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ホーム全日病ニュース(2021年)第980回/2021年2月15日号災害発生リスクの高い地域の病院に優先的にBCP策定促す

災害発生リスクの高い地域の病院に優先的にBCP策定促す

災害発生リスクの高い地域の病院に優先的にBCP策定促す

【厚労省・救急災害医療あり方検討会】浸水被害を含めた災害対策マニュアルも策定

 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等のあり方に関する検討会」(遠藤久夫座長)は2月3日、医療機関がBCP(業務継続計画)を策定することを広めるための対応案を了承した。災害発生リスクの高い地域に所在する医療機関や周産期母子医療センター、救急救命センターに対し、優先的に策定を促す取組みを求める考えだ。
 近年の大規模災害や新型コロナウイルス感染症の発生など、医療機関によるBCP策定の重要性が増している。現在、災害医療拠点病院に義務が課されているが、病院全体では25%程度(2018年度)の策定率。厚労省は、2020年4月までに計20回の研修会を開催するなど策定率向上に取り組んでいる。
 今回、厚労省は将来的に全医療機関が策定することが望ましいとしつつ、災害時に果たす機能やリスクに鑑み、優先的に策定を促す医療機関を明示した。一つは、これまで非常用自家発電装置や給水設備を優先的に整備してきた医療機関で、周産期母子医療センターや救急救命センターが該当する。
 次に、災害発生リスクの高い地域に所在する医療機関をあげた。病院については、各自治体が作成するハザードマップで、地震・洪水・土砂災害などのリスクが高い地域にある施設を対象として、重点的に策定を促すとした。
 これに対し全日病常任理事の猪口正孝委員は、基本的な考えに賛意を示した上で、「東京23区など人口規模が大きい地域では、自治体からハザードマップが示されているとしても、災害リスクの高い病院がわかりにくい。各地域の災害リスクがもう少し明確になり、自治体がきちんと周知すれば、病院によるBCP策定も進めやすくなる」と述べた。
 また、BCP策定における今後の対応としては、◇都道府県を通じて定期的にBCPの策定状況を調査する◇「BCPの考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き」は基本的に、大規模災害の発生を想定した計画だが、近年の状況に鑑み、浸水被害を含めた新たな災害対策マニュアルを策定する◇BCP策定研修事業について、座学はオンライン形式またはeラーニングとする。集合研修もオンライン形式を検討する─ことを了承した。

EMISとG-MISの統合は困難
 EMIS(広域災害・救急医療情報システム)とG-MIS(新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム)の運用のあり方をめぐり、意見を交わした。
 新型コロナ感染症患者を受け入れている病院の委員からは、複数のシステムに医療機関や患者の情報を入力しなければならない状況にあり、負担の軽減を求める意見があがる一方で、EMIS とG-MISは目的や機能が異なるため、統一的な基盤整備が望ましいが、現状での統合は困難と主張する意見が出た。
 厚労省は、これらの意見を踏まえ、両システムで重複する入力項目を整理することや、1度のユーザー認証で複数のシステムの利用を可能にするなど、運用上の利便性を向上させることの検討を行う考えを示した。

救命救急センターの評価で配慮
 2020年の救命救急センターの充実段階評価については、多くの救命救急センターが新型コロナ患者を受け入れていることを踏まえ、配慮を行うことを了承した。
 新型コロナの影響が示唆される16項目を充実段階評価の「評価点」と「是正を要する項目」から除外する。
 「評価点」では、10項目中8項目で影響があるとされ、「年間に受け入れた重篤患者数」や「地域の関係機関との連携」などが除外される。「是正を要する項目」では、20項目中10項目で影響があるとされ、「専従医師数のうち、救急科専門医数」や「救急救命センター長の要件」などが除外される。
 あわせて、充実段階評価の段階的な引上げ(2020年実施分)は予定通り実施する。充実段階評価は2018年から、それまでのA・B・C評価に加え、新たにS評価ができ、4段階となっているため、質の向上のため、段階的な引上げが実施されている。
 16項目を除外して充実段階評価を試算すると、S評価の救急救命センターは2019年の76施設から92施設に増える。例外的な対応を行わず、2020年の実績が2019年と同一と仮定して評価区分の引上げを行った場合は、49施設まで減ることが示された。
 そのほか、日本医療法人協会会長の加納繁照委員が、新型コロナ感染症患者の受入れが民間病院で少ないとの指摘があることに対し、「救急搬送で新型コロナ関連は1割程度。残りの9割は一般医療での救急搬送だ。民間病院が一般医療の救急搬送を担うことで、医療崩壊を防ぐことができたと確信している。役割分担が重要であり、そのようなことがわかる資料を提供してほしい」と厚労省に求めた。

 

全日病ニュース2021年2月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200401.pdf

    2020年4月1日 ... 推進に関する検討会」(遠藤久夫座長). は3月11日、医師の働き方改革で ... (
    BCP)を連日スタッフと協議してお. ります。 医療機関においては、 ... 向けた
    議論を行うことには賛意を示し. つつも、全世代型社会保障検討 ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年12月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/181201.pdf

    2018年12月1日 ... 関する検討会」(岩村正彦座長)は11月. 9日、医師の ... 繰りが立ち行か
    なくなると事業継続が. 困難になる。 ... 会」(遠藤久夫座長)は11月16日、地域.
    医療支援病院 ... これに対し複数の委員が賛意を示した。 基本単位数へ ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年11月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/201115.pdf

    2020年11月15日 ... る検討会」(山本隆一座長)が11月2日、. オンラインで開催された ... 関する
    検討会(遠藤久夫座長)が10月. 30日に ... その他の委員も概ね賛意を示した。 厚
    労省は、 ... 作成する BCP事業継続計画)について、大規模地震.

  • [4] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年12月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/191215.pdf

    2019年12月15日 ... 診療側からは賛意が示. されたが、支払側からは慎重な対応を ... 関する検討会(
    遠藤久夫座長)は11月. 28日、都道府県の第7次医療計画の中 ... スクヘッジ(
    BCP)の問題について説. 明しました。単に明文化されているの.

  • [5] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190401.pdf

    2019年4月1日 ... する検討会(岩村正彦座長)の議論が. 大詰めを迎えて ... 件の下で、賛意を示し
    ている。 当初から、960時間を ... 災害拠点病院に手をあげていて、BCP. を
    つくって災害 ... 会の医師専門研修部会(遠藤久夫部会. 長)は3月22 ...

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年6月1日号)

    https://ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190601.pdf

    2019年6月1日 ... 研修部会(遠藤久夫部会長)は5月14. 日、日本専門医機構が ... 検討会(遠藤
    久夫. 座長)は5月23日、医師の働き方改革 ... 災害医療関係では、BCP事業
    継続. 計画)の策定状況 ... と賛意が上がったという。 たたき台では、 ...

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