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ホーム全日病ニュース(2021年)第991回/2021年8月1日号地域包括ケア病棟等と回復期リハ病棟を論点に議論

地域包括ケア病棟等と回復期リハ病棟を論点に議論

地域包括ケア病棟等と回復期リハ病棟を論点に議論

【中医協・入院医療等分科会】求められる機能と発揮している機能を分析

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)は7月8日、2022年度診療報酬改定に向け、回復期の入院医療をテーマに議論を行った。地域包括ケア病棟入院料・管理料と回復期リハビリテーション病棟入院料が論点となった。厚生労働省は、それぞれの入院料等が求めている機能と、現状で発揮されている機能との違いを示す資料を示した上で、委員の意見を求めた。

地ケア病棟の3機能の偏りを分析
 地域包括ケア病棟入院料は2014年度診療報酬改定で創設された。①急性期治療を経過した患者の受入れ②在宅で療養を行っている患者等の受入れ③在宅復帰支援の3つの役割を担うことが期待され、創設以来、届出病院数・病床数ともに、増加傾向にある。
 これらの3つの機能をバランスよく担うことは、地域包括ケアの中核を担う病院のモデルになり得る。ただ、地域包括ケア病棟入院料を算定する病院の3つの機能の担い方の実際をみると、さまざまな違いがあることがわかる。
 例えば、許可病床数200床未満が対象の入院料1では、自院の一般病棟からの転棟割合は、ゼロ%の病院が3分の1ほどで最も多く、8割を超える病院はほぼない。一方、許可病床数400床未満が対象である入院料2(400床以上の場合は自院の一般病棟からの転棟割合が6割未満でなければならない)では、ゼロ%の病院はわずかで、自院の一般病棟からの転棟割合が90%以上の病院が最も多いという結果になっている。
 他のデータからも、自院・他院の一般病棟から多数の患者を受け入れ、自宅等からの受入れが少ない病院が一定数存在することが示された。一方で、逆に、自宅等からの受入れが多く、自院・他院からの受入れが少ない病院が一定数存在している。
 ただ、自院の一般病棟からの転棟割合が6割未満の病棟の在宅復帰率(平均値で86.2%)と、6割以上の病棟の在宅復帰率(同85.3%)をみると、あまり差はみられない。また、緊急患者の受入れ患者数は一部の入院料の要件になっているが、地域包括ケア病棟入院料を届け出ている病院で、救急を実施していない病院が一定数あることも示された。
 入棟元によって、患者の状態には差がみられる。自宅等から入棟した患者では、「腰椎圧迫骨折」の患者が最も多く、次いで「肺炎」や「心不全」が多かった。一般病棟から入棟した患者では、「大腿骨転子部骨折・大腿骨頸部骨折」が多かった。また、平均在棟日数は、自宅等から入棟した患者で相対的に、平均在棟日数が短い傾向にあった。
 地域包括ケア病棟が3つの役割を担うことが期待されている中で、「自院の一般病棟からの転棟が多い病院や、救急を実施していない病院など1つの機能に特化しているようにみえる病院がある」と厚労省はデータを解釈した。
 これに対し委員からは、「地域の実情が異なるので、地域包括ケア病棟が異なる機能を持つのは当然。ただ、自院からの転棟割合の患者が100%というのは、少し違うのかなと思う」(井川誠一郎・日本慢性期医療協会常任理事)との意見が出た。

DPC/PDPSからの転棟の状況
 全日病会長の猪口雄二委員は、2020年度改定で適正化された改定内容の状況を質問した。2020年度改定では、DPC対象病院において、一般病棟から地域包括ケア病棟に患者を転棟させる時期が、DPC/PDPSの点数を地域包括ケア病棟入院料が上回るタイミングに偏る病院が確認されたことから適正化された。具体的には、地域包括ケア病棟に転棟後も各診断群分類の期間Ⅱまでは、DPC/PDPSの点数を算定することになった(地域包括ケア病室の場合は従来どおり期間Ⅲまで)。
 これを踏まえ、猪口委員は、「一般病棟から地域包括ケア病棟に患者が転棟する時期などの変化を含め、2020年度改定の見直しにより、DPC対象病院の転棟の状況がどうなっているのかを分析してほしい」と要望した。他の委員からも、同様の要望が相次ぎ、社会保険診療報酬支払基金医科専門役の井原裕宣委員は、「2020年度改定により、転棟・転室のタイミングの変化が起きているかの傾向だけでも把握してほしい」と述べた。
 地域包括ケア病棟では、リハビリを必要とする患者に、1日2単位以上の疾患別リハビリテーションを提供する必要がある。だが、3割超の患者にリハビリが提供されていない。厚労省は、これに関するデータを示した。患者の入棟元別に過去7日間のリハビリ単位数の平均値をみると、「特別養護老人ホーム」、「軽費老人ホーム、有料老人ホーム」、「その他の居住系介護士施設」で1日2単位以下となっていた。
 これに関して、全日病常任理事の津留英智委員は、「介護老人保健施設からと特養などからの患者像は、類似していると思うが、リハビリ単位数で違いが出ているのはなぜか」と質問した。厚労省の担当者は、「わからない」と回答した。ただ、地域包括ケア病棟の入棟元として、「一般病棟」と「自宅等」と「その他」は機能的に区分されており、老健は「その他」に含まれると説明した上で、「別の切り口での分析も試みたい」と回答した。

心臓リハビリがFIMで効果あり
 回復期リハ病棟についても、さまざまな議論が行われた。
 厚労省が、心臓リハビリテーションの効果の資料を提示した。入院心臓リハのプログラムに則って、効率よく、運動能力を回復させることで、FIM(機能的自立度評価表)が改善するとのデータが示された。現状では、回復期リハ病棟の入院患者の「回復期リハビリテーションを要する状態」に心大血管疾患リハビリテーションは含まれていないことから、導入の是非をめぐり議論が行われた。
 猪口委員は、「心臓リハのイメージは、心臓血管外科の近くの病室などで、術後や急性期の患者を対象に実施するというもの。ほかの疾患別リハビリテーションの状態とは少し毛色が違うと感じる。回復期リハ病棟で実施するとする場合には、循環器病に起因した廃用性症候群の状態の患者へのリハビリだと思うので、導入するのであれば、その括りに入ると思う。ただ、もう少し詳細なデータがないと、判断できない」と述べた。
 これに対し厚労省は、「今回は効果があるというデータだけを示した。次回以降、心臓リハに対するニーズとその背景、回復期リハ病棟に導入する場合の問題点などを整理して示す」と説明した。

FIMの経年的な低下について議論
 津留委員は、入棟時FIMが診療報酬改定の直後に、低下する傾向が経年的にみられることについて、発言した。「日本医療機能評価機構の病院機能評価の認定病院とそうでない病院を比べると、入棟時・退棟時FIMに差があるという論考がある。今回のデータは、平均値で出しているが、病院により差が大きいとするならば、それがなぜであるのかを分析することが必要であると思う」と述べた。
 FIMの経年的な変化をみると、退棟時FIMはゆるやかな上昇傾向があるものの、あまり変化がないのに対し、入棟時FIMは実績評価導入後の3回の診療報酬改定後に下がっている。例えば、2015年度と2016年度では3.1ポイント、2017年度と2018年度では1.5ポイント、2019年度と2020年度では1.8ポイント下がっている。
 入棟時の患者のFIMが低く判定される方向での「恣意的な評価」の可能性があり、委員からは、FIM以外の指標も実績評価の指標として検討することを主張する意見があがった。
 なお、2020年度は2019年度と比べ、発症から入棟までの日数が24.2日から29.5日まで伸びているが、これは前回改定で発症から2か月以内の入棟と言う要件が廃止されたことと、新型コロナの影響で転棟までの時間が長くなったこと等が考えられる。
 そのほか、◇回復期リハ病棟1~6の中で、受入れ患者の状態に違いがあった。入院料1では脳血管系の患者割合が高く、入院料5・6では骨折等の患者割合が高かった◇入棟時FIMでの重症者の受入れでは、入院料1・2と比べ入院料5・6で入棟時FIMの点数の低い患者割合が低い─などの傾向が確認された。

 

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