マイナンバーカードの健康保険証利用」及び「オンライン資格確認等システム」の構築に努力していきたい。

 

全日病ニュース2020年10月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] オンライン資格確認

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2020/200305_2.pdf

    また、顔写真入りのマイナンバーカ. ードに ... さらに、オンライン資格確認等
    システムを通じて、患者本人の同意の下、医療 ... 資格過誤によ. る返戻レセプト.
    が減った. -顔認証付きカードリーダーまたは. 目視で顔認証. -暗証番号(4桁)の
    入力.

  • [2] 2008年7月15日号 - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2008/080715.pdf

    社会保障カードにおいて、顔写真の貼付は採用される ・持参者の指紋や静脈等の
    ... る、②医療保険資格情報をレセプトに自動転記ができ カードを持参した者が ...
    過誤調整業務が減るとともに、年間900万件ある返戻 「希望者には、身分証明書
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