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ホーム全日病ニュース(2021年)第981回/2021年3月1日号給付費分科会が2021年度介護報酬改定案を了承し答申

給付費分科会が2021年度介護報酬改定案を了承し答申

給付費分科会が2021年度介護報酬改定案を了承し答申

すべての介護サービスに9月まで0.1%を上乗せ

 社会保障審議会・介護給付費分科会(田中滋分科会長)は1月18日、田村憲久厚生労働大臣から諮問があった2021年度介護報酬改定の告示案を了承し、答申した。新型コロナウイルス感染症に対応する特例的な評価として、全介護サービスの基本報酬に4月から9月末まで0.1%を上乗せするとともに、データベース「科学的介護情報システム(LIFE)」の構築を進め、自立支援・重度化防止に向けた取組みを進める。パブリックコメントを経て、3月に公布される予定。運営基準等の改正省令は1月13日に答申され、同25日に公布された。いずれも施行は4月から。

基本報酬に0.1%を上乗せ
 昨年末の田村厚労大臣と麻生太郎財務大臣の折衝により、全体の改定率はプラス0.7%とし、このうち新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価として0.05%(2021年9月末まで)を当てることが決まった。
 これを踏まえ、原則として全サービスの基本報酬を引き上げるとともに、4月から9月末までの間、全サービスの基本報酬に0.1%を上乗せして評価することになった。
 厚労省は、「0.7%はすべて基本報酬に当てる」と説明している。また、基本報酬の単位数の引き上げについては、「経営状況や新型コロナウイルス感染症の影響により濃淡をつけている」とした。新たな加算の財源は、既存の加算の適正化・廃止分を当てるなどして財源をねん出した。
 例外的に、2023年度末に廃止が決まっている介護療養型医療施設など、一部のサービスで基本報酬が引き下げとなっている。
 9月末までの0.1%の上乗せ評価で増える単位数分は区分支給限度基準額の算定にも含まれる。また利用者負担も増加する。

感染症や災害への対応力を強化
 今回の改定では、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、感染症や災害への対策強化が柱の一つとされている。
 すべての介護サービス事業者に対し3年間の経過措置を設定しつつ、感染症対策の強化を図るための感染症発生やまん延に関する取組みを求めるほか、業務継続の強化を図るためのBCP(業務継続計画)の策定を義務づける。
 新型コロナに対応した通所介護の報酬の特例的な対応は3月末で廃止するが、感染症などで利用者が減少した場合、足下の利用者数に応じて柔軟に事業所規模別の各区分の報酬単価による算定を可能とする仕組みを導入する。

科学的介護推進体制加算を導入
 利用者の自立支援・重度化防止と尊厳保持の観点から見直しを行った。リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組みの一体的な運用を目指す。寝たきり防止や褥瘡の管理、排せつの自立支援を強化するとともに、看取りの対応を充実させている。
 ケアの質を高めるために、CHASE・VISIT を一体的に運用し、データの収集・活用を進めていく。一体的な運用に当たり名称を「科学的介護情報システム」(Long-term care Informationsystem For Evidence:LIFE)に統一する。
 取組みを進めるために「科学的介護推進体制加算」を創設する。施設・事業所の全入所者・利用者に係るデータをLIFE に提出するとともに、状態の時系列変化などのフィードバックを受け、事業所単位でPDCA サイクルにより、ケアの質の向上を図ることを新たに評価する。
 対象は、施設系(介護療養型医療施設を除く)・通所系・居住系・多機能系サービス。提出するデータはADL値や栄養状態、口腔機能、認知症の状況等。このデータの提出で、利用者1人につき月40単位を算定できる(施設系サービスでは加算(Ⅰ)になる)。
 施設系では、さらに疾病・服薬情報等のデータを提出する場合に算定できる加算( Ⅱ ) を設定する。老健施設や介護医療院は、利用者1人につき月60単位を算定できる。

長期療養生活移行加算を創設
 介護医療院では、長期入院患者の受入れを推進するため、長期療養生活移行加算(60単位/日)を新設する。入所した日から90日間に限り算定が可能だ。
 算定要件では、◇入所者が療養病床に1年間以上入院していた患者である◇入所に当たり入所者及び家族等に生活施設としての取組みについて説明する◇入所者及び家族等と地域住民等との交流が可能となるよう、地域の行事や活動等に積極的に関与している─ことを求める。
 療養病床の一部を介護医療院に転換して、療養病床の患者を受け入れる場合にも算定を可能とする。
 移行定着支援加算は、2020年度末に廃止する。
 介護医療院の薬剤管理指導(350単位/回、週1回、月4回まで算定可能)において、LIFE に入所者の服薬情報等を提出し、そのフィードバックを処方に活用する場合の加算を新たに設ける。同月の最初の算定時に、20単位を加算できる。

介護療養型の基本報酬引き下げ
 介護療養型医療施設(老人性認知症疾患療養病棟を除く)について、令和2年度診療報酬改定の医療療養病床の評価の見直しを踏まえ、基本報酬を引き下げる。
 介護療養型医療施設から介護医療院等への移行計画の提出を求め、計画を提出していない場合の「移行計画未提出減算」(▲10%/日)を導入する。厚労省が示す様式を用いて、2024年4月までの移行計画について半年ごとに都道府県への提出を求める。最初の提出期限は今年9月30日。以後、半年後を次の提出期限とする(2023年9月30日まで)。これを満たさない場合は、基本報酬から1日当たり10%の減算とする。減算は、次の計画の提出期限まで。

 

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