全日病ニュース

全日病ニュース

医師偏在対策のあり方を改めて議論

医師偏在対策のあり方を改めて議論

【医師需給分科会】医学部定員臨時増員の延長継続を踏まえ

 厚生労働省の医師需給分科会(片峰茂座長)は6月4日、医学部入学定員の臨時増員の延長が続く現状をめぐり、医師偏在対策のあり方を議論した。全国知事会などから臨時増員の延長継続を求める意見が出ている中で、委員からは、現状の医師偏在対策の効果を疑問視しつつも、臨時増員は予定通り段階的に廃止すべきとの意見が相次いだ。
 医師不足問題に対応するため、2007年度から医学部入学定員の臨時増員が始まった。2020年度に増員数は933人に達した。2019年度末が一部の臨時定員の期限であったが、2020 ~ 2021年度は延長され、2022年度も、新型コロナの影響で十分な議論が行えず、延長を決めた。2023年度以降の取扱いが課題だが、受験生に周知するため、早急に結論を得る必要がある。
 一方、医師の需給推計によると、現状ではマクロで医師は不足するが、2029年頃に労働時間換算での医師需要に対する医師供給数は均衡し、その後、医師は過剰になる。これを踏まえ、同分科会は、医師の増員は段階的に抑制する必要があるとの結論を出している。
 同時に、医師偏在を解決する必要があるため、地域枠の拡充を中心に、強力な医師偏在対策を行っていく必要がある。ただ、地域枠を拡充しても、地域医療で活躍する医師の養成には時間がかかるという問題がある。
 全日病副会長の神野正博委員は、「医師偏在対策を実施していても、実感として地方の病院に医師は来ていない。最近は、地域偏在と診療科偏在とは別の偏在問題が生じている。例えば、多数の医師が在籍する在宅医療を専門に提供する医療機関がある。また、最近のワクチン接種など特定の医療に従事する潜在女性医師の集団がある。これらが新たなニーズであるならそれを加味して、医師需給問題を考える必要がある」と指摘。地域医療の現場の医師不足を訴えた。
 他の委員からも、「医師偏在対策が効果を上げている実感がない」との意見が多かった。また、診療科偏在の問題を指摘する意見が相次いだ。具体的には、「コロナ禍でも忙しい診療科とヒマな診療科に分かれた。医師を柔軟に動かすことが課題」、「総合診療医を医学部の教育課程に明確に位置付け、キャリアパスを確立しないと選ぶ医師は増えない」、「診療科偏在解決にシニア医師の活用を考えていくべき」といった意見が出た。
 歯学部定員を医学部定員に振り替えられる制度については、「歯学部を持つ大学と持たない大学で不公平がある」ことから、廃止が検討されている。2020年度の振替枠の合計は44人。ただ、振替枠をそのまま廃止するか、一定枠を医学部の地域枠などとして活用するかは今後の議論。厚労省は次回の会合で、整理案を提示する考えを示した。

 

全日病ニュース2021年6月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医学部入学定員の臨時定員枠を2022年度も維持|第971回/2020年 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20200915/news03.html

    2020年9月15日 ... マクロ需給推計によると、将来的に医師は過剰になるが、医師の偏在は
    依然として深刻であり、全体での医師数 ... これらを踏まえ、全日病副会長の神野
    正博委員は、「2023年度以降の臨時定員枠の取扱いが定まらないまま、 ...

  • [2] 診療科別必要医師数の推計で新たに病院勤務医を試算|第957回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20200215/news06.html

    2020年2月15日 ... 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会の医師需給分科会(片峰茂座長)
    は1月29日、診療科ごとの将来必要な医師 ... 全日病副会長の神野正博委員は「
    追加試算には大賛成。 ... さらに神野委員は、必要医師数の推計のベースとして
    きた、DPCデータから求めた診療科と疾病等の対応表の開示を求めた。 ... [1] 厚
    労省・医師需給分科会> 2020~2021年度の医学部臨時増員は現状 .

  • [3] 医学部定員の臨時枠を段階的に削減し地域枠を増やす|第976回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20201201/news11.html

    2020年12月1日 ... 医師需給推計によると、労働時間を週60時間に制限する改定を置いたケースで、
    2023年の医学部入学者が医師になると想定され ... 全日病副会長の神野正博委員
    、「臨時定員を減らすことに反対はしないが、医師偏在がまだ大きいという認識
    を持ち、強力な偏在 ... 厚労省の調査によると、臨時定員(地域枠)の増員による
    医師偏在是正効果は2014年から2018年で、医師多数都道府県で ...

  • [4] 医学部定員の取扱いで第3次中間取りまとめを了承|第919回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180615/news03.html

    2018年6月15日 ... 第1次中間取りまとめでは、医師の需給推計を実施し、医師偏在対策の項目を
    示すとともに、2017年度で期限を迎える医学部入学定員の臨時増員を2019年度
    まで ... 2020年度以降の医学部入学定員の臨時増員の取扱いで第3次中間報告を5
    月にまとめることを了承した。冒頭、全日病副会長の神野正博委員は、「医師
    偏在対策の検証ができていないため、2020年度以降1、2年は現状 .

  • [5] 地域枠医師の条件を厳格化し、キャリア形成を支援|第897回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170701/news02.html

    2017年7月1日 ... 喫緊の課題である医師確保対策については、①医師の働き方改革②医師偏在対策
    需給推計③医師養成過程─の3 ... ⑥の派遣先については、全日病副会長の神野
    正博委員が、「一部の都道府県が地域枠医師の配置を公的病院に ...

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年5月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160515.pdf

    2020年5月15日 ... 来の医師需給推計の結果を公表。医師. 数は2024年には ... ごとに原則10人まで
    さらに増員を図る. ことが可能となって ... 全日本病院協会 副会長・看護師特定
    行為研修検討プロジェクト委員委員神野正博. 厚労省・専門医 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。