全日病ニュース

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新型コロナウイルス(COVID-19)の対応

新型コロナウイルス(COVID-19)の対応

【診療報酬改定シリーズ●2020年度改定への対応⑤】医療保険・診療報酬委員会 委員 福井 聡

 2020年1月に日本でも感染者が確認された新型コロナウイルス(COVID-19)はこの原稿を書いている現在、(※2020年11月16日現在)全世界的に今なお収束する気配を見せず、一部の地域では更に感染者数は増加傾向にある状況である。ワクチンの開発などいくつか明るいニュースもあるものの、日本国内でもこれから冬に向け第3波の懸念が浮上し、一部地域では過去最高の新規感染者数の記録を更新している。その中で医療機関は患者の対応のみならず、様々な対応が必要な状況にある。

診療報酬における臨時的対応
 診療報酬改定に関しては2020年4月、通常通りのスケジュールで改定が行われたものの、新型コロナウイルス対応の臨時的取扱いが頻回に発出され、改定の影響よりも臨時的取扱いの影響の方が大きくなっている。現場では緊急事態宣言の発動を受け、患者の受診抑制、緊急性の低い手術の延期、その影響による病床稼働率の低下に加え、学校の休校などもあり勤務可能な職員の確保にも追われた。その中で新型コロナウイルス患者や疑似患者に対応しなければならない医療機関の状況は精神的にも経済的にも追い込まれた状況であった。
 そのような状況もあり、施設基準を満たすことができない医療機関救済のため、一時的な変動についての届出は不要となり、定期的な研修や医療機関の評価を要件としている項目の一部についても実施を延期できる事となった。また通常では算定できない項目も算定可能となっている。ここでは紙面の都合上、全ての項目について触れることはできないが、今回の臨時的取扱いの特徴として、項目数が多い事、そして突然算定ルールが変わることが特徴だと感じている。
 現在、疑義解釈はSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)検査対応を中心に、その42まで出ており、その内容で算定ルールや点数の変更が頻回に行われている。一例をあげると通常950点の救急医療管理加算Ⅰは患者の状態など算定に関する一定の条件はあるものの、2020年4 月18日から1,900点( 2 倍)、5月26日からは2,850点(3倍)、9月15日にはなんと5倍の4,750点まで点数の変更が行われ、また点数だけでなく算定可能期間の変更もされている。このように月の途中での算定ルールや点数が変更されるのはあまり例がなく、昨日の算定点数が今日から違うというような状況は今まで経験がない事だろう。他にも指導管理料や一部の特定入院料などの算定についても同様の対応が必要な項目が存在している。特に入院基本料については点数も高いため、収益への影響が非常に大きい。この辺りは必ず対象入院料と算定条件を確認頂きたい。

情報の取得と院内の対応が重要
 このような状況下で重要となってくるのが、院内で情報を得て、現場に伝え、正しく算定するという事ができているか、という事である。通常改定は時期も決まっており、変わることを前提に情報が発信される事を待っている状態にあるため、比較的情報収集が容易であるが、今回のような、いつどのように変わるかわからない情報に関しての情報収集は非常に難しいのではないだろうか。診療報酬請求に使用する医事課のコンピューターは情報セキュリティーの観点からもオフラインシステムを採用している医療機関が多く、情報の取得に苦労している医療機関も多いと思われる。院内の体制を整備し、全日本病院協会からの情報、中医協資料、その他診療報酬関連の情報に注視いただき、くれぐれも算定漏れのないようにしていただきたい。
 また、通常改定の経過措置の期限が9月末に予定されていたが、2021年3月末まで一部延期となった(表1)。これにより、今年度の重症度、医療・看護必要度の変更は来年度に持ち越された格好だが、届出実績を作る期間が必要であり、現時点では4月までの実質的な延期ではない事に留意頂きたい。この後も臨時的取扱いに関する情報には十分注意が必要である。

補助金や低金利融資の活用
 その他の対応として、診療報酬とは直接関係はないが、国、都道府県若しくは市区町村からも多くの補助金が提示されている。補助金の中には新型コロナウイルス患者またはその疑いのある患者数によるものやその確保病床稼働と連動するもの、外来での新型コロナウイルス検査対応から院内設備、備品購入に至るまで多種多様であり、またその請求期間が限定されているものも数多く存在する。医療従事者慰労金などに代表される医療機関やその従事者への支援など、是非活用いただきたい。
 補助金ではないものの、医療機関支援のため、無金利や低金利での融資についてもよく耳にするところだと思う。独立行政法人福祉医療機構(WAM)などに代表される医療機関向けの融資についても開始後に条件付きではあるが増額枠の設定がなされた。また、全国信用保証協会連合会を利用した低金利融資も収益の状況に応じて利用可能である。ただし、ここで注意いただきたいことは、基本的にこちらには補助金と違い返済義務が当然存在する。過去の病院経営調査などからもわかるように、通常でもほとんど利益の出ない医療機関において、当然ながら、この返済をしていくには今まで以上の利益が必要であり、増益計画が必要である。
 それができない医療機関には非常に厳しい未来が待っている可能性がある。医療機関がこれからも生き延びるためには診療報酬の引き上げしかないのかもしれない。

表1 2020年9月30日を期限とする経過措置が設けられた項目一覧

(2020年8月19日 中央社会保険医療協議会資料(総―6)抜粋)
※破線囲み部分について、経過措置の期限を2021年3月31日まで延長する予定

 

全日病ニュース2021年1月1・15日合併号号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年6月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200601.pdf

    2020年6月1日 ... 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う. 病院への影響を ... 休校の長期化で9月入学
    制も急浮上し. ている。 ... 算定が大きく. 遅れたことな. どを踏まえ、. 「加算は
    必要. ないのではな. いか」との意. 見が複数の委. 員から出た。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年3月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200315.pdf

    2020年3月15日 ... 検査名は、「SARS-. CoV-2新型コロナウイルス)核酸検 ... 同日は、新型
    コロナウイルスの感染拡. 大防止のため、 ... ない場合があり、外来診療料を算定
    す. る病院でも対応を ... 生の臨時休校が要請された。 安倍首相の要請 ...

  • [3] 今後を見据えた新型コロナウイルス感染症の医療提供体制整備 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2020/200619_15.pdf

    コロナウイルス感染症患者に対する医療を都道府県ごとに確実に確保していく.
    ことを中心とし ... 外出自粛要請、営業自粛要請、大規模イベントの実施制限、
    学校の休校等、 ... 新たな「流行シナリオ」をもとに都道府県が患者推計を算定
    する.

  • [4] 事 務 連 絡 令和2年4月 14 日 公益社団法人 全日本病院協会 御中 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2020/200415_2.pdf

    新型コロナウイルス感染症に係る雇用維持等に対する配慮に関する要請について.
    新型コロナウイルス感染症の影響により、経済全般にわたって甚大な影響が生じ
    てお. ります。また、令和 ... ③個人事業主・フリーランスから、発熱等の風邪
    の症状や、休校に伴. う業務環境の変化を ... ※ 助成額は、前年度の雇用保険の
    保険料の算定基礎となる賃金総額等から算定される平均賃金額に. 休業手当支払率
    ( ...

  • [5] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200401.pdf

    2020年4月1日 ... 新型コロナウイルス患者が爆発的に. 増加するオーバーシュートが ... coronavirus/.
    医療団体と厚労省が参加する協議会を設置. 新型コロナウイルス. オーバー
    シュート時に備え ... 首相より全国一斉休校の要請がなされ、. 3月日 ... ▷J
    コード(処置)のうちDPC入院で出来高算定できるもの(※1)を算定.

  • [6]

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