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ホーム全日病ニュース(2021年)第980回/2021年2月15日号都道府県に新型コロナ交付金の積極的な活用求める

都道府県に新型コロナ交付金の積極的な活用求める

都道府県に新型コロナ交付金の積極的な活用求める

【厚労省・部局長会議】迫井医政局長が医療機関・医療従事者への支援策を説明

 厚生労働省は1月26日、2020年度全国厚生労働関係部局長会議を説明する動画をYouTubeに掲載した。医政局の迫井正深局長が、新型コロナの感染拡大を踏まえた医療機関の支援策を説明した。都道府県に対しては、「新型コロナに最前線で立ち向かっている医療機関、医療従事者を支援し、地域の医療提供体制を維持・確保するため、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金などを積極的に活用してほしい」と述べた。
 迫井医政局長は、新型コロナの感染拡大を踏まえた医療機関の支援策をはじめ、2月2日に閣議決定した医療法等改正法案に盛り込んだ内容とあわせ、◇医療計画・地域医療構想◇医師偏在・医療人材の確保◇医師・医療従事者の働き方改革の推進◇オンライン診療などの状況を説明した。
 新型コロナ対応における医政局の役割は、地域の医療提供体制を確保するため、医療機関や医療従事者を支援することが中心になる。医療機関の支援では、第一次、第二次の補正予算と予備費で、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金などにより、約3兆円を措置している。
 これに加え、第三次補正予算案では交付金を増額したほか、国の直接執行による診療・検査医療機関などの医療機関等への感染拡大防止の補助や、重点医療機関に医師・看護師等を派遣する場合の派遣元医療機関に対する補助の倍増などを実施している。
 看護職員の確保では、各都道府県看護協会が看護職員の応援派遣が可能な医療機関の把握を進めるとともに、有事の際に、都道府県が県外からの応援派遣を受け入れる場合、都道府県看護協会を通じ、日本看護協会に要請する仕組みを構築している。「都道府県と都道府県看護協会には、事前に応援派遣の協定・連携をするようお願いしている」と迫井局長は述べた。
 第三波ともいわれる12月に入ってからの感染拡大への対応では、12月25日、国の直接執行による予備費の活用により、新型コロナ患者の受入病床を割り当てられた医療機関に対し、対応に当たる医療従事者を支援し、受入体制を強化するための補助を行うことになった。1月7日には新型コロナ患者のための病床を新たに割り当てられた場合の加算を創設している。
 この事業では、医療機関が国へ補助申請を行うに当たり、都道府県が病床の逼迫を申し出る必要がある。このため、迫井局長は、「病床確保計画の最終フェーズとなった都道府県または病床が逼迫し受入体制を強化する必要があると判断した都道府県は、速やかな申出をお願いしたい」と強調した。

地域医療構想は着実な取組みを確認
 医療計画については、新型コロナを踏まえた今後の医療提供体制が、「医療計画の見直し等に関する検討会」で議論され、昨年12月15日に考え方がまとまった。その結果、医療計画の記載事項に「新興感染症等の感染拡大時における医療」を追加することになった。
 地域医療構想については、病床の必要量の推計・考え方など基本的な枠組みは維持しつつ、着実に取組みを進めていくことを確認した。地域医療構想の実現に向けた今後の工程では、「新型コロナ対応の状況に配慮しつつ、都道府県などと協議し、この冬の感染状況をみながら、改めて具体的な工程の設定を検討する」としている。
 一方、2020年度に創設した「病床機能再編支援制度」は、消費税増収分を活用した財政支援制度である「地域医療介護総合確保基金」の新たな事業として位置づけ、全額国庫負担とする旨の法案を通常国会に提出する。法案が成立した場合でも、2020年度と同様の支援内容と条件になる。
 また、地域医療構想の実現に向け、医療機能の分化・連携を推進していくため、国による助言や集中的な支援を行う「重点支援区域」の選定については、現在11道県14区域が選定されている。申請は随時募集しており、「引き続き申請の検討をお願いしたい」と迫井局長は要請した。
 税制改正では、厚生労働大臣が認定した共同再編計画に基づく、再編統合のために取得した資産について、登録免許税の税率を軽減することになった。
 外来機能の明確化・連携、かかりつけ医機能の強化等については、「医療計画の見直し等に関する検討会」で昨年12月11日に報告書がまとまった。
 報告書では、外来医療の明確化に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため、①医療機関から都道府県に、外来医療の実施状況を報告(外来機能報告)②外来機能報告を踏まえ、地域の協議の場において、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行うとしている。
 具体的には、協議促進や患者のわかりやすさの観点から、「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関(紹介患者への外来を基本とする医療機関)を明確化する考えだ。「医療資源を重点的に活用する外来」は、医療機関が外来機能報告で報告し、国の示す基準を参考にして、地域の協議の場で確認することにより決定される仕組みとしている。

特例水準適用の病院の把握求める
 医師偏在対策については、各都道府県が2019年度に策定した医師確保計画・外来医療計画により、地域の実情に応じた取組みを進めている。2021年度予算では、地域医療介護総合確保基金の医療従事者確保の予算の区分で、対前年度同額を計上している。
 2020年度から、医師少数区域等で診療や保健指導、他の医療機関との連携などに一定期間従事した者を、厚生労働大臣が評価し、認定する制度が始まった。認定医師が勤務する医療機関に対しては、研修受講料や旅費などを補助することとしているため、迫井局長は周知を求め、医師少数区域等における認定医師の勤務の促進に期待を示した。
 医師養成課程を通じた医師確保対策については、2022年度以降の医学部定員は大学医学部・受験生へ配慮する観点から、暫定的に2020・2021年度と同様の方法で設定するものの、2023年度以降の臨時定員については、2021年度春までをめどに検討を行うことになっている。
 また、医学部入学定員の恒久定員内に地域枠を設定することを2022年度から地域の実情に合わせて推進することとしており、都道府県が協議を進めることを迫井局長は求めた。
 医師・医療従事者の働き方改革については、都道府県に医師の働き方改革の周知や労務管理の支援とともに、医療機関単独での取組みでは困難な場合に、リーダーシップを発揮し、医療のかかり方を含めて、地域の医療提供体制のあり方や医療機関間の機能分化・連携のあり方を検討することを求めた。医師の時間外・休日労働の上限規制の水準(A水準/連携B水準/B水準/C水準)がある中で、医療機関がどの水準を適用するかの想定を立てて、効果的な支援・対策の実施につなげることも、迫井局長は要請した。
 オンライン診療については、安全性と信頼性をベースに、初診を含めて原則解禁する方向で検討が進められている。受診歴があることを原則とした上で、受診歴がなくても診療情報提供書などの情報が得られる場合は、初診からのオンライン診療を認める方向だ。現行の時限的・特例的な取り扱いを実施しながら、夏をめどに考え方の骨格をまとめ、秋に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を改訂する。

医療保険制度改革の方針を説明
 保険局については濵谷浩樹局長が、医療保険制度改革やデータヘルス改革を説明した。医療保険制度改革は、昨年12月に全世代型社会保障検討会議と社会保障審議会医療保険部会がまとめた改革の内容であるとしている。
 紹介状がない患者の大病院外来の初診・再診時の定額負担制度については、大病院と中小病院・診療所の外来における機能分化を推進するため、対象病院を拡大し、金額を引き上げ、その分を保険給付範囲から控除する方針が示された。
 現行の仕組みの対象は「特定機能病院及び一般病床200床以上の地域医療支援病院」だが、これに「200床以上の紹介患者への外来を基本とする医療機関」を追加する。「紹介患者への外来を基本とする医療機関」は、今後創設される外来機能報告の仕組みで明確化される予定である。
 濵谷局長は「初診では現在、2,800円程度保険給付があり、定額負担を5千円としているが、ここから2千円程度を控除して、これを定額負担に上乗せするようなイメージだ」と説明した。「かかりつけ医を受診して、紹介にもとづいて大病院を受診するのが本来の姿であり、紹介状なしの患者の定額負担は、あくまで、例外的、限定的な取扱いだ」と述べた。
 不妊治療の保険適用については、来年の夏以降、中医協で議論するとのスケジュールを示し、「2022年の年明けに決定し、2022年度から保険適用したい」と述べた。標準的ではない治療を念頭に、不妊治療に保険外併用の仕組みを活用していく考えも示した。

 

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