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ホーム全日病ニュース(2021年)第992回/2021年8月15日号病床の機能分化と医師の適正配置を議論

病床の機能分化と医師の適正配置を議論

病床の機能分化と医師の適正配置を議論

【厚労省・地域医療構想・医師確保計画WG】コロナ禍の状況踏まえ検討

 厚生労働省の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(WG)」の初会合が7月29日に開かれた。前身の地域医療構想WGに医師確保計画の検討が加わった。病床の機能分化・連携の取組みと、地域の医療ニーズに応じた医師の適正な配置を一体的に検討することが狙いだ。地域医療構想はコロナ禍により停滞気味だが、人口減少・高齢化が進展する中で、地域の医療需要に見合った医療提供体制を地域で作る必要性は高まっている。
 検討事項としては、◇地域医療構想策定ガイドラインと医師確保計画策定ガイドラインの改定◇地域医療構想と医師確保計画のガイドライン改定に関連するその他の事項をあげている。座長には、地域医療構想WGと同じく、尾形裕也・九州大学名誉教授が就いた。
 地域医療構想・医師確保計画WGは、外来医療機能等WG などとともに、「第8次医療計画等に関する検討会」に所属する。都道府県が策定する医療計画の中に、5疾病・6事業および在宅医療の医療体制と併せて、地域医療構想や医師確保計画、外来医療計画などが含まれており、改正医療法の成立を受け、会議体の組換えが行われた。
 地域医療構想ガイドラインは、各地域の構想区域で適切な取組みが進むように都道府県が参考とするもので、地域医療構想の国の考え方が示されている。厚労省はその考え方を実現させるため、例えば、診療実績の乏しい公立・公的病院を診療実績データにより割り出し、該当した病院に対して、病院の再編統合を進めることの検証を要請するなどの取組みを進めてきた。
 しかし、コロナ禍により、公立・公的病院の再編統合の再検証期限が延長となり、今に至る。補助金を活用した重点支援区域などでの取組みは強化しているが、停滞感は否めない。
 初会合では、委員から、新型コロナの感染拡大により、地域医療構想における機能別の適切な病床数だけではなく、感染症対応のための病床確保をどうするかという論点が出てきたことから、実態を改めて把握し、必要ならガイドラインを見直すべきといった意見が相次いだ。
 全日病会長の猪口雄二委員は、地域医療構想を推進するための取組みにおける意思決定が地域によっては歪められている現状を指摘した上で、「都道府県の医療審議会や構想区域の調整会議の法的権限をもう一度整理し、関係者に明らかにしてほしい」と要望した。
 全日病副会長の織田正道委員は、地域医療構想における機能分化の前提となっている、高度急性期・急性期・回復期・慢性期の区分に関する提案を行った。具体的には、「病床全体では、急性期が過剰で、回復期が不足しているとのデータが示される。しかし、病院にとって、回復期は選びづらい。一方で、急性期の中には、サブアキュートがかなり含まれ、地域包括ケアの機能を担っている。そこで、『地域包括ケア機能』を4機能に加えれば、病院からの理解が得られやすくなるのではないか」と述べた。

医師偏在対策を強力に進める
 医師確保計画については、強力な医師偏在対策を実施し、医師少数区域等において必要医師数を確保することを目指し、これまで「医師需給分科会」で議論が行われてきた。しかし、次期医師確保計画の策定に向けては、同WGで議論を行うことになった。
 医師需給対策の中では、医学部定員における地域枠の拡充や、医師少数区域等で勤務した医師を認定する制度に期待が集まっているが、効果が発揮されるのは、卒業し医師になり、臨床研修を経験し、一般的な医師養成課程を終えてからなので、時間がかかる。
 猪口委員は、「医師確保計画では、医師少数区域等に医師が移動することを促す施策が検討されることになる。その場合に、どの診療科の医師がどれだけいるかをきちんと把握すべきだ。また、総合医の位置づけが重要になる。総合的な診療能力を持つ医師が増えれば、医師少数区域等で大変役に立つ。ぜひ、そのような医師の機能を考えた医師確保計画の議論をお願いする」と述べた。
 そのほか委員からは、「医師不足地域にある大学の医学部定員増を認めるべき」、「医師少数区域等を判断する大変重要な指標である医師偏在指標は最新データで更新すべき」、「若い医師に魅力のあるキャリアパスを示さなければ地域に医師は定着しない」、「人口の高齢化だけでなく、医師の高齢化も考慮する必要がある」などの意見があった。
 今後の予定として、地域医療構想については、各地域の状況を把握しつつ、地域の協議・取組みの促進策を検討する。来年夏以降に、2025年以降を見据えた枠組みのあり方を検討する。医師確保計画についても、現状を把握しつつ、次期医師確保計画ガイドラインの改定に向け、来年中にとりまとめを行う予定だ。

 

全日病ニュース2021年8月15日号 HTML版

 

 

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