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ホーム全日病ニュース(2020年)第973回/2020年10月15日号新興・再興感染症に対応した医療提供体制の議論を開始

新興・再興感染症に対応した医療提供体制の議論を開始

新興・再興感染症に対応した医療提供体制の議論を開始

【厚労省・医療計画見直し等検討会】感染症法等での今後の対応踏まえて

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」(遠藤久夫座長)は10月1日、新興・再興感染症に対応できる医療提供体制を整えるための議論を開始した。新型コロナの感染拡大を踏まえ、近く議論される感染症法等における今後の対応を踏まえ、医療計画や地域医療構想、外来機能の分化・連携における取扱いを検討することを確認した。同日の検討会では、医療計画の5疾病・5事業および在宅医療に、新興・再興感染症を加えるべきとの意見が相次いだ。
 新型コロナの感染拡大により、都道府県が策定する感染症法に基づく「予防計画」や、5疾病・5事業および在宅医療の医療提供体制を整備する「医療計画」が想定しない事態が生じた。
 その結果、地域により病床や医師・看護師、医療用物資が逼迫した。感染症対応における医療機関間の役割分担や連携も課題となった。新型コロナのような感染症が定期的に流行しても、医療崩壊を起こさず、柔軟に対応できる医療提供体制が求められている。
 なお、5疾病は◇がん◇脳卒中◇急性心筋梗塞◇糖尿病◇精神疾患─。5事業は◇救急医療◇災害時における医療◇へき地の医療◇周産期医療◇小児救急医療を含む小児医療─である。
 一方で、超高齢社会や人口減少という中長期的な変化に対応するための医療提供体制を構築する作業が進んでいる。地域医療構想はその代表だが、新型コロナの感染拡大で、診療実績の乏しい公立・公的病院の再編統合を行うための議論が中断した。また、外来機能の分化・連携を推進するための議論も別途進める予定となっている。
 8月24日の社会保障審議会・医療部会において、中断していた地域医療構想や外来機能の分化・連携の議論を再開することが確認された。ただ、新型コロナの感染拡大を踏まえた議論とする必要があり、感染症法等における今後の対応の整理を行った上で、議論を再開することが必要になった。
 感染症法等における今後の対応は、同検討会が置かれている医政局ではなく、健康局の会議で議論される予定。それを踏まえ、冬にならないうちに、医政局での議論を始めたい考えだ。

医療計画への追加に賛成相次ぐ
 新型コロナのような新型ウイルスによる感染症は、今後定期的に発生する可能性が高いと言われる。それに備え、「新興・再興感染症」を医療計画の5疾病・5事業および在宅医療に追加すべきとの意見が、同日の検討会で委員から相次いだ。
 日本医師会の城守国斗委員は、「これまでは幸いなことに、感染症がここまで医療提供体制に影響を与えることはなかった。今後に備えるために、医療計画に入れるべき」と主張した。
 全日病副会長の織田正道委員も、「これまで、このような感染症のリスクマネジメントが医療計画で想定されていなかった」と述べ、追加に賛成した。
 また、佐賀県において、地域医療構想を推進するための地域医療構想調整会議などの開催により、医療機関の役割を話し合う土壌ができていたことが、「新型コロナ患者を受け入れる病院と、受け入れずに一般医療を担う病院の役割分担ができた」ことにつながったとの認識を示した。
 一方、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、「新興・再興感染症への備えと医療計画や地域医療構想での提供体制の整備は性格が異なると思う。新型コロナについても症状に応じた受入れ先が整理され、病床が確保されるようになった。医療計画には入れずに、感染症法に基づく予防計画で対応すればよいのではないか」と慎重な議論を求めた。
 奈良県立医科大学教授の今村知明委員は、「感染症は非常時、医療計画は平時の対応で、元々発想が異なり、調整が難しいが、調整を図る必要がある」と述べた。また、地域医療構想との関連では、「今回の経験で、余力がないと受け入れられないことがわかった。地域医療構想の推進で、急性期病院が減ると、余力が削がれる」と、地域医療構想の見直しも必要とした。
 外来機能の分化・連携については、NPO法人の山口育子委員が、「時間的な余裕もないので、当面は(外来版地域医療構想の創設には踏み込まず)全世代型社会保障検討会議の要請に応えることに注力すべきではないか」と述べた。全世代型社会保障検討会議の中間報告では、紹介状なし受診での定額負担義務化を200床以上の一般病院まで拡大することが盛り込まれている。
 同検討会には、「医療計画」、「地域医療構想」、「在宅医療、医療・介護連携」の3つのワーキンググループがある。このため、「在宅医療、医療・介護連携」でも、新型コロナ対応を議論すべきとの意見が出た。織田委員も、「介護施設などが感染症のクラスターになっている。在宅医療を含め連携した議論が求められる」と賛意を示した。

 

全日病ニュース2020年10月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 5疾病・5事業、在宅医療の取組み状況を報告|第927回

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20181015/news04.html

    2018年10月15日 ... 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」(遠藤久夫座長)は9月28
    日、今年度から始まった医療 ... 疾病・5事業は、◇がん◇脳卒中◇心筋梗塞等の
    心血管疾患◇糖尿病◇精神疾患◇救急◇災害◇へき地◇周産期◇小児である ...
    全日病副会長の織田正道委員は、「現状の調整会議は、公的医療機関等改革
    プランなどを材料に、医療機能の分化・連携の議論をするのが精一杯。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年12月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/voice/topnews/backnumber/pdf/2016/161201.pdf

    2016年12月1日 ... に関する検討会」(遠藤久夫座長)は11. 月9日、2018年度からの第7次医療 ...
    の機能分化・連携や療養病床の新たな. 受け皿の趨勢が定まっていない ... 僻地
    離島の医療機関へ定期的に医療. スタッフを派遣し、2014年8月 ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170401.pdf

    2017年4月1日 ... 遠藤久夫. 座長)に、地域医療構想調整会議の具. 体的な議論の進め方の案を示し
    た。厚. 労省が、2017年度の調整会議のスケジ ... 能分化を促す医療機関名を具体
    的にあ. げるとした点に ... 由としては、①卒業後に、(へき地医.

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