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ホーム全日病ニュース(2021年)第989回/2021年7月1日号医療機関への病床確保の要請で法的措置を検討

医療機関への病床確保の要請で法的措置を検討

医療機関への病床確保の要請で法的措置を検討

【政府】経済成長と財政健全化目指し骨太方針2021を決定

 政府は6月18日の臨時閣議で、経済財政諮問会議がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2021」(以下、骨太方針2021)を決定した。「グリーン化」「デジタル化」「地方の所得向上」「子ども・子育て支援」の4つの課題に重点的に資源配分し、経済成長を目指す方針を示した。2025年にプライマリーバランス(PB)を黒字化する従来からの財政健全化目標は堅持し、2022年度予算の社会保障関係費は、過去3年間と同様に、「高齢化による伸び」に相当する分に収めることを明記した。
 感染症によって有事となった事態に備え、医療機関に国や自治体が病床確保の要請や指示を行う仕組みなどの実効性を高める方向を示した。菅義偉首相は18日の経済財政諮問会議・成長戦略会議の合同会議において、「感染症によって、いわば有事の状況となった場合の、病床の確保、早期の治療薬やワクチンの実用化などについて、法的措置を速やかに検討する」と明言した。
 新型コロナに対応した医療機関への支援については、補助金・交付金、診療報酬のあり方を検討する方針や、医療提供体制改革に向けて診療報酬のさらなる包括化を検討する方針が盛り込まれた。全世代型社会保障改革をさらに進める考えも盛り込んだ。菅首相は、「これらの政策について、今後の予算編成や制度改正において具体化し、スピーディーに実現する」と述べた。

経済成長と財政健全化を目指す
 「グリーン化」「デジタル化」「地方の所得向上」「子ども・子育て支援」の4分野への投資を重点的に進め、経済成長を実現する考え方を示した。これらの4分野への投資を重点的に促進し、民間の投資とイノベーションを促すことで、経済社会構造の転換を目指す。
 4分野のうち「子ども・子育て支援」では、不妊治療への保険適用や、出産育児一時金の増額などを検討し、年内に包括的な政策パッケージを策定する。
 その一方で、財政健全化にも取り組む。給付と負担のバランスや、現役世代の負担上昇の抑制を図り、全世代型社会保障改革を引き続き推進する考えだ。骨太方針2018で掲げた「2025年度に国・地方を合わせたPB黒字化を目指す」という財政健全化目標は、骨太方針2021でも堅持した。
 ただし、新型コロナの影響で経済財政状況が不安定であることを考慮し、2021年度内に感染症の経済財政への影響の検証を行い、その結果を踏まえて目標年度を再確認する方針だ。
 社会保障関係費について、過去3年間の予算編成では、「実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸び」に収めることを目標としてきた。今後の2022年度から2024年度までの3年間においても、同様に、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加分に収める方針を示した。非社会保障関係費は、これまでの歳出改革の取組みを継続する。

新型コロナウイルス感染症対策
 骨太方針2021には、感染症拡大の緊急時の対応を、より強力な体制と司令塔の下で推進する考えが示された。国や地方自治体が、病床や医療人材の確保に関する協力を、医療機関に迅速に要請・指示できるようにするための仕組みを、速やかに検討する方針を明記した。
 治療薬やワクチンの早期実用化を可能とする仕組み、ワクチン接種体制の確保などの感染症有事に備える取組みの実効性をより高めるために、法的措置を速やかに検討する方針も示した。
 感染症患者を受け入れる医療機関に対して、減収分の支援や病床確保・設備整備等のための支援は、現在は主に補助金・交付金で給付が行われているが、「診療報酬や補助金・交付金による今後の対応のあり方を検討」すると明記した。
 この部分について、5月21日に財政制度等審議会が麻生太郎財務相に提出した建議では、新型コロナに対応した病院への支援を、災害時に行われてきた「概算払い」を参考に、前年同月ないし新型コロナ感染拡大前の前々年同月水準の診療報酬を支払う簡便な手法で行うことを提言していた。
 しかし、医療関係団体からは概算払いに反対する声が相次いでいた。最終的に、骨太方針2021では「診療報酬や補助金・交付金による今後の対応のあり方を検討」という表現にとどまった。
 新型コロナ対応として設定された診療報酬上の特例措置の効果を検証する方針も盛り込まれた。
 新型コロナワクチンについては、希望するすべての対象者への接種を10月から11月にかけて終えることを目指す。

診療報酬の「さらなる包括化」検討
 医療提供体制については、感染症に対応するため、医療提供体制の「平時」と「緊急時」の体制の切り替えを迅速・柔軟に行う仕組みを構築すべきとした。
 そのため、◇症状に応じた感染症患者の受入れ医療機関の選定◇地域において感染症対応とそれ以外の医療提供の役割分担の明確化◇医療専門職人材の確保と集約―を早期に進める。
 地域医療連携推進法人制度を活用するなどして、地域医療構想を推進していく方針も示した。かかりつけ医機能については、医療機関の機能分化と連携を進めることを盛り込んだ。
 診療報酬については、「さらなる包括払い」のあり方も含めて検討する。
 このほか、◇診療所も含めた外来機能の明確化・分化の推進◇医学部等における医療人材養成課程の見直し◇医師偏在対策の推進―などを図る。
 オンライン診療については、「初診からの実施は原則かかりつけ医によるとしつつ、事前に患者の状態が把握できる場合にも認める方向で具体案を検討する」と記載された。
 現在、限られたがん種について保険適用されている粒子線治療の推進に向けた検討を行うことも盛り込まれた。病院の特徴や規模など、地域の状況に配慮しつつ、診療の質や患者のアクセス向上を図っていく。
 がんや循環器病、腎臓病については、新型コロナの感染拡大による受療行動の変化の実態を把握。健診・検診の受診控えに関する調査の結果を踏まえ、新しい生活様式に対応した予防・重症化予防・健康づくりを検討するとした。

医療法人の事業報告を公表
 データヘルスについては、工程表にそって改革を着実に進める方針を示した。具体的には、医療機関・介護事業所における情報共有と、そのための電子カルテ情報や介護情報の標準化を推進することなどが列記されている。
 医療法人の事業報告書等をアップロードで届出し、公表する全国的な電子開示システムを早急に整え、感染症による医療機関への影響を早期に分析できる体制を構築する方針も示した。
 介護サービス事業者にも、事業報告書等のアップロードも含めた届出・公表を義務化し、分析できる体制を構築する。
 レセプトシステム(NDB:ナショナルデータベースシステム)の充実や、新型コロナ以外へのG-MISの活用などは、デジタル庁のもとで進める。
 医療費適正化計画の見直しについては、一人当たり医療費の地域差を半減することを目指す。
 具体的には、都道府県における医療提供体制整備の達成状況の公表や、未達成である場合の都道府県の責務の明確化を行う。都道府県が策定する医療費適正化計画で、医療費の見込みを実際の医療費が著しく上回った場合の対応など、都道府県の役割や責務を明確化する。

 

全日病ニュース2021年7月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 病院のあり方に関する報告書(2021年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2021_arikata.pdf

    めがない限り基礎的財政収支(プライマリーバ. ランス、PB) ... 政府は国・地方
    PB を 2025 年度に先送りし. たばかりで ... イフバランスの実現、男女ともに
    働くモデルへ. 転換する必要が ... 常時(有事)の役割分担を改めて再構築する必.
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