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ホーム全日病ニュース(2021年)第987回/2021年6月1日号病院機能評価受審支援を始めるに当たって

病院機能評価受審支援を始めるに当たって

病院機能評価受審支援を始めるに当たって

2021年度病院機能評価受審支援事業②

中嶋 照夫(病院機能評価委員会 特別委員)
美原  盤(全日本病院協会 副会長)
木村由起子(病院機能評価委員会 特別委員)

 昨年に引き続き、病院機能評価受審支援活動が開始された。今年度は、2年越しの応募が実った福山市の福山城西病院に白羽の矢が立った。この病院は、腎疾患治療を主とした60床のケアミックス型病院である。なお、昨年度支援対象の樫村病院(高松市)は、4月初旬に審査を終えたことも併せて報告する。
 この活動は選出された会員病院の受審準備を、機能評価のサーベイヤーが1年を通して全力で支援することによって、当該病院のみならず他の会員病院に機能評価受審の機運を醸成し、結果としてより多くの会員病院の質的向上を図ることが目的である。そこで、当該病院から基本資料が提示されたことを嚆矢として、各領域の委員が以下の助言を送った。
 取り組み内容を俯瞰した時、昨年度も同様だったが、自らC評価としている項目が多かった。初回受審であり、厳しい自己規制が感じられたが、求められるハードルを必要以上に高く捉えているようにも推測された。このことが、中小病院の受審を妨げる大きな要因だろうと思われる。機能評価は個々の病院に見合った機能を求めており、中小病院に大病院と同じ内容を求めているのではない。
 一方、医療の質におけるストラクチャー、プロセスを意識した展開は重要である。C評価の理由として、マニュアルがない、手順が明確でない等が上げられたが、マニュアル(ストラクチャー)は業務の標準化には必須であり、これに沿って遂行(プロセス)されることが期待されている。それ故、業務の流れを検討することから始めて、マニュアルとして明文化すべきである。ただし、現在の審査手法ではマニュアルなどの書類審査時間は短くなっている。これはそれ等の整備を軽視したのではなく、更新病院ではマニュアルは既に整備されていることが前提であり、プロセス審査に十分な時間を配分する意図である。だからこそ新規受審病院は、マニュアル類の整備にしっかりと取り組んで欲しい。
 看護領域では、以下を準備活動の課題として述べたい。第1に、医療安全体制構築の取り組みとして、委員会機能や医療安全管理者の責務を明確にし、医療安全報告書は医師を含め積極的に起票し、業務改善活動へ迅速につなげることが求められる。第2に、倫理的課題につき病院方針を明確にし、各職域で倫理的課題の認識を深めながら患者の意向に沿ってカンファレンスで解決する仕組みが必要である。特にACPに関して、透析中止問題等の方針を明確にしておくべきである。抑制の際には、患者の人権に配慮して、漫然と継続しない取り組みを模索し、見直すべきである。さらに、感染対策では、標準予防策の徹底のためPPEの適切使用や医療廃棄物の適法な処理が求められる。また、滅菌業務では滅菌の質保証の観点から、ガイドラインに準拠した業務実施が重要である。
 事務管理の観点では、機能評価受審体制を構築し、準備活動を開始することも重要だが、それと並行して理念・基本方針や行動目標など事業体としての進むべき基礎的な方向性を見つめ直し、再構築して、組織全体として理解し、行動することが最も重要なことと認識する。加えて、医療を構成する各種の要件に適切に合致しているかを足元から見直すことも重要である。機能評価受審準備が行われようとしている今こそ、病院組織を挙げて脚下を見つめ直すことが肝要であろう。
 病院長からは、「病院機能評価への挑戦は、スタッフの向上心を燃え上がらせ、もう一段熱量を上げていくはずです。そして認定を受けることができた暁には、今まで以上に喜びを感じ、誇りを持って私たちの信じる医療を貫くことができると確信しています」と、受審準備に向けた強い決意が述べられた。
 今後、各担当アドバイサーが貴院を訪れて領域ごとの支援を予定しているので、職員が一丸となって受審に向けて準備されることを切に願っている。

 

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