全日病ニュース

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医師の働き方改革の議論が再開

医師の働き方改革の議論が再開

【厚労省・医師の働き方改革検討会】大学病院勤務医の実態調査も報告

 厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(遠藤久夫座長)は7月1日、改正医療法の成立に伴い、2024年度からの医師の働き方改革の施行に向け、検討会の議論を再開した。同日は、今後のスケジュールの大枠を確認したほか、勤務医に対する情報発信に関する作業部会の設置を了承した。
 医師に対する時間外労働規制が2024年度から適用される。時間外・休日労働は年間960時間が上限となるが、年間1,860時間の特例水準も設けられる。
 改正医療法では、◇勤務する医師が長時間労働となる医療機関における医師労働時間短縮計画の作成◇地域医療の確保や集中的な研修実施の観点から、やむを得ず高い上限時間を適用する医療機関を都道府県知事が指定する制度の創設◇当該医療機関における健康確保措置─などが盛り込まれた。
 今後、時間外労働規制の適用に向けた具体的な議論を進めていく。同日は、①医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査報告②勤務医に対する情報発信に関する作業部会の設置③医師労働時間短縮計画作成ガイドライン─が議題となった。その他の重要な課題である追加的健康確保措置の詳細や医療機関勤務環境評価センターの運営に関する事項、C-2水準(専攻医を対象とした集中的技能向上水準)に関する事項、医師の労働時間短縮等に関する大臣指針は、次回以降の議題となる。
 厚労省から、同検討会が法案内容をまとめた後に、変更のあった部分の説明があった。同検討会のまとめでは、時間外・休日労働が年960時間を超える特例水準で医師が勤務する医療機関に対しては、2021年度中から医師労働時間短縮計画を策定し、計画に基づく取組みを実施することを義務付けるとしていた。
 しかし、法律が施行され、実際に時間外労働規制が適用となる前に、計画の策定を義務付けることは、法制上困難との内閣法制局の解釈があったほか、新型コロナの対応に苦慮する医療機関に配慮すべきとの判断もあり、2023年度末までの計画策定は努力義務となった。
 ただし、2024年度以降の計画策定は義務であり、特例水準の指定を受ける医療機関における実質的な対応はそれ程変わらないと考えられる。
 また、厚生労働科研調査研究事業による「医師の働き方改革の地域医療への影響に関する調査」(研究代表者=裵英洙・慶大特任教授)の結果が報告された。10大学病院に長時間労働が多い診療科2~3を選択してもらい、合計26診療科における医師(531人)の副業・兼業先の勤務を含めた勤務実態を調べた。
 大学病院・副業・兼業先で「待機」を含む時間外労働は、A水準が40.1%、連携B水準は27.3%、B・C水準は9.4%、B・C水準を超過した医師は23.2%であった。これについて、大学病院での「待機」は時間外労働に含め、副業・兼業先での「待機」を時間外労働から除くと、B・C 水準超過は10.4%に下がった。
 宿日直許可が得られれば、B・C水準超過の医師が減ることが示唆され、社会医療法人ペガサス理事長の馬場武彦委員は、「宿日直許可基準が改善されたのに、副業・兼業先での取扱いが曖昧なままの病院が少なくない。さらなる周知や支援をお願いする」と求めた。

 

全日病ニュース2021年7月15日号 HTML版