全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2021年)第978回/2021年1月1・15日合併号号地域医療研修の「4週間」から「半年」への延長は時期尚早

地域医療研修の「4週間」から「半年」への延長は時期尚早

地域医療研修の「4週間」から「半年」への延長は時期尚早

【医道審・医師臨床研修部会】地域医療の「戦力」より臨床能力の習得が大事

 医道審議会・医師分科会・医師臨床研修部会(國土典宏部会長)は12月10日、臨床研修の地域医療研修の期間を現行の「4週間以上」から「半年以上」に延ばすことを義務化すべきとの要望が出ていることに対し、「時期尚早」との意見で一致した。要望の背景には、研修医を地域医療の「戦力」とみなす考えがあるが、臨床研修では臨床能力の習得の観点がより重要との意見が大勢だった。
 地域の医師不足問題の解決のため、医師が免許取得後、できるだけ早く地域医療に貢献できる臨床能力を持つ医師となり、地域医療に従事することが期待されている。
 医学教育においても、その方向性のもと、いわゆるスチューデント・ドクターの法制化を通じた臨床実習の充実や国家試験の見直しが進んでいる。卒前教育と臨床研修の連携が進むことで、より多くの臨床研修1年目修了時の医師が、充分に地域医療に貢献できる診療能力を持つことが政策目標となっている。
 しかし、それは今後の検討により、制度が整備・実施され、その経験を経た医師が出てきてからである。
 全日病副会長の神野正博委員は、「『患者が営む日常生活や居住する地域の特性に即した医療を理解する』という地域医療研修の理念は重要で、地域医療研修を充実させることの意義は大きい。しかし、現状で、研修期間を半年延ばすことを問題にするなら、相当な議論が必要になる。要望が、研修医に単独で当直や日直をやってもらうという『戦力』を期待するものであれば、無理がある」と主張した。他の委員からも同様の意見が相次ぎ、同部会として「時期尚早」との意見で一致した。
 また、同日は、地域医療研修に関し、聖路加国際病院の本多さやか氏、慶應義塾大学医学部医学教育統轄センターの吉野鉄大氏、医療法人SHIODA塩田病院の青木信也氏から、総合診療科での研修医への指導体制などについて、意見聴取を行った。
 その結果、「研修医を地域に放り出すのではなく、研修病院できちんとした指導体制を作ることが重要」(國土部会長)との知見が得られた。
 厚生労働省は部会の意見を受け、来年度以降、地域医療研修の調査を実施する。研究班を設置し、地域医療研修の目的・意義を再度整理し、研修を行うべき地域・期間・研修内容・指導医の配置などを把握するとしている。

研修医募集上限の計算などは踏襲
 2022年度都道府県別募集定員上限の激変緩和措置の見直しを了承した。現状では、定員数の急激な減少を避けるため、「募集定員上限が直近の採用実績を下回る場合、募集定員上限を直近の採用実績と同数」としている。この計算方式を用いると、2022年度の定員が2021年度の定員よりも多くなる都道府県が生じるため、激変緩和措置の計算方法を見直す。
 なお、研修医の大都市集中を避けるため、2025年度までに全国の臨床研修希望者数に対する募集定員数の割合を1.05倍まで縮小する方針や、募集定員上限計算の方法は踏襲する。
 医師の働き方改革の関連では、2024年度から開始される時間外労働規制において、年1,860時間を上限に許可される特例であるC-1水準が設けられる。このため、C-1水準の指定を受ける病院は、2023年度に募集する臨床研修プログラムから時間外労働時間数を明示することを了承した。

 

全日病ニュース2021年1月1・15日合併号号 HTML版