全日病ニュース

DPC/PDPSになじまないDPC対象病院にヒアリング

【入院医療分科会】「医療資源投入量が少ない」「在院日数が短い」病院を調査

　中医協の入院医療等の調査・評価分科会（尾形裕也分科会長）は６月16日、2022年度診療報酬改定のDPC制度の見直しに向け、2021年度特別調査（ヒアリング）の実施案を了承した。DPC/PDPS になじまないと考えられるデータを出しているDPC対象病院に対し、項目ごとに最大10の病院を抽出。調査票を送付するとともに、DPC/PDPS等作業グループの場でヒアリングを実施する。
　2018年度診療報酬改定に向けた「DPC評価分科会報告書」で、診療密度や在院日数が平均から外れている病院は、DPC制度になじまない可能性があると指摘された。
　2020年度改定の議論では、「医療資源投入量が平均から外れた病院」のうち、「医療資源投入量の少ない病院」について、疾患の頻度が高くかつ医療内容の標準化が進んでいる内科系疾患の「手術なし」「手術・処置等１なし」の症例が占める割合が高い病院の分析を行った。また、「在院日数が平均から外れた病院」のうち、「在院日数の短い病院」について、自院他病棟への転棟割合が高い病院の分析を行った。
　2022年度改定に向けては、引続き適切なDPC制度の運用を図るため、「医療資源投入量の少ない病院」と「在院日数の短い病院」に対し、個別調査やヒアリングを実施することになっていた。
　今回の調査の目的としては、「医療資源投入量の少ない病院」に対しては、◇同じ診断群分類の症例でも、医療資源投入量が平均から外れていることの背景◇コーディングに関する理解度─を調査する。「在院日数の短い病院」に対しては、◇転棟割合がDPC対象病院全体と比べて高くなっていることの背景◇調査対象施設内における転棟に対する考え方─を調査する。
　また、すべてのDPC対象病院に対しては、コーディングテキストやコーディングの方法に関し、「DPC制度の運用に当たっての不明点があるか」などを調査する。
　全日病会長の猪口雄二委員は、「特に、『在院日数の短い病院』で自院他病棟への転棟割合が高い病院について、詳しく調べてほしい。地域包括ケア病棟への入院の９割以上が、院内の急性期病棟からの転棟である大病院が少なくない」と指摘した。
　背景には、患者がDPC対象病棟から地域包括ケア病棟に転棟する時期が、「地域包括ケア病棟入院料の点数」を「診断群分類区分における点数」が下回るタイミングに偏っている事例が確認されていることがある。医療の適切性ではなく報酬上の有益性を優先し、転棟時期が決まることは不適切であり、2020年度改定では、転棟後も診断群分類点数の入院期間Ⅱまでは、地域包括ケア病棟の点数ではなく、DPC/PDPSを算定しなければならないことになった。
　また、地域包括ケアを推進する地域医療の姿として、DPC対象病院が地域包括ケア病棟を持ち、地域完結型医療ではなく、院内で転棟を行うことで自院完結型医療を目指すことは、必ずしも、望ましくない。
　これらを踏まえた具体的な調査項目としては、◇「一般病棟」から「その他病棟」への転棟は患者ごとに、どのように決める手順になっているか◇「一般病棟」から「その他病棟」への転棟も含めたクリニカルパスを設けているか◇「一般病棟」から「その他病棟」への転棟に関して、調査対象病院内で統一された医学的な方針があるか◇DPC対象病院の在院日数が、DPC参加病院の平均から外れていることについて、どのような理由があると考えるか─を設ける。
　「医療資源投入量の少ない病院」に対する調査項目では、◇「特定の症例（急性心筋梗塞等）について、治療を行うための人員（専門医など）が配置されているか◇「手術あり」「手術・処置等１あり」の症例が少ない理由◇「DPC/PDPS傷病名コーディングテキスト」について、診断群分類の入力者や確認者が理解しているか◇医療資源投入量が、DPC参加病院の平均から外れていることについて、どのような理由が考えられるか─などを設ける。