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ホーム全日病ニュース(2021年)第983回/2021年4月1日号医師の働き方改革など医療法等改正案が国会で審議入り

医師の働き方改革など医療法等改正案が国会で審議入り

医師の働き方改革など医療法等改正案が国会で審議入り

【医療法等改正案】新興感染症等に対応し医療計画も見直し

 政府の「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」が3月18日、衆議院本会議で審議入りした。厚生労働委員会の審議は24日から始まった。田村憲久厚生労働大臣は、本会場での趣旨説明において、質が高く適切な医療を効率的に提供するために、今回の改正の実施が必要と強調した。野党からは、新型コロナなど新興感染症等への備えを含め、病床削減や現状の医療提供体制の見直しを進めることへの懸念が示された。
 田村厚労相は18日の本会議で、「今後とも人口減少や人口構造・医療需要の変化が見込まれるとともに、新興感染症等への備えと対応が一層求められる中で、医師の働き方改革と地域医療の確保の両立、医療専門職が自らの能力を活かし、より能動的に業務に取り組むことの推進、新興感染症等に対応した地域医療計画の見直し、地域医療構想の実現などを通じて良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確立するため、この改正法案を提出した」と法案の趣旨を説明した。
 改正法案の主な内容は以下の通りとなっている。◇長時間労働の医師の労働時間短縮および健康確保のための措置の整備等◇医療関係職種の業務範囲の見直し◇医師養成課程の見直し◇新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置づけ◇地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組みの支援◇外来医療の機能の明確化・連携◇その他として、持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長─。
 田村厚労相の趣旨説明に対し、立憲民主党の山川百合子議員、公明党の高木美智代議員、日本共産党の宮本徹議員が質問した。なお、立憲民主党・共産党、国民民主党、社民党は議員立法で、医療従事者に再び慰労金を支給するとともに、慰労金の対象を子ども子育て支援施設にも広げる「新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等を慰労するための給付金の支給に関する法律案」を提出しており、同法案も医療法等改正案とあわせて審議されることになった。
 立憲の山川議員は、「我が国の国民皆保険を基盤とする医療提供体制の柔軟さがコロナ禍においても、緩衝材として働き、各国と比べて被害を抑制しているのではないか。この制度を見直すよりも、今は医療従事者を慰労金で支援し、病床削減やリストラは、コロナ禍が収まってから、じっくりと取り組めばよいのではないか」と質問した。
 これに対し田村厚労相は、「今回の法案は医療従事者のリストラを前提にしたものではない」と答弁した。その上で、病床機能再編支援事業について、「新型コロナ対応の医療では、重症、中等症、軽症、回復した患者の各段階で、各病院が機能に応じて役割を果たしており、医療機能の分化・連携が重要であることが改めて認識されている。この制度は医療機能の分化・連携を進め、必要なダウンサイジングや統合を支援するために措置した」と説明した。
 公明党の高木議員は、医師の働き方改革に関して、「公明党は、新型コロナも踏まえ、法案作成過程で、医師労働時間短縮計画の実施を医療機関が一律に開始するのではなく、できるところから始められるようにするべきと主張した」と述べ、厚労省の社会保障審議会・医療部会での了承後の与党審査での法案変更の説明を求めた。
 田村厚労相は、「公明党の指摘も踏まえ、医療機関の状況に応じて時短計画に取り組めるようにした。具体的には、2024年4月までの間、時短計画と計画に基づく取組みについて、一律一斉に義務づけるのではなく、現在、長時間労働の医師が勤務している医療機関に対しては、努力義務としつつ、特例水準の指定を希望する医療機関については、第三者評価を受ける前に、時短計画の作成を求める案としている」と回答した。
 共産党の宮本議員は、「国は病床削減を進める方針だが、これ以上、医療機関の余力を削いで、新型コロナに対応できるのか。病床削減の方針を改め、感染症に強い日本をどう作るのかを議論すべきだ。新型コロナの病床確保が最大の課題であり、今やるべきことは、医療機関への支援であり、医療従事者への二度目の慰労金だ」と訴えた。
 田村厚労相は、新型コロナの病床確保の基本姿勢として、「今回の感染拡大で認識された課題を整理し、次の感染拡大に備え、病床確保を進める。病床だけでなく、自宅・宿泊療養を含め療養場所を確保するなど患者の症状に応じて、療養先を決定し、退院につなげるための調整を円滑に進める必要がある」と述べた。
 現状の支援策としては、「新型コロナの患者を受け入れた病院に対しては、強力な財政支援を用意するとともに、医療人材確保の観点では、医療スタッフの派遣や自衛隊の災害派遣も用いて、通常の圏域を超えた支援で対応している。そのために、医療従事者の派遣のための支援額を倍増したほか、人工呼吸器やECMOを使える人材の研修を実施している。やれる策を総動員して、人材確保を進めている」と理解を求めた。

 

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