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ホーム全日病ニュース(2021年)第991回/2021年8月1日号医療資源重点外来の制度化に向け議論を開始

医療資源重点外来の制度化に向け議論を開始

医療資源重点外来の制度化に向け議論を開始

【厚労省・外来機能報告に関するWG】来年度施行のため年内に取りまとめ

 厚生労働省の「外来機能報告等に関するワーキンググループ(WG)」は7月7日、来年度から施行される外来機能報告制度の仕組みの議論を開始した。来年度施行のため、WGは年内に、検討事項の結論を取りまとめる必要がある。「医療資源を重点的に活用する外来」(以下、医療資源重点外来)の名称を決定し、その外来を位置付けるために、病院・有床診療所が報告する外来機能の項目を定める。医療資源重点外来を地域で基幹的に担う医療機関についての国が定める基準や名称なども決めなければならない。
 WGの座長には、尾形裕也・九州大学名誉教授が選出され、座長代理には松田晋哉・産業医科大学教授が指名された。
 改正医療法が成立し、外来機能報告制度が創設されることになった。外来機能報告制度は、医療資源重点外来を位置付けるための制度だ。その上で、医療資源重点外来を地域で基幹的に担う医療機関を明確化することになる。明確化する上で、外来機能報告で報告される項目に関して、特定の外来機能の項目が一定割合以上であるなど今後検討する、国が示す基準を参考に、地域の協議の場で確認し、決定するというプロセスを経る。
 他方、外来機能報告については、NDB(ナショナル・データ・ベース)を活用し、医療機関の事務は極力簡素化する方針となっている。
 いわゆる大病院志向がある中で、日常で行う診療は、かかりつけ医機能を担う身近な医療機関で受け、必要に応じて紹介を受けて、患者自身の状態に合った他の医療機関を受診し、さらに逆紹介によって身近な医療機関に戻るという流れをより円滑にすることが狙いだ。
 一方で、2020年12月15日に閣議決定された全世代型社会保障改革の方針では、「大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大」として、紹介状なし患者の受診での定額負担の対象について、地域の実情に応じて明確化される「紹介患者への外来を基本とする医療機関のうち、一般病床200床以上の病院にも対象範囲を拡大する」とされた。さらに、「より外来機能の分化の実効性が上がるよう、保険給付の範囲から一定額を控除し、それと同額以上の定額負担を追加的に求めるよう仕組みを拡充する」と明記されている。
 遅くとも2022年度初めまでに改革を実施できるようにすることも中間報告で明記されており、医療資源重点外来を地域で基幹的に担う医療機関が、定額負担が義務化される医療機関となる可能性がある。ただし、あくまでそのような医療機関の決定は「手上げ」であることが、社会保障審議会・医療部会などで確認されている。
 医療資源重点外来の基準については、すでに医療計画の見直し等に関する検討会で、一定の案が出ている。それによると、次の3つの基準に該当する外来が一定以上の件数である場合に、医療資源重点外来として位置付けられる方向だ。
 具体的には、①医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(手術やDPC入院で出来高算定できる処置、麻酔など算定した前後30日間の外来)②高額等の医療機器・設備を必要とする外来(外来化学療法加算、外来放射線治療加算、短期滞在手術等基本料などを算定)③特定の領域に特化した機能を有する外来(診療情報提供料Ⅰを算定した30日以内に別の医療機関を受診した場合、当該「別の医療機関」の外来)─が候補としてあがっている。
 検討会の委員からは、制度設計に向け、さまざまな意見が出された。
 全日病副会長の織田正道委員はまず、かかりつけ医機能を担う外来の議論がどこでどのように行われるかが不明確なままで、外来機能報告制度の議論を先に進めることへの違和感を表明した。今年度に実施されている「かかりつけ医機能の強化・活用にかかる調査・普及事業」の進捗などを、適宜報告することを厚労省に求めた。
 次に、現状の地域医療支援病院と、医療資源重点外来を地域で基幹的に担う医療機関の機能が類似しており、その違いが不明確であることも指摘した。厚労省の担当者は、「特定機能病院や地域医療支援病院とは別に、紹介患者への外来を基本とし、状態が落ち着いたら、逆紹介により、再診患者を地域に戻す役割を担う医療機関を明確にするもの。紹介患者に対する医療提供という観点では、両者の役割は重複しており、今後整理する」と説明した。
 織田委員は、紹介率・逆紹介率をともに評価する地域医療支援病院では、逆紹介率を高めるために、特定の医療機関に逆紹介が集中するなどの問題が生じていることを指摘した。
 最後に、病院にはさまざまな診療科があるにもかかわらず、病院単位で医療資源重点外来を位置付けることの問題点を指摘した。織田委員は、「医師偏在や診療科偏在がある中で、人口規模の小さな地域では、機能分化が難しく、専門外来から一般外来までさまざまな機能を担っている病院がある。診療科ごとの違いがある中で病院単位で位置付けることには無理があるのではないか」と質問した。
 これに対し、厚労省の担当者は、「現状のNDBでは診療科ごとの分析には限界がある。現状で定額負担が義務化されている外来では、定額負担が免除される例外規定があり、機能の異なる診療科では、その考え方を適用することが、一つの論点になる」と回答した。

今後の検討スケジュールを示す
 今後の検討事項をみると、①外来機能報告②医療資源を重点的に活用する外来③医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関④地域における協議の場⑤紹介・逆紹介の推進、診療科ごとの外来分析等─が列挙されている(下図を参照)。
 外来機能報告については、NDBを活用できる項目と、できない項目を整理しつつ、具体的な報告項目を検討する。実際の報告については、現状の病床機能報告制度のスケジュールを踏まえ、検討する。医療資源重点外来については該当項目の選定とともに、そのような外来の名称も重要になる。地域における協議の場は、外来機能報告のスケジュールとあわせて、協議の進め方を検討する。参加者は地域医療構想調整会議のメンバーが想定される。

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年11月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/181115.pdf

    2018/11/15 ... ワーキンググループ(尾形裕也座長). は10月26日、厚労省から地域医療構想 ... 厚労省・地域医療構想WG. 公的・公立病院改革プランで進展 ... NDBデータを活用する考えを示した。 課税経費率については、直近の医療経.

  • [2] 財務省の実調分析に反論し大幅プラス改定を主張|第908回/2017 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20171215/news11.html

    2017/12/15 ... 厚生労働省の「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループWG)」が11月29日に開かれ、第3期がん対策推進基本 ... 施設数」は、診療報酬明細書又は調剤報酬明細書がNDBに蓄積されていた保険医.

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年7月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180701.pdf

    2018/07/01 ... ンググループ」(WG)は6月14日、近. 年の訪日外国人増加に伴う医療問題に ... 議に関するワーキンググループ」. (尾形. 裕也座長)は6月15日、地域 ... NDBと介護DBはともに厚労省が. データベースの責任主体となって、 ...

  • [4] DPC評価分科会を入院医療等分科会に統合|第918回/2018年6月1 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180601/news04.html

    2018/06/01 ... ... 入院医療等分科会に「DPC制度」と「診療情報・指標等」の2つのワーキング グループWG)を設ける。 ... 調査の留意点としては、引き続き回答率の向上を目指し、NDBデータの積極的な活用や質問項目の簡素化を進める ...

  • [5] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年6月01日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180601.pdf

    2018/06/01 ... 2つのワーキンググループWG)を設. ける。 ... のWGを置く。DPCのWGと診療情. 報・指標等のWGだ。特に、後者は、. DPCデータにより入院患者の医療必. 要度を測定する ... 答率の向上を目指し、NDBデータの. 積極的な ...

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年5月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180515.pdf

    2018/05/15 ... 合を開き、ワーキンググループWG). がまとめた「重点分野に対応していく. ための課題整理と『7つの柱』の策定. (案)」について議論した。 在宅医療提供者、学術関係者、行政. が一体となって在宅医療の提供体制整.

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