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ホーム全日病ニュース(2021年)第989回/2021年7月1日号コロナ患者受入れ病院での手術制限の影響を示唆

コロナ患者受入れ病院での手術制限の影響を示唆

コロナ患者受入れ病院での手術制限の影響を示唆

【入院医療等分科会】2020年度調査結果(速報その2)を厚労省が報告

 厚生労働省は6月16日の中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)に、2022年度診療報酬改定に向けた入院医療の2020年度調査結果(速報その2)を報告した。2020年度改定の影響とあわせ、3月10日の分科会で、新型コロナの影響を精緻に把握したいとの意見が出たことを踏まえ、コロナ対応ありの定義を狭めて再分析を行った。「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の分析では、新型コロナ患者を受け入れた病院のC項目(手術等の医学的状況)で該当患者割合が低く、通常医療での手術の中止・延期の影響があったことが示唆された。
 調査対象施設は、急性期一般入院基本料等の届出施設が1,900、回収数は942(回収率49.6%)、地域包括ケア病棟入院料・回復期リハビリテーション病棟入院料等の届出施設が1,900、回収数は824(回収率43.4%)、療養病棟入院基本料の届出施設が1,600、回収数は573(回収率35.8%)、障害者施設等入院基本料等の届出施設は800、回収数は343(回収率42.9%)となっている。回収率はいずれの届出施設でも2018年度調査より上昇している。
 新型コロナの入院医療への影響については、3月10日の分科会で委員から出た様々な指摘を踏まえ、再分析の結果が示された。
 特に、3月10日の調査結果では、新型コロナ患者「受入れあり」の医療機関の定義が、①新型コロナ患者等を受け入れた医療機関②新型コロナ患者等を受け入れた医療機関に職員を派遣した医療機関③学校等の休業等に伴い、職員を派遣した医療機関④新型コロナに感染し、または濃厚接触者となり出勤ができない職員が在籍する医療機関─のすべてを含んでいた。これを変更し、新型コロナ患者を1度でも受け入れた医療機関を「受入れあり」とし、それ以外を「受入れなし」とした。
 この定義により、看護必要度と新型コロナ患者の受入れ状況の関係を調べた。看護必要度において、看護職員が直接評価を実施する「Ⅰ」を届け出ている病院における基準値の該当患者割合は、新型コロナ患者受入れ病院の場合、急性期一般入院料1、4、5、専門病院入院基本料(7対1)で、低くなる傾向が生じた。
 例えば、急性期一般入院料1の「Ⅰ」では、改定前の2019年8月~ 10月が36.6%、2020年8~ 10月の「受入れあり」が36.7%でほぼ変わらない。しかし、「受入れなし」では、38.9%に上昇する。診療実績データを用いる「Ⅱ」では、改定前の2019年8月~ 10月が32.5%、2020年8~ 10月の「受入れあり」が36.4%、同期間の「受入れなし」が38.1%であり、改定後の上昇が新型コロナ患者受入れの有無にかかわらず生じているが、「受入れあり」で上昇幅が小さい。
 さらに詳細に分析すると、看護必要度の判定基準の種類において、基準③「C項目(手術等の医学的状況)が1点以上」で「Ⅰ」「Ⅱ」ともに、「受入れあり」の方が、基準値が低くなるとの結果が得られた。「Ⅰ」の場合、「受入れなし」の7.6%に対し、「受入れあり」の患者割合は7.0%であった。「Ⅱ」の場合、「受入れなし」の11.5%に対し、「受入れあり」の患者割合は9.0%であった(図表上を参照)。旭川赤十字病院院長の牧野憲一委員は、「新型コロナ患者受入れにより、手術など通常の高度医療が制限を受けたと言えるのではないか」と述べた。
 2020年度改定の影響をみる観点で、改定前後の年度の看護必要度の変化に着目する。急性期一般入院料1の「Ⅰ」の場合、2019年度の平均値が36.6%であるのに対し、2020年度は37.9% であった(中央値は35.0%、36.5%)。「Ⅱ」の場合、2019年度の平均値が32.5%であるのに対し、2020年度は36.9% であった(中央値は30.9%、35.7%)。
 2020年度改定では、「重症度、医療・看護必要度」の評価項目・判定基準を大きく見直すとともに、患者割合の基準値について、「Ⅰ」で30%から31%、「Ⅱ」で25%から29%に引き上げた。新型コロナの影響があるものの、全体をみれば、2020年度改定の患者割合の引上げに見合う程度には、看護必要度の基準値が上がっていることがわかる。
 なお、新型コロナの感染拡大を踏まえ、経過措置が延長されているため、基準値の引上げは現在も実施されていない。ただ、評価項目・判定基準の見直しは適用されており、新たな評価により、基準値が測定されている状況だ。

地ケア等でコロナ回復患者受入れ
 地域包括ケア病棟・病室や回復期リハビリテーション病棟の調査結果をみると、昨年4月から10月のデータであっても、新型コロナ回復後の患者等を受け入れている病院が一定程度あることが確認できた(図表下を参照)。
 例えば、許可病床200床未満が対象の地域包括ケア病棟入院料1の場合、昨年4~ 10月の期間で、いずれの月もコロナ回復患者等の受入れ実績のある病院が、5割前後の割合となっている。回復期リハビリテーション病棟入院料では、さらにコロナ回復患者の受入れ割合が高く、入院料4では、6月を除き8割を超えている。入院料1では、昨年4~ 10月のいずれの期間でも、6割を超えている。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「地ケア・回リハ病棟での新型コロナ患者の受入れは少ないが、回復患者の受入れは一定程度行われていることが示されている。地域における医療機関間の連携が進んでいる」と述べた。
 全日病常任理事の津留英智委員は、「コロナ回復後患者等と新型コロナウイルス感染症治療後の患者(検査陰性)とは、その定義は統一されているか」と質問し、厚労省は「その通り」と回答した。定義を統一すると、この結果では、他のデータにより、コロナ感染症治療後の患者の受入れより、新型コロナ以外の患者受入れの方が多いことになる。
 一方、療養病棟のコロナ受入れの実績は少なかった。療養病棟入院料1で、回復患者の受入れ割合は昨年4~9月はいずれも2%未満にとどまる。10月になって2.1%に上がっている。地域医療機能推進機構理事の山本修一委員は、「急性期病院側の感覚だと、療養病棟の病院とは、調査月以降の第3波(11月以降)から連携が進んだ。11月以降は状況は違っていた」と述べた。

 

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