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ホーム全日病ニュース(2021年)第991回/2021年8月1日号外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の評価が論点

外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の評価が論点

外来医療の機能分化とかかりつけ医機能の評価が論点

【中医協総会】初診からのオンライン診療の診療報酬も検討

 中医協総会は7月7日から、2022年度診療報酬改定に向け、本格的な議論を開始している。7月7日の議題のうち、「コロナ・感染症対応」の内容は本誌7月15日号に掲載した。今回は、「外来」の議論を紹介する。外来医療の機能分化から、かかりつけ医機能の評価、初診からのオンライン診療などが論点になった。
 厚生労働省が、外来を取り巻く環境や診療内容・医療費の動向、診療報酬上の評価などを概観的に説明した。その上で、以下のような議論が行われた。
 外来医療の方向性については、政府の社会保障制度改革国民会議の報告書(2013年8月6日)が、「フリーアクセスの基本は守りつつ、…『緩やかなゲートキーパー』の導入は必要」と指摘した。大病院の外来は紹介患者を中心とし、一般的な外来受診は「かかりつけ医」に相談することを基本とするシステムの普及、定着は必須」と明記している。政府はこれを踏まえ、政策を推進している状況にある。
 その場合の「かかりつけ医」は、日本医師会・四病院団体協議会合同提言(2013年8月8日)の定義が想定されている。「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義している。
 そのような方向性のなかで、2016年度に患者が紹介状なしで受診する場合に定額負担が義務化される病院が設定された。現在は、200床以上の特定機能病院と地域医療支援病院が義務化の対象となっている。今後、外来機能報告制度の進捗状況を踏まえ、新たな仕組みとした上で、さらに義務化の病院を拡大する議論が行われる予定にある。
 日本医師会の城守国斗委員は、「外来機能分化の推進では、患者を地域に戻すことが極めて重要だ」と強調した。しかし、再診時の定額負担の徴収は件数が少なく、徴収を求めないことができる患者の状況も詳細に把握されていないことから、逆紹介率の要件を含め、患者が地域に戻る仕組みが重要であるとした。
 日本病院会副会長の島弘志委員は、定額負担を義務化する病院の拡大で、一定額(2,000円程度)を保険給付範囲から控除する方針であることに対し、「新たに定額負担が義務化される病院だけでなく、すでに定額負担が義務化されている病院も、現状の5千円に足して、7千円の定額負担になるのか」と質問。厚労省の井内努医療課長は、「既存と新規のすべての病院が含まれる」と回答した。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「一定額を保険給付範囲から控除するという方針が、手法として理解できない。選定療養の本筋から外れてしまうのではないか」と疑問を呈した。

かかりつけ医機能の評価
 かかりつけ医機能については、地域包括診療料や認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、機能強化加算などかかりつけ医機能を評価する診療報酬の算定状況などが報告された。城守委員は、「次期改定においても、かかりつけ医機能について、より一層の評価が図る必要がある」と強調した(下図を参照)。
 一方、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員は、「かかりつけ医機能をどうするのかが最大の論点になる。患者はかかりつけ医に、ゲートキーパー的な役割を求めている」と述べ、かかりつけ医機能が発揮される形での評価を求めた。その上で、現行の機能強化加算などでは患者の視点が欠けているとし、「次期改定でかかりつけ医機能の評価を抜本的に再構築すべき」と訴えた。
 これに対し城守委員は「フリーアクセスは担保すべき。かかりつけ医を制度化して、かかりつけ医にかからなければ、他の医療機関にかかれない仕組みにすることには反対する」と述べた。
 また、協会けんぽ会長の安藤伸樹委員は、現在の診療報酬については、「負担に見合うメリットが患者に提供されていない」と問題提起。「かかりつけ医機能が果たされることによる患者のメリットを明確にした上で、それに見合う評価を検討すべき」と主張した。
 生活習慣病の評価については、生活習慣病管理料を算定している医療機関が減少傾向にあり、算定回数も増加していないことが厚労省から報告された。城守委員は、「生活習慣病管理料や糖尿病合併症管理料などは、いずれも算定回数は減少傾向である。カルテ・療養計画の記載がボトルネックになっている。もう少し使い勝手のよいものに要件等を見直すことを検討すべき」と提案した。

初診からのオンライン診療
 オンライン診療については、現在は再診で「オンライン診療料」(71点)を算定できるが、対象患者などを限定している。初診からのオンライン診療は算定できない。一方、2020年4月10日からの新型コロナの時限的な対応では、「電話等を用いた場合の初診料」(214点)が算定可能となっている。
 政府は骨太方針で、新型コロナの時限的措置が終了した後にも、初診からのオンライン診療を実施できる方向を示し、規制改革実施計画にも2022年度から初診からのオンライン診療を実施することが盛り込まれている。
 診療側からは、初診からのオンライン診療を解禁することに慎重な意見が相次いだ。城守委員は「オンライン診療は、離島・へき地や難病など、解決困難な要因により医療機関へのアクセスが制限されている場合に対面診療を補完するもの」と強調。「オンライン診療のみで完結する医療はない」と断言し、オンライン診療と対面診療と組み合わせて実施すべきと主張した。
 医政局が開く「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では、規制改革推進会議の委員も参加して、初診からのオンライン診療の要件などを議論している。診療側と支払側の両者の委員から、診療報酬を設定する上で、「営利主義を利することのない仕組み」が必要との意見が出された。

 

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