全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2021年)第984回/2021年4月15日号医療機関により不妊治療の実施率や価格にばらつき

医療機関により不妊治療の実施率や価格にばらつき

医療機関により不妊治療の実施率や価格にばらつき

【厚労省・研究事業】「体外受精」の平均費用は約50万円

 厚生労働省は3月29日、不妊治療の実態に関する調査研究の結果を公表した。菅内閣は、2022年度診療報酬改定で不妊治療の保険適用の範囲を拡大する方針を示しており、その議論の材料となる。体外受精を実施する600強の医療機関を対象とした調査。治療や検査の項目は多岐にわたっており、医療機関により各治療の実施率や価格に差があることが明らかとなった。
 調査は、厚労省の子ども・子育て支援推進調査研究事業で実施した医療機関を対象にした初めてのもの。過去に自治体を対象にした調査があるが、途中で治療を断念した事例も含めた金額となっているのに対し、今回調査の結果は一連の治療を包括した費用をきいている。また、不妊治療当事者と一般を対象にしたWEB 調査も行っている。
 医療機関が実施する女性不妊治療で実施率が100%であったのは、「IVFET」(体外で受精させ、受精卵を子宮内に戻す方法)。次いで、「人工授精(AIH)」(99%)、「融解胚子宮内移植」(98%)、「タイミング指導法」(97%)が高い。逆に、実施率が低いのは、夫以外の精子を用いる「人工授精(AID)」(2%)や「IVM(未熟卵体外成熟)」(17%)、FT(卵管鏡下卵管形成術)(18%)となっている。
 一方、男性不妊治療で実施率が高いのは、「漢方製剤」(75%)、「PDE5 阻害薬」(69%)、「内分泌療法」(65%)、「顕微鏡下低位結紮術」(60%)、「Simple-TESE」(60%)の順となっている。なお、TESE とは、無精子症の男性患者に対し精巣内から直接精子を採取してくる方法。
 女性不妊の各治療法の平均費用はそれぞれ、「人工授精」で約3万円、「体外受精」で約50万円、「simple-TESE」で約17万円、「micro-TESE」で約30万円だった。男性不妊を含めいずれの治療法でも、施設ごとの請求費用に一定程度幅がみられた。地域による幅が大きいことについて、厚労省は「テナント料や人件費の違いなど複合的な要因」と説明する。
 2021年度予算で拡充を図った特例不妊治療費助成の受給件数はステージによりばらつきがあり、「凍結胚移植」に該当するステージの受給件数が最も多かった。初回受給の年齢は39歳が最多となっている。
 調査結果は、夏ごろに日本生殖医学会など学会がまとめる不妊治療に係るガイドラインの策定で活用する。中医協はガイドラインの公表後に、2022年度改定での不妊治療の保険適用範囲の拡大に向けて議論を開始する。

 

全日病ニュース2021年4月15日号 HTML版