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ホーム全日病ニュース(2020年)第974回/2020年11月1日号臨床研究医の応募は定員40人に対し27人

臨床研究医の応募は定員40人に対し27人

臨床研究医の応募は定員40人に対し27人

【日本専門医機構】関係者は様子見の気配。身分保障への不安も。

 日本専門医機構の寺本民生理事長は10月19日に会見を行い、今年から始まった臨床研究医コースの採用結果と、通常の専攻医募集のスケジュールなどを報告した。サブスペシャルティ領域の認定作業も、来年3月までに調整を終え、来年9月頃に審査を実施する方針が示された。
 今年から始まり、9月23日に募集を開始した臨床研究医コースは10月中旬に期限を迎えたが、定員40人に対し、応募は27人だった。
 地域別では、東京が15人、大阪が5人、福岡が3人、京都が2人、広島1人、長崎が1人。診療科別では、内科が7人、皮膚科が5人、小児科が4人、泌尿器科が3人、精神科が2人、整形外科が2人、眼科が2人、耳鼻咽喉科が1人、総合診療が1人である。
 寺本理事長は、応募が定員に満たなかったことについて、「医道審・医師専門研修部会でも指摘されたが、今年提案し、今年始めたことが、大学や専攻医が十分理解しないまま、進んでしまったことの理由の一つだと思う。始まったばかりで不安もあり、様子見との声もきいている。不安の中身には、専攻医の(給与など)身分保障の問題がある。当然、身分は保障されなければいけない」と説明した。
 また、「最初の段階で30人程の応募があったが、制度の理解が不足しており結局取下げになった応募がある」という。寺本理事長は、「来年は理解が進み、もっと増えると思う。日本の医学研究を推進するため、少なくとも40人は超えることを期待している」と述べた。
 臨床研究医コースの定員が安易に増えることには、「シーリング逃れ」の懸念がある。今回は応募が少なく、応募の理由の確認も行われた。人数が増えれば、今後、対応すべき課題になる可能性がある。

専攻医の募集は11月4日から
 通常の専攻医の募集はこれまでより遅い11月4日に始まる。2次募集は12月1日、最終調整期間は来年1月6日から1月22日まで。4月からの研修開始に支障が生じないよう、最終調整期間を厳守する。今回から正式に医籍番号をID とし、システムに入力。記録が管理されることになる。
 また、今回の募集においても、都道府県別・診療科別の募集上限(シーリング)が設定されているが、「地域枠」の専攻医は、シーリング対象外となる。「地域枠」は特定地域での診療従事要件が課されているため、シーリングに含めると、要件を満たせなくなる恐れがあるためだ。「地域枠」の専攻医が増えてきており、混乱が生じないよう、関係者に周知を図る。
 プログラム制とは別の、研修場所と期間を明確に定めていないカリキュラム制の周知も図る。病気など予期できない事由ではなく、出産など予定がわかる場合には、事前に登録ができるシステムに改善されたという。

来年9月頃にサブスぺ領域を審査
 多くの基本診療領域が、来年の3月までに最初の研修を終える中で、サブスペシャルティ領域の認定の議論は遅れている。同機構としては、議論の進捗を踏まえると、来年9月頃に各サブスペシャルティを審査し、最終的に2021年度中に認定を完了させたい考えだ。認定前に始まってしまうサブスペシャルティの研修については、遡及認定を行う。
 各基本診療領域に対しては、関連するサブスペシャルティの学会との連絡協議会で、候補を絞り込んでもらう。例えば、内科であれば、循環器や呼吸器の学会と協議してもらう。その上で、連絡協議会による候補の是非を、同機構のサブスペシャルティ領域検討委員会で決定する。

社会保障費121兆5千億
医療は約40兆円で3割強
 国立社会保障・人口問題研究所は10月16日、2018年度社会保障費用統計を発表した。社会保障給付費は、前年度比1.1%増の121兆5,408億円で過去最高。対GDP 比は22.16%で、0.21%ポイント増えた。1人当たり社会保障給付費は1.3%増の96万1,200円となった。
 社会保障給付費を部門別にみると、医療は39兆7,445億円(全体の32.7%)、年金は55兆2,581億円(同45.5%)、福祉その他は26兆5,382億円(同21.8%)となった。福祉その他のうち、介護対策は10兆3,872億円(同8.5%)。
 対前年度伸び率は、医療が0.8%、年金が0.8%、福祉その他が2.3%、介護対策が2.8%で、介護政策の伸びが高い。また、政策分野別では、「高齢」が46.0%で半分近くを占める。
 社会保障給付費の社会保険料や公費などの社会保障財源は、総額132兆5,963億円で、前年度に比べ8兆6,788億円減となっている。減少したのは資産収入で、年金積立金の運用実績が前年と比べ悪化したためである。
 社会保障費用統計のうち、社会支出はOECD(経済協力開発機構)の基準で集計している統計だが、社会保障給付費や社会保障財源はILO(国際労働機関)の規準で示している。

 

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