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ホーム全日病ニュース(2021年)第987回/2021年6月1日号費用対効果評価の仕組みでユルトミリスの価格を引下げ

費用対効果評価の仕組みでユルトミリスの価格を引下げ

費用対効果評価の仕組みでユルトミリスの価格を引下げ

【中医協総会】対象医薬品、再生医療等製品の選定も相次ぐ

 中医協総会(小塩隆士会長)は5月12日、発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬であるユルトミリス点滴静注(アレクシオンファーマ)について、費用対効果評価の仕組みによる価格調整を了承した。300㎎ 30㎖の1瓶73万894円が69万9,570円に下がる(▲4.3%)。医療機関の在庫価値への影響を踏まえ、適用日は8月1日からとした。
 ユルトミリス点滴静注は2019年8月28日に、市場規模が100億円以上であることから、費用対効果評価の対象品目として指定された。対象品目は2021年4月14日時点で、全部で16品目が指定されている。4月21日の中医協では、本格運用後初の適用となる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬のテリルジーや白血病の治療薬のキムリアの価格引下げが了承されている。費用対効果評価の仕組みが本格的に運用され、次々と対象となる医薬品や再生医療等製品、医療機器が選定される状況となっている。
 その後の新薬の保険収載においては、4月21日の総会で1品目、5月12日の総会で3品目が新たに対象となった。再生医療等製品では、4月12日の総会でイエスカルタ点滴静注、5月12日の総会でブレヤンジ静注が、ともにキムリアを比較対照薬とする費用対効果評価による価格調整を行った上で、保険収載されることになった。
 ユルトミリス点滴静注については、費用対効果評価の対象として指定後、企業や厚生労働省・専門組織による分析が行われ、今回、価格調整案が決まった。比較対象技術はソリリス点滴静注。QALY(質調整生存年)を効果とし、費用を治療費とするICER(増分費用対効果)による計算で、「比較対照技術に対し効果が同等であり、かつ費用が増加」との判断になった。
 費用対効果評価の仕組みでは、ICERが一定額以上の場合、価格を引き下げるべきとの判断になる。しかし、発作性夜間ヘモグロビン尿症は治療方法が十分に存在しない疾病であるため、ユルトミリス点滴静注のICERの判断においては、金額の基準において、制度上の一定の配慮がなされた。
 なお、ユルトミリス点滴静注の効能・効果に「非典型溶血性尿毒症症候群」が2020年9月25日に追加されたが、分析の対象とはなっていない。

再算定でオプジーボの薬価など引下げ
 一定規模以上の市場拡大があった場合に、薬価が引き下げられる市場拡大再算定が実施され、ビンダケルカプセル20mg、テセントリク点滴静注1200mgとその類似品(オプジーボ点滴静注、キイトルーダ点滴静注、イミフィンジ点滴静注)が対象となった。薬価改定時以外の市場拡大再算定は年4回の新薬収載の機会を活用して実施している。効能追加などがあった医薬品について、市場規模350億円超の医薬品で一定規模以上の市場拡大があった品目が該当する。
 ビンダケルカプセル20mg(ファイザー)は4万3,672.80円が3万8,866.00円に下がる(▲11.0%)。テセントリク点滴静注1200mg(中外製薬)は63万7,152円が56万3,917円に下がる( ▲11.5%)、オプジーボ点滴静注20mg(小野薬品工業)は3万6,063円が3万1,918円に下がる(▲11.5%)。キイトルーダ点滴静注100mg(MSD)は24万2,355円が21万4,498円に下がる(▲11.5%)、イミフィンジ点滴静注120mg(アストラゼネカ)は11万5,029円が10万1,807円に下がる(▲11.5%)。
 合計で、5成分9品目が対象となっており、いずれも適用は8月1日からである。

コロナとインフル同時検査を適用
 臨床検査について、新型コロナとインフルエンザの診断補助に用いることができるCOVID-19 and InfluenzaA+B 抗原コンボテスト「ニチレイバイオ」(ニチレイバイオサイエンス)の保険適用を了承した。キット化されており、検査機器が不要で、判定時間15分で結果が出るという。臨床性能試験では、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスのいずれにでも、高い陽性一致率・陰性一致率を示した。
 新型コロナへの感染が疑われる患者に対する診断で、600点を算定できる。算定は1回だが、新型コロナ発症後に同検査を実施し、陰性であり他の診断がつかない場合は、さらに1回に限り算定できる。なお、疫学調査を目的とした算定はできない。
 また、同検査を実施した場合は、「インフルエンザウイルス抗原定性」や「SARS-CoV-2 抗原検出」を別に算定することはできない。
 保険収載における項目は、E3(新項目)、測定項目は「SARS-CoV-2・インフルエンザ抗原同時検出」、測定方法は「イムノクロマト法」、参考点数は「D012感染症免疫学的検査25 マイコプラズマ抗原定性(免疫クロマト法)」の4回分としている。
 厚労省は同日付けで、「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査における抗原検査の取扱いについて」を事務連絡した。同検査を新型コロナの行政検査における抗原検査に位置づけるとともに、医療機関と都道府県等がすでに締結した契約について、当事者の異議がある場合を除き、同検査が含まれることを示した。同日付けの「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その47)」でも、従来の抗原検査と同様の取扱いであるとした。

 

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  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2021年5月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210501.pdf

    2021年5月1日 ... 2019年秋、両学会ではCOPD・間質. 性肺炎などによる呼吸 ... テリルジー 100
    エリプタ14吸入用. (グラクソ・ ... ファーマ)は、現行薬価の3,411万3,655. 円が
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