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ホーム全日病ニュース(2021年)第981回/2021年3月1日号医療法等改正法案成立後の制度化に向け様々な意見

医療法等改正法案成立後の制度化に向け様々な意見

医療法等改正法案成立後の制度化に向け様々な意見

【社保審・医療部会】医師養成課程の改正に伴い国家試験や医学教育の見直しも必要

 厚生労働省は2月8日の社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)に、医師の働き方改革や医師養成課程の見直し、新型コロナを踏まえた医療計画の見直し、地域医療構想を推進するための支援、外来機能報告制度の創設などを盛り込んだ医療法等改正法案が閣議決定され、国会に提出されたことを報告した。
 委員からは、法案成立後も制度の具体化に際し、様々な検討課題があることから、地域の医療提供体制、医師や医療従事者のキャリア形成に大きな影響を与えると考えられる改革の実現に向け、様々な意見や要望、懸念が示された。
 特に、議論では、医師養成課程の見直しにより、共用試験(臨床実習前OSCE(Objective Structured ClinicalExamination)、CBT(ComputerBased Testing)に合格した医学生が臨床実習として医療を行うことができる旨を明確化することについて、歓迎する意見とあわせ、医師の質が下がりかねないことや医療事故が発生した場合への懸念が示された。
 全国市長会の久喜邦康委員(埼玉県秩父市長)は、医師の質が下がりかねないことへの不安を表明。診療参加型の実習で、student doctorが医療事故を起こしてしまった場合などの対応を質問した。
 厚労省は、医療事故が生じた場合の対応は個別事案により異なることや、責任の所在は医療機関の診療体制によるとしつつ、今後詳細な検討が必要になるとした。ささえあい医療人権センターCOML理事長の山口育子委員は、医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)の理事の立場で、医学部卒業時に一定の臨床能力を備えていることが、国際的な医学部教育の流れであることなどを説明した。
 全日病副会長の神野正博委員は、「今回の改革は、医師国家試験のあり方を真剣に検討することが大前提になる」と指摘。医学部5・6年次の診療参加型臨床実習を重視し、医学部から臨床研修への流れをシームレスにするためにも、医学知識習得に偏っていると指摘される医師国家試験の見直しが不可欠と強調した。国立病院機構理事長の楠岡英雄委員は、「student doctorが制度化されれば、臨床研修の見直しも課題になる」と述べた。

地域医療構想を推進する新たな支援
 地域医療構想については、新型コロナの感染拡大を踏まえ、全国一律で工程を決めて推進することは困難としつつ、2025年に向け着実に病院の再編統合などに取り組むとの姿勢は、厚労省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」などで確認している。
 厚労省は、取組みを進めることのできる地域や病院に対して、重点的な支援を実施する構えだ。
 今回の法案に関わる支援としては二つある。一つは、2020年度に創設した「病床機能再編支援事業」である。2020年度は一般財源で195億円を措置したが、今後は同水準の財源で、消費税財源を活用した地域医療介護総合確保基金における全額国負担の事業として、位置づけ、そのための改正を行う。
 「病床機能再編支援事業」は、地域医療構想調整会議等の合意を踏まえ、病床機能を再編し、自主的な病床削減や病院統合を行う医療機関に対し、財政支援を実施するもの。2021年度も195億円(全額国庫負担)を確保したが、右下表をみると、2020年度の内示額は合計60.6億円にとどまっている。新型コロナの影響と考えられる。
 もう一つは、病院の再編に関する税制優遇制度だ。厚生労働大臣が認定する複数医療機関の再編・統合の計画に基づき取得した不動産に関し、登録免許税を優遇する。再編計画については、地域医療構想調整会議において、地域医療構想と整合性がとれているものであるかの協議を事前に実施する必要があるとしている。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、「特に大都市においては、民間の中小病院が様々な役割を果たしている。病院の再編が公立・公的の大病院建設になって、民間病院を圧迫することのないよう対応してほしい」と述べた。
 なお、このような内容を含む「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」の概要をみると、◇長時間労働の医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置の整備等(2024年4月1日に向け段階的に施行)◇医療関係職種の業務範囲の見直し(2021年10月1日施行)◇医師養成課程の見直し(2025年4月1日、2023年4月1日施行)◇新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置付け(2024年4月1日施行)◇地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組の支援(2021年4月1日施行)◇外来医療の機能の明確化・連携(2022年4月1日施行)◇持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長(公布日施行)─が盛り込まれている。

 

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