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ホーム全日病ニュース(2020年)第973回/2020年10月15日号医師の時間外労働規制でB水準の新たな特例を設ける

医師の時間外労働規制でB水準の新たな特例を設ける

医師の時間外労働規制でB水準の新たな特例を設ける

【厚労省・医師の働き方推進検討会】複数病院勤務で960時間を超える場合を対象に

 厚生労働省の医師の働き方改革の推進に関する検討会(遠藤久夫座長)は9月30日、働き方改革に伴い2024年度から施行される医師への時間外労働規制の特例について、新たな類型を設けることを了承した。医師への基準では、通常のA水準、特例のB・C水準がある。B水準は年間の時間外労働が通常の960時間より長い1,860時間まで認められる。新たにB水準の類型を設けることとし、単独の病院勤務では960時間を超えないが、兼業先を含めると、960時間を超えてしまう病院を対象とする。
 厚労省によると、病院勤務医の約6割が複数の医療機関に勤務している。兼業先の数は、1か所が26%、2か所が16%、3か所が9%、4か所以上が7%である。大学病院に限ると、9割以上が複数の医療機関に勤務している。兼業先の数は、大学病院だと2か所までが過半を占める。
 週の労働時間では、単独の病院で年間の時間外・休日労働が960時間を超える週60時間以上の医師は、病院全体で28%、大学病院で24%となっている。大学病院の方が若干低いが、兼業先の労働時間を通算すると、大学病院ではさらに23%が、週60時間を超える。大学病院で特に、兼業先を含めるとA水準を満たせない医師が多く出てくることがわかった(右図参照)。

大学や地域医療支援病院を想定
 労働基準法により、副業・兼業を行う労働者は、労働時間を通算し、時間外労働規制を受ける義務がある。これまでB水準は、単独の病院で、時間外労働が年間960時間を超える医師が勤務していることを想定し、B水準の病院を指定することになっていた。具体的には、三次医療機関や、年間救急車受入台数千台以上の二次救急医療機関などに、B水準を認めるとしていた。
 しかし、兼業先の労働時間を通算すると、時間外労働が年間960時間を超える医師が、特に大学病院などで少なくないことがわかり、そのような医師は医局からの要請により、関連病院に派遣され、地域医療を支えている面があることから、B水準に新たな類型を設けることになった。
 新たな類型は、「医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制を確保するために必要な役割を担う医療機関」と整理。単独でB水準にはならない大学病院や、地域医療支援病院などが対象になると考えられる。
 ただし、新たな類型のみでB水準の指定を受ける場合は、単独の病院で定める36協定における時間外・休日労働の上限は、年間960時間以内に収めることとする。
 B水準は、2036年度までに解消させるべき暫定的な措置とされている。このため、B水準の病院は、医師労働時間短縮計画を策定し、年間960時間を超える時間外労働の医師の労働時間を着実に減らしていく必要がある。今回の新たな類型においても、それが求められる。
 その場合に、追加的健康確保措置を実施し、労働時間短縮の責務を負う病院にとっては、時間外労働を減らすために、医師を引き揚げる判断が現実的になる可能性がある。そのことを懸念する意見が、検討会で相次いだ。厚労省は、医師の派遣が行われなくなり、地域医療が重大な影響を受けることがないよう、地域の医療提供体制全体の中で検討すべき課題とし、さらに整理する必要があると説明した。
 また、新たな類型の場合は、「2036年度までに特例を解消することは難しいのではないか」との意見も出たが、厚労省は、B水準として、解消を目指すべきとの意向を示した。

厚労相が労働時間短縮目標で指針
 医師の労働時間短縮に向けて厚生労働大臣が告示する指針案も示された。
 2035年度末までにB水準を解消するため、「医師の時間外労働短縮目標ライン」を国が設定するとともに、関係者が取り組む推奨事項を示す。基本的な考えでは、「医師の働き方改革は、医師の偏在を含む地域医療提供体制の改革と一体的に進めなければ、長時間労働の本質的な解消を図ることはできない」ことを強調している。
 時間外労働の短縮では、2035年度末に年間960時間以内に収めるため、3年ごとの段階的な目標値を設定する。例えば、2024年4月に年間1,860時間でスタート。2027年に年間1,635時間、2030年に年間1,410時間、2033年に年間1,185時間、2036年に年間960時間といったように、目標値を設定する。働き方改革の成果は、直線的な数値で現れるわけではないが、様々な取組みの総合的な成果として、このような目標の実現を期待する。厚労省は、改めて整理するとの意向を示した。
 関係者に推奨される事項は、行政(国・都道府県)、医療機関(使用者)、医師、国民に分ける。医療機関に対しては、◇適切な労務管理◇タスク・シフト/シェア◇医師の健康確保◇診療科ごとの事項◇計画のPDCAサイクル◇高度特定技能育成計画に関する相談体制─を例示した。医師に対しては、自主的な取組みや、自己の労働時間を把握し、副業・兼業先の労働時間を適切に自己申告することを求める。

 

全日病ニュース2020年10月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年3月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180301.pdf

    2018年3月1日 ... 関する検討会」(岩村正彦座長)は2月. 16日、医師の労働 ... 療法人に移行した
    上で、役員の過半数. を相良病院グループ ... 類型(Ⅱ). 医師. 48:1(施設で3
    以上). 100:1(施設で1以上). 薬剤師. 150:1. 300:1. 看護職員. 6:1.
    6:1 ... に関する検討会」(遠藤久夫座長)に、. 吉村理事長の ...

  • [2] 第 8章 積み重ねた独自の情報で医療崩壊に挑む

    https://www.ajha.or.jp/about_us/50years/pdf/50years_08.pdf

    病院以外にも地域一般病棟という類型が考えられ. る」と提起した。 ... 対する
    支援を行った病院も42.9%と過半数を下回. った。 ... 員が早期対応の必要性を
    訴え、遠藤久夫会長よりエビデン ... イン策定検討会座長)がガイドラインの概要
    を説.

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