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ホーム全日病ニュース(2021年)第991回/2021年8月1日号日本専門医機構の専門医の広告可能を了承

日本専門医機構の専門医の広告可能を了承

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【厚労省・医療情報提供内容等あり方検討会】現状の56の専門医も広告可能

 厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(尾形裕也座長)は7月8日、日本専門医機構(以下、機構)が認定する基本診療領域(19領域)を医療法に基づき広告できる専門医とすることを了承した。機構の認定が今年秋から始まることを踏まえ、告示を改正する。サブスペシャルティ領域については、機構での議論が深まっておらず、考え方が整理されてから、再検討することになった。現状で広告できる専門医として認められている56の資格名については、引き続き広告することができる。
 医療広告規制の告示改正では、機構が認定する専門医が広告できる専門医であることを基本とする。機構が認定する基本的な診療領域に限ると規定するため、サブスペシャルティ領域を広告するためには、改めて告示改正が必要となる。
 また、機構認定の基本領域の専門医のほかに、「歯科医師の専門性に関する認定を受けた旨」、「厚生労働大臣に届け出た団体が行う薬剤師、看護師その他の医療従事者の専門性に関する認定を受けた者」も広告できる認定制度に含まれる。
 現状で広告できる専門医については、附則において、「当分の間、なお従前の例により、広告することができる」とした。ただし、機構が認定する専門医と同一の基本的な診療領域に該当する旧告示で認めた専門医を同時に広告することはできない。同一の診療領域であれば、機構の専門医名が優先されるという考えだ。
 広告できる専門医として、機構が認定する基本診療領域が基本となり、現状の専門医は附則での取扱いとなったのは、機構の設立趣旨を踏まえ、国民にわかりやすい専門医とするためだ。一方で、現状で広告できる専門医を今後、「広告できない」とすることは困難であり、現状どおり、広告を可能とする。NPO法人消費者機構日本常任理事の福長恵子委員は、「ダブルスタンダードは混乱するので、いつかは統一してほしい」と要望した。
 機構の寺本民生理事長は「専門医を乱立させず、国民にわかりやすいものにするとの観点で、機構は専門医を認定している。一方で、機構が認定しない専門医は、どちらかというと国民にはわかりにくいが、より専門性が高いと言える専門医であり、どちらかが上下という関係ではない」と両者の違いを説明した。
 また、機構認定の19の基本診療領域の中で、総合診療領域は、他の診療領域と比べ、実績が少ない。委員からは、今年秋の段階でどれだけの認定が行われるかの質問があった。
 寺本理事長は、「総合診療医の研修を受けた医師は180人程度だが、新型コロナの影響で研修が不十分だったところもあり、現在80人強の登録となっている。今年秋の認定は100人ぐらいと予想している」と述べた。

医療機能情報提供制度の進捗
 医療機能情報提供制度に関する全国統一的なサイトの構築の進捗状況の説明があった。同制度は、患者が病院などを適切に選択できるようにするための必要な情報を提供するもの。医療機関は、特定の情報を都道府県に報告することが義務付けられ、都道府県はその情報をわかりやすく提供しなければならない。
 これまで都道府県は、独自のやり方で閲覧システムを構築してきたため、「スマートフォン対応や外国語対応など、搭載機能に差がある」、「公表情報の粒度や内容の正確性に差がある」などの問題が指摘されてきた。このため、全国統一的な検索サイトを、厚労省が構築することになり、2024年度までに新システムへの移行を完成させる方針で準備を進めている。
 同日の検討会では、厚労省から全国統一システムの構築に向けた検討結果の報告があった。全国統一システムの基本方針では、情報を報告する病院の負担を軽減させることや、省令・告示が定める公表項目の選択肢は標準化することなどが決まっている。
 その中で、多くの都道府県が独自項目として設定している「難病」については、「国が定める指定難病(333疾病)を標準的な独自項目として設定できる」こととした。
 これに対し、日本医療法人協会副会長の小森直之委員は、「都道府県により、記載する場合と記載しない場合があるのは、全国統一的なサイトを構築する趣旨からみると、おかしいのではないか」と指摘した。厚労省の担当者は、標準的なフォーマットは作成するが、記載するかの判断は現状では都道府県の裁量ということを説明した上で、意見を踏まえ、改めて検討するとの意向を示した。
 また、日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「外来機能報告制度が来年度に施行される。全国統一的なサイトの運用より前に、外来機能報告が行われることになる。病院にとっては、複数の場所に複数の情報を報告することの負担は大きいので、重複する項目を整理するなど整合性を持たせて対応してほしい」と求めた。

医療広告規制の違反事例の分析
 ネットパトロール事業の対応では、前回の検討会で委員から指摘が相次いだ点の回答があった。ネットパトロール事業で、違反が指摘された医療機関が自治体に報告された件数が、2018年度で80件あり、うち16件が「継続対応中」であったことから、「違反事例が放置されている」との指摘が前回の検討会で相次いだ。
 この16件の内容を分析した。それによると、16件のうち、5件が2021年5月31日時点で対応が済んでおり、7件は「一部対応済み」だった。「未対応」は4件あった。4件の具体的な違反内容をみると、「雑誌に紹介された院長に関する記事の掲載」や「著名人・有名人に関する記載」など不適切な事例が多く、虚偽広告など悪質な事例ではなかった。委員からは、決められた指導の手順に基づく厳正な対応を求める意見があった。
 小森委員は、「消費者庁などからの要請で、広告規制に違反しているウェブサイトへの監視体制が強化され、ようやくここまで来たといった印象だ。当初の状況から、消費者からのクレームなどがどれだけ減ったのかという効果がわかるような報告もほしい」と要望した。

 

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