全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2021年)第988回/2021年6月15日号救急外来での救急救命士の活用で院内委員会を設置

救急外来での救急救命士の活用で院内委員会を設置

救急外来での救急救命士の活用で院内委員会を設置

【救急・災害医療検討会】MC 体制に関わる構成員の必須化めぐり議論

 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等のあり方に関する検討会」(遠藤久夫座長)は6月4日、救急救命士が救急救命処置を実施できる場所について、医療機関に到着する前だけでなく、いわゆる救急外来にも広げることになったことを踏まえ、運用面の議論を開始した。救急救命士の質を担保するために、医療機関内に設置する委員会について、メディカルコントロール体制(MC 体制)に関わる医師を構成員として必須化することの是非で議論があった。
 改正医療法が5月21日に成立し、勤務医の負担軽減策として期待される医療従事者のタスク・シフト/シェアを進めるための改正も実施される。救急救命士の業務場所拡大の施行は今年10月。夏までに取扱いを整理する必要がある。
 救急救命士が救急外来で救急救命処置を実施するにあたって、救急救命士の質を担保する必要がある。このため、厚労省は、同検討会がまとめた「救急救命士の資質活用に向けた環境整備に関する議論の整理」を踏まえ、2点の論点を提示した。①医療機関に所属する救急救命士の質の担保を目的とした委員会の設置と②院内研修─である。
 委員会については、◇実施可能な救急救命処置の範囲等に関する規定の整備◇研修体制の整備◇救急救命処置の検証を行う体制の整備◇組織内の位置づけの明確化を行うことを例示した。
 救急医療の学会関連代表の委員からは、委員会の構成員にメディカルコントロール体制(MC 体制)に関わっている医師を必須化することを主張する意見が出た。これに対し、全日病常任理事の猪口正孝委員は反対した。
 学会関連代表の委員は、現状で救急救命士は、MC 体制の下で質を担保して、業務を行っており、救急外来でもそれが必要と主張した。しかし、猪口委員は、「それは逆の理屈で、院外で医師の指示を直接受けられないから、MC 体制が必要だということ。MC 体制に関わる医師がいなければならないとすれば、二次救急を担う多くの病院で、救急救命士を活用できなくなってしまう」と述べた。
 厚労省も、医療法における医療機関に設置を求めている医療安全管理委員会や院内感染対策委員会で、構成員に所属等の規定は設けておらず、救急救命士の業務の質を担保するための委員会で厳格な規定を設けることは望ましくないとの考えを示している。
 一方、日本医師会の委員は、医療機関の裁量を認めた上で、委員会設置の参考にするために、関連学会がガイドラインを作成することを求めた。これに対しては、多くの委員が賛同した。
 救急救命士に医療機関が実施する研修については、就業前に必須の研修として、◇医療安全◇感染対策◇チーム医療─をあげた。救急救命処置の範囲に変更はないので、処置の質は担保されていると考えるが、院内と救急車内での環境の相違に着目した研修が必須とされた。研鑽として実施する上では、救急救命処置の研修は望ましいと位置付けている。

二次救急の半数がコロナ患者受入れ
 厚労省は同日の検討会に、3月末時点までのデータを集計した医療機関の新型コロナ患者の受入れ状況を公表した。新型コロナ患者の受入れ実績があるのは、急性期病棟のある病院の48%、二次救急病院(三次救急除く)の52%、三次救急病院の95%、ICU 等を有する病院の90%であった。病院の開設者別の集計結果は示していない。
 また、ICU 等の病床と新型コロナの死亡者数の関係のデータを提示した。日本のICU 等の病床が対人口比で先進国の中では少なく、それが新型コロナに対応する上で悪影響を与えたとする報道がある。しかし、少なくともICU 等の病床と死亡者数の単純比較では、そのような結果はみられない。
 例えば、人口10万人当たりICU 等病床数は、米国が34.7床、ドイツが29.2床、フランスが11.6床、イギリスが6.6床である。これに対して日本は14.4床である。
 一方、ICU 等病床当たりの死亡者数は、米国が5.671人、ドイツが2.393人、フランスが10.106人、イギリスが25.855人。これに対して日本は0.320人。先進各国で、ICU 等病床数と死亡者数に、相関関係はみられず、日本は際立って死亡者数が少ないため、比較できる数字になっていない。
 なお、この場合の日本のICU 等病床は、診療報酬の定義により、「特定集中治療室管理料」、「救命救急入院料」「ハイケアユニット入院医療管理料」などの合計。諸外国の病院数のデータに、ハイケアユニットに相当する病床が含まれているため、それに合わせて集計し、合計18,121床、人口10万人あたり14.4床とした。

 

全日病ニュース2021年6月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 救急医療体制見直しの議論始まる|第921回/2018年7月15日号 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180715/news03.html

    2018年7月15日 ... 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(遠藤久夫
    座長)は6月21日、救急医療体制の ... 重症患者を受け入れる二次救急医療機関は
    、第三次救急医療機関とどう医療機能を分化・連携すべきか─を論点として示し
    た。 メディカルコントロールの指標検討 患者の重症度に応じて搬送先を決めるに
    は、適切な指標でメディカルコントロールを行う必要がある。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年7月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180715.pdf

    2018年7月15日 ... 久夫座長)は6月21日、救急医療体制. の見直しに向けた議論を始め ... べきか─
    論点として示した。 メディカルコントロールの指標検討. 患者の重症度に応じ
    て ... 井戸敏三、遠藤久夫、花井十伍、邉見. 公雄、本田浩、向井 ...

  • [3] ドクターヘリの安全運航に向けた取組みを了承|第919回/2018年6 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180615/news05.html

    2018年6月15日 ... 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(遠藤久夫
    座長)は5月30日、厚労省が提案した ... さらに論点として、◇医療資源の有効
    活用と救急医療の質の向上のため、医師派遣および患者搬送手段の選択や、 ... を
    機能させ、地域で一体となり協議すべき◇効率的な運用について協議する場
    としてメディカルコントロール協議会を活用すべき―の3点をあげた。

  • [4] 救急救命士の業務見直しの必要性で委員の意見が一致|第933回 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190201/news05.html

    2019年2月1日 ... 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(遠藤久夫
    座長)は12月20日、救急救命士の業務範囲を見直すべきとの考えで委員の ...
    しかし委員からは、「課題設定と具体的な論点に違和感がある。

  • [5] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年10月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/191015.pdf

    2019年10月15日 ... 体の当直体制の見直しが求められる。 「研鑽」では、出退勤管理 ... よる
    メディカルコントロール(医療統. 括)の下で業務を ... が論点になった。座長の
    医療法人偕行 ... 進に関する検討会(遠藤久夫座長)は. 10月2日、2024 ...

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年6月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190601.pdf

    2019年6月1日 ...論点に対し、3点を指摘した。 はじめに、「(地域 ... 研修部会(遠藤久夫
    会長)は5月14. 日、日本専門医 ... 検討会(遠藤久夫. 座長)は5月23日、医師の
    働き方改革 ... また、メディカルコントロール体制. の下で、病院 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。