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ホーム全日病ニュース(2021年)第986回/2021年5月15日号議論の進め方と2021年度調査の調査票を了承

議論の進め方と2021年度調査の調査票を了承

議論の進め方と2021年度調査の調査票を了承

【中医協・入院医療等分科会】新型コロナ関連の質問の一部は調整

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は4月28日、2022年度診療報酬改定に向けた議論のスケジュールを確認するとともに、入院医療等の2021年度調査の調査票を大筋で了承した。新型コロナの影響を把握する質問項目の一部で意見が分かれたが、調整した上で、基本問題小委員会に報告する。2021年度調査項目の柱は4つ。うち3つは「重症度、医療・看護必要度」の見直しの影響など2020年度調査と同様だが、2021年度調査では新たに「特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響」を調査する。
 同分科会は、診療報酬改定に向けて入院医療等に関する項目の調査を実施し、調査結果をまとめ、論点を整理した上で、基本問題小委員会や総会に報告する役割を担う。論点に対する結論は総会で決めるが、分科会でも議論が行われ、一定の方向性を示す報告書をまとめることになる。入院医療等に関する項目以外の診療報酬改定の影響の調査は、診療報酬改定結果検証部会で実施している。
 2022年度改定に向けた分科会の今後の予定では、5月以降に2020年度調査の速報(その2)の報告を受け、個別事項に関する議論を開始する。速報の調査結果を基に「一般病棟入院基本料」、「特定入院料(地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料等)」、「療養病棟入院基本料」、「有床診療所入院基本料」をテーマとする。
 2021年度調査についても、調査結果(速報)の報告を受けた上で、議論をさらに継続する。
 なお、より技術的な検討課題の議論については、2つの作業グループを設置し、専門的な視点からの調査・分析を行うことになっている。「診療情報・指標等作業グループ」と「DPC/PDPS等作業グループ」があり、並行して検討を進める。
 「DPC/PDPS等作業グループ」は、DPC制度の課題を議論することになるが、2020年度改定の段階で、2022年度改定に向けた方向性が示されており、それに沿って、特別調査を実施する。具体的には、DPC対象病院としてふさわしくないと考えられる病院を特定し、DPC制度からの退出を含め、対応が検討されることになる。書面調査や個別ヒアリングを通じて、それらの病院で提供されている診療の状況などを評価する。
 DPC対象病院としてふさわしくないと考えられる病院としては、◇医療資源投入量が少ない病院であって、急性心筋梗塞、脳梗塞、狭心症、心不全症例のうち、「手術なし」かつ「手術・処置等なし」の症例が占める割合が高い病院◇在院日数の短い病院であって、自院他病棟への転棟割合が高い病院─が分析の対象となる。
 また、医療資源投入量の多い病院や在院日数が長い病院についても、制度の趣旨に鑑み、医療の実態の把握を行うとしている。

特定集中治療室等の調査が加わる
 同日は、2021年度調査項目の調査票を了承した。調査項目は、①一般病棟入院基本料等における「重症度、医療・看護必要度」の施設基準等の見直しの影響(その2)②特定集中治療室管理料等の集中治療を行う入院料の見直しの影響③地域包括ケア病棟入院料及び回復期リハビリテーション病棟入院料の実績要件等の見直しの影響(その2)④療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響(その2)。①③④については、2020年度調査でも調査しているが、②は新しい調査項目だ。
 具体的には、特定集中治療室管理料、救命救急入院料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料等を算定している医療機関を対象に、「重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の状況」、「当該管理料等における患者の状態、医療提供内容、入退室状況、生理学的スコア等」を調査する。2020年度改定では、「特定集中治療室管理料1・2における専門の研修を受けた看護師の配置要件の見直し」や「特定集中治療室管理料3・4における生理学的スコアの測定に係る要件の見直し」があったことも踏まえた。
 特定集中治療室等の調査では、新たに治療室調査票を設け、病棟調査票と同様に、新型コロナの影響も把握する。新型コロナの重症患者は特定集中治療室等に入院する場合が多いため、新型コロナ患者用の確保病床数を含め、対応状況に関する質問項目を設定した。

新型コロナの影響どう把握するか
 調査票については、分科会で質疑応答があった。全日病常任理事の津留英智委員は、「新型コロナによる院内感染の発生の有無を質問するなど、クラスターが発生した病院を調べるのはよいことだが、入院時の検査では陰性で1週間後は陽性になるなど、いろいろなパターンがあり、院内感染であるかの判断は難しい。院内感染の有無は医療機関が判断すればよいのか」と質問。厚生労働省は、「それでよい」と答えた。津留委員は、クラスターの判断についても、保健所などによる一定の基準があるため、注意を促した。
 日本慢性期医療協会常任理事の井川誠一郎委員は、療養病棟入院基本料の質問項目で、新型コロナから回復した後、引続き入院管理が必要な患者の受入れの有無をきいていることについて、「病院によって1~ 30名ぐらいの人数の幅があるので、人数など『有無』以外の質問項目も設けるべきではないか」と質問した。
 これに対し、全日病会長の猪口雄二委員は、「ポストコロナの患者を地域の病院がどのように受け入れているかをみることは非常に役立つデータになる。ただ、人数を把握するとしても、どの時点での受入れ患者数であるかなど、正確に把握しようとすれば、質問項目が煩雑になってしまう。我々としては、新型コロナの後方支援病床の実態把握は必要であるので、むしろ、単独の調査として実施してほしい」と述べ、同調査の質問項目は案のとおりとし、別途調査を実施することを要望した。
 他の委員からも、調査票が煩雑になり、回収率が低下することを避けるため、猪口委員に賛意を示す意見が相次いだが、結論については、後日改めて調整することになった。なお、厚労省は、「受入れ状況の全体の動向については、(新型コロナ対応の特例である)二類感染症患者入院診療加算の3倍の点数の算定状況をレセプトデータを集計することにより、把握できる」ことを補足した。
 また、津留委員は、「今回の調査が例年と異なるのは、まさに新型コロナへの対応状況だ。2020年度調査結果の速報では、『コロナ対応ありの病院は、コロナ対応なしの病院に比べて、基準を下回る医療機関が多い』などの一定の相関性は示された。新型コロナの医療への影響を切り口に分析するとしたら、その為の作業グループが必要となるくらいの仕事量になり得ると思う。詳細な分析は難しいと思うが、コロナ禍での医療提供体制の議論ができる調査結果が示されることが望ましい」と述べた。
 これに対し厚労省は、「新型コロナの影響をどう分析するかについては、そのために単独の検討の場を設けるのではなく、2つの作業グループがそれぞれコロナについて横断的に検討することになっている。十分な検討を行うには、時間的・資源的な制約があり、感染拡大の状況も日々変化している状況にある中であるが、できる限りのことはやっていきたい」と述べるにとどめた。
 同調査では、調査票ごとに対象施設数を設定している。具体的には、一般病棟入院基本料等の「重症度、医療・看護必要度」等を調査項目とするA票は約2,300施設、地域包括ケア病棟入院料等は約1,500施設、療養病棟入院基本料は約15,000施設、障害者施設等入院基本料等は約900施設となっている。

 

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