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ホーム全日病ニュース(2021年)第979回/2021年2月1日号地域包括ケア推進に向けた地域連携と入退院支援について

地域包括ケア推進に向けた地域連携と入退院支援について

地域包括ケア推進に向けた地域連携と入退院支援について

診療報酬改定シリーズ●2020年度改定への対応⑥(最終回)医療保険・診療報酬委員会 委員長 津留英智

2020年度診療報酬改定からみた、地域連携と入退院支援
 入退院支援加算は、患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるよう、施設間の連携を推進したうえで、入院早期より退院困難な要因を有する患者を抽出し、退院・在宅復帰に向けて支援することを評価したものである。
 2018年の診療・介護報酬同時改定では、地域包括ケアシステム構築のための取り組みを強化し、多職種間連携の強化が行われた。医療機関が患者に対して入院早期から退院直後まで切れ目のない支援を行った場合に入退院支援加算として評価する見直しが行われ、従来の退院支援加算の名称が「入退院支援加算」に変更された。また2020年診療報酬改定では、入退院支援加算の届け出病院は平均在院日数が短い傾向であることが評価され、また一方で「入退院支援および地域連携業務の関する十分な経験を有する看護師の配置は困難」との指摘があり、その点が緩和された。入退院時連携に係る医療・介護報酬のポイントを表にまとめているのでご参考にして頂きたい。簡単に「入退院支援」に関する2020年度改定の変更点をまとめると以下の通りである。◆  入院時支援加算は、入院前の支援の状況により2区分に再編された◆  入退院支援加算に総合機能評価加算が組み込まれた(新設)(従来の総合評価加算は廃止)◆  人員配置の「常勤専従」の考え方が、「常勤換算」「選任」で可能となった

病院における入退院支援部門を有効かつ効率的に運営するためには
 病床の機能分化と連携、平均在院日数の短縮、在宅復帰率等の評価より、効率的な入院医療を求められる時代においては、地域連携とベッドコントロール(入退院調整)がその要であり、病院内部の入退院支援部門のスタッフは、病院内外の多職種連携を促進させ、効率的な病床運営に寄与するためにも、その生産性向上に向けたスタッフのスキルアップが欠かせない。現在では、どの病院でも入退院支援部門にスタッフを配置し運営していると思われるが、地域における病院の専門性や医療機能、地域の疾病構造によっては、その算定件数にはかなりばらつきが見られると思われる。この入退院支援部門の生産性向上のためにはいくつかの課題があげられる。
①対象となる患者の抽出をどのようにするのか、アセスメントの標準化
 入退院支援加算を算定するには、まず入院後3日以内(入退院支援加算2は7日以内)に退院困難な要因を有する患者の抽出が必要となる。要因11の項目は以下の通りである。
ア)悪性腫瘍、認知症または誤嚥性肺炎の急性呼吸器感染症のいずれか、
イ)緊急入院
ウ)要介護状態であるとの疑いがあるが、要介護認定が未申請(主に65歳以上)
エ)家族または同居者から虐待を受けている又はその疑いがある
オ)生活困窮者
カ)入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式に再編が必要(必要と推測される)
キ)排泄に介助を要する
ク)同居者の有無に関わらず、必要な養育または介護を十分に提供できる状態にない
ケ)退院後に医療処置(胃ろう等の経管栄養を含む)が必要
コ)入退院を繰り返している
サ)その他患者の状況から判断して、ア)~コ)に準ずると認められる

 上記項目のうち一つでも該当していれば算定対象となるため、スクリーニング、チェックシート等を活用し、介入必要性のアセスメントの標準化が図れるようにし、対象となる患者の抽出漏れの無いようにする必要がある。
②カンファレンスを効率的に
 次に入院後7日以内(入退院支援加算2はできる限り早期)に、多職種によるカンファレンスが必要となる。必須の職種は(病棟看護師、病棟に専任の入退院支援職員、入退院支援部門の看護師・社会福祉士)である。特に病棟に専任の入退院支援職員が中心となって、効率的に対象患者をリストアップし、患者別の基本情報、必要な退院支援等の情報をまとめて可視化し、如何に効率の良いカンファレンスの運営を行うかがカギとなる。
③退院支援への認識の共有について
 患者が適正な入院日数で治療を受け、適正な場所へ退院して頂くために検討するあらゆる支援を含んでおり、特別な行為や結果・成果を必ず求められるものではなく、退院支援の本来の目的を多職種でしっかりと共有しておくことも重要である。
④退院支援計画書のフォームについて
 厚労省が公開しているモデル書式は自由記載の部分が多いため、より自院に適合するようチェックリスト化し、効率的な退院支援計画書を作成することも重要である。
⑤算定件数を上げるためには
 退院困難な要因を有する患者の抽出で、特に(ア)(中でも認知症)、(イ)救急搬送、(コ)入退院を繰り返すケース、が退院困難なケースの多くを占める要因となる。この3要因に該当する患者については、特に多職種でしっかりと対応して、結果として算定件数を上げることができるよう、日ごろから多職種による勉強会やカンファレンス等で、情報や成果をフィードバックし、常に運用面の見直しを図りながら実務レベルを上げておく必要がある。

最後に
 入退院支援には、普段から多くの多職種スタッフが関わることから、今後、入院医療等の調査・評価分科会や中医協において、この「入退院支援加算」の効果について医療現場からの様々なデータを分析し、次回2022年改定においては、「入退院支援加算」に対して、働き方改革の視点からも、より実務に見合った高い評価が行われることを期待したい。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年10月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/151001.pdf

    2015年3月31日 ... 地域医療構想、地域包括ケア病棟など喫緊の課題を議論. 「第57回全日本 ... 科
    医師を選任することを原則とするこ. と。また、 ... 地域ごとに、病床を医療
    ニーズの内容に応じて機能分化しながら、切れ目のない. 医療・介護を ...

  • [2] 局 医 療 課 都道府県民生主管部

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180402_11.pdf

    2018年3月30日 ... ただし、入退院支援加算1において、病棟に配置される専任. の職員が入退院支援
    部門の専任の職員を兼ねる場合は、入院時支援加算の専. 任の職員と兼ねることは
    できない。 全日本病院協会 医療行政情報 https://www.ajha.or.jp/ ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2013年11月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2013/131115.pdf

    療、地域特性や病床特性に応じた病院. 経営、総合診療医など、第6次医療法. 改正
    を控え、 ... や切れ目のない連携 等. 医療部会および医療保険部会におけ. る議論は
    2 ... 止し、受入病院が指導医を選任する. ・受入病院と連携した病院・診療所に.

  • [4] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年11月15日号) - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/141115.pdf

    地域医療構想策定GL検討会 高度急性期・急性期病床の医療資源投入量の傾向が
    異なる患者の扱いも重要な論点. 10月31日 ... 後の生活も、施設と在宅の双方
    にわたる切れ目ない支援を行う計画を策定す ... たに選任された専門委員(医療・
    介護分.

  • [5] 介 護 保 険 最 新 情 報

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2014/140214_1.pdf

    2014年2月13日 ... ①都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、
    在宅医療・介護の推進等)のため、. 消費税増収分を活用した新たな ... 元気な時
    からの切れ目ない介護予防の継続 ... 受入病院が実施責任者を選任.

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年7月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160701.pdf

    2016年8月6日 ... に2025年の必要病床数の推計結果が公. 表された。135万床の許可病床に対し ...
    いへ、「連携による切れ目のない効率. 的なサービス」への誘導と、中医協 ... 員
    総会の決議による役員の選任等に関. して法整備したものである。

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