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ホーム全日病ニュース(2021年)第990回/2021年7月15日号2022年度診療報酬改定に向け本格的な議論始まる

2022年度診療報酬改定に向け本格的な議論始まる

2022年度診療報酬改定に向け本格的な議論始まる

【中医協総会】感染予防策のコロナ特例の恒久化で賛否

 中医協総会(小塩隆士会長)は7月7日、2022年度診療報酬改定に向け、本格的な議論を始めた。9月までに各検討項目を一巡させる第1ラウンドの議論を行い、秋に意見の整理をまとめる。秋以降は、個別項目の具体的な評価を検討する第2ラウンドとなる。その後の予定は例年と同じで、来年1~3月に改定内容の諮問・答申を行い、2022年度改定を決定する。
 厚労省は、外来・入院・在宅・歯科・調剤という通常の議題のほかに、コロナ・感染症対応を設け、同日のテーマとした。また、個別事項として、◇働き方改革の推進◇不妊治療の保険適用◇医薬品の適切な使用の推進◇歯科用貴金属の随時改定─の検討を明記した。
 個別事項のうち、働き方改革は2020年度改定の最重要課題となったもので、2024年度の医師の働き方改革の施行に向け、引続きの重要課題となっている。不妊治療の保険適用は、菅義偉首相が直接、田村憲久厚労相に保険適用の拡大の検討を指示した案件となっている。
 今後のスケジュールを踏まえ、日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「2020年度改定が実施される時期に、新型コロナの感染拡大があり、医療現場は改定前の状況から一変した。政府の緊急経済対策や薬価財源を活用した診療報酬の特例対応、診療報酬や補助金の追加的な対策が実施されたが、患者の受療行動も変化し、通常の医療費増加分を考慮すれば、2.1兆円の医療費減となっている」と述べ、医療機関を取り巻く現状の厳しさを指摘した。
 その上で、「2022年度改定に向け、2020年度改定の影響を把握するためのさまざまな調査が実施されているが、新型コロナの影響を除いた判断ができない」と通常の改定との違いを強調。「新型コロナとの戦いは長期戦であり、それを踏まえると、2022年度改定は、2020年度改定を新型コロナへの対応に合うように『手直し』するという内容にならざるを得ない」との考えを示した。

コロナ・感染症対応を議論
 全体のスケジュールを確認した上で、「コロナ・感染症対応」と「外来」をテーマに議論した。
 厚労省は「コロナ・感染症対応」について、現状で新型コロナに対し各医療機関が、重症患者だけでなく、中等症患者への治療や自宅・宿泊療養を行っている患者への治療まで、それぞれの機能に応じて対応していることを示した。そのための支援として、緊急包括支援交付金などにより、「かかり増し」経費に加え、病床確保や休床に対する補助を含め、多方面から支援を講じていると説明した。
 それとあわせて、診療報酬においても、新型コロナ患者の診療で生じる追加的な手間などを適切に評価するための特例等を設けている。また、新型コロナ患者を受け入れている医療機関に対して、診療報酬の人員配置の変更に伴う柔軟な対応や、実績要件の緩和などを実施している。
 これらの新型コロナに対応するための様々な特例等の今後の取扱いについて、城守委員は、「小児特有の感染予防対策を講じた上での6歳未満の乳幼児への外来診療等の特例や、感染予防策を講じた上でのすべての患者の診療への特例は、10月以降も当然継続すべき。基本診療料への包括化も検討すべき。外来での院内トリアージ実施料、入院での救急医療管理加算などの特例も、恒久化を含め継続すべき」と述べ、コロナ患者の受入れの有無にかかわらず感染症対策を評価する特例の継続が不可欠であることを強調した。
 なお、6歳未満の乳幼児への外来診療等の特例は、9月末までになっているが、今年度末まで規模を縮小した措置を講じることを基本としつつ、感染状況などの実態を踏まえ、柔軟な対応を行うことになっている。感染予防策を講じた上でのすべての患者の診療に対する特例も、9月末までになっているが、延長しないことを基本としつつ、年度前半の対応を単純延長することを含め、必要に応じて、柔軟に対応するとの取扱いになっている。
 日本病院会副会長の島弘志委員は、感染予防策を評価した特例について、「すべての医療機関が感染予防策を講じていることなどにより、インフルエンザも激減している。特例は継続すべきであり、今後の新興感染症等への備えとしても、医療計画の見直しを踏まえ、評価の引上げを含め、恒久的な感染症対策の評価を議論すべき」と主張した。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「新型コロナの影響による医療機関の経営危機は、そもそも医療機関の経営が脆弱であるためであり、入院基本料を含めて診療報酬が制限されているために、利益が少なく、有事に対する余裕のなさにつながっている。有事に対応できる体制をどう作るかが課題だ」と訴えた。
 これらの診療側の意見に対し、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、真っ向から反論した。まず、感染予防策を評価した特例の恒久化に反対した。「政府の新型コロナ対策として決定されたもので、中医協で必要性がきちんと議論されなかった。エビデンスを蓄積してから、必要性を判断すべき」と主張した。新型コロナ患者に対する診療での特例については、「継続はやむを得ない」と述べた。
 その上で、「強調したいのは、骨太方針2021に明記されたように、『感染症患者を受け入れる医療機関に対し、減収への対応を含めた経営上の支援』を診療報酬で考えることの是非だ。これは診療報酬の大原則を覆すもので、診療報酬が診療行為を受けた患者への対価であるという大原則を変えるべきではない」と述べ、財務省の建議(2021年5月21日)に盛り込まれた考えに反対した。
 「外来」についても様々な議論が行われた。特に、外来医療の機能分化に向け、紹介状なしで受診する場合などの定額負担が義務化される病院の拡大の議論に伴う、かかりつけ医機能・医療機関連携のあり方や、初診からのオンライン診療の診療報酬における取扱いなどが課題とされた(次号8月1日号で詳報)。

 

全日病ニュース2021年7月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2021年5月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/210501.pdf

    2021/05/01 ... キムリアなどの薬価引下げ. 3面 ... 財源は「篤. 志による使途が指定された寄付金」で. あり、新型コロナ対策以外の目的の場. 合には使えない。 ... 中医協総会( 小塩隆士会長)は4月 ... 諮問・答申は通常どおり来年2月頃と.

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年7月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200701.pdf

    2020/07/01 ... 会保障の仕組みについても、医療財源. の問題について ... 中医協総会(小塩隆士 会長)は6月. 10日、地域医療 ... 中間年にも薬価調査・薬価改定を行う. ことが決まった。 ... 調査項目は2020年度改定の答申時の. 附帯意見に沿っ ...

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