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ホーム全日病ニュース(2021年)第992回/2021年8月15日号医師の働き方改革に対応するため、診療報酬の評価を検討

医師の働き方改革に対応するため、診療報酬の評価を検討

医師の働き方改革に対応するため、診療報酬の評価を検討

【中医協総会】地域医療体制確保加算や医師事務作業補助体制加算の拡充求める

 中医協総会(小塩隆士会長)は7月21日、2022年度診療報酬改定に向け、個別項目の議論を行った。個別項目は、「働き方改革の推進」、「医薬品の適切な使用の推進」、「不妊治療の保険適用」、「歯科用貴金属材料の基準材料価格改定」。第一ラウンドでの議論であるため、まだ具体的な論点は示されていないが、診療側・支払側の委員からは、全体的な課題についてさまざまな意見が出された。

医療の質下げずに働き方改革に対応
 「働き方改革の推進」への対応が2020年度改定に引き続いての重要課題となっているのは、勤務医の過重負担が解消されていない状況で、2024年度から医師に対する時間外労働上限規制が適用されるためだ。時間外労働規制の特例水準の指定を受けない病院は、勤務医の時間外労働時間を年間960時間以内(休日労働を含む)に収めなければ、法律違反となってしまう。
 2020年度改定では、この問題に対応するため、さまざまな改定を行った。特に注目されたのが、「地域医療体制確保加算」(入院初日520点)である。勤務医の負担軽減など適切な労務管理等を実施することを前提に、救急医療体制の実績がある病院を対象にした。具体的には、年間の救急自動車・ドクターヘリによる搬送件数が2千件を超える病院が対象となった。
 地域医療体制確保加算の要件は満たせず、このままでは医師の時間外労働時間規制に違反してしまう病院に対しては、地域医療介護総合確保基金による補助金で支援する仕組みも設けた。
 地域医療体制確保加算の算定状況をみると、2021年3月時点で940病院。400床以上の病院が6割近くを占める。算定回数は各月60万回前後で推移している。2020年度診療報酬改定では、本体改定率0.55%のうち、0.08%を地域医療体制確保加算等に充てるために措置した。見込みに近い回数で診療報酬が算定されていると計算できる。
 日本医師会常任理事の松本吉郎委員は、「地域医療体制確保加算がさらに有効に活用されて、継続していくことが大事」と述べる一方で、地域医療介護総合確保基金については、「使い勝手が悪い」と指摘。「救急搬送が2千件未満の病院でも、過酷な医療現場となっている病院が多くある」と述べ、地域医療体制確保加算の拡充など診療報酬での対応に切り替えるべきであると主張した。
 また、医師の働き方改革への対応を図る上で、「勤務医の勤務環境の改善は長年の課題だが、大切な視点は勤務医の勤務環境の改善だけではなく、医療の質を落とさないことだ。医療現場を支えるための評価をお願いする」と強調した。支払側の委員とも「医療の質を落とさない」という点では、意見が一致した。
 診療側の主張は、医師の労働時間短縮を図ることで、大学病院などが市中病院に医師を派遣するのが困難になり、地域医療を脅かす状況を避けるということに重きを置いている。これに対して、支払側の主張は、医療の質を担保するために、入院料などの人員配置基準を緩和することは慎重に検討すべきという意味での発言が多かった。
 勤務医の負担軽減の方策として、大きな期待が寄せられているのがタスクシフト・シェアである。診療報酬では特に、医師事務作業補助体制加算の効果が中医協の検証調査で確認されている。数次の改定を経て、拡充を図ってきた。松本委員は、「拡充されてきたことは評価しているが、急性期医療での対応が中心であるので、算定対象が広がるよう要件を見直すべき」と主張した。日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「回復期や慢性期でも算定できるようにすることが必要」と述べた。
 日本病院会副会長の島弘志委員は、2020年度改定で診療報酬の医療従事者の常勤配置・専従要件の要件緩和が実施されたことを踏まえ、「医療従事者が偏在している。医療の質が低下しないことを前提に、柔軟な対応が可能となるよう、さらなる緩和を検討してほしい」と訴えた。
 池端委員は、特定行為研修を修了した看護師の養成について、10万人を目標としていながら、足元で滞っていることを指摘した上で、「急性期での養成が中心になっている。慢性期、在宅、介護施設で活躍できる特定看護師が増えるような評価が必要だ」と主張した。
 なお、長時間労働が常態化している勤務医負担軽減の対応策については、2020年度改定以前にも、さまざまな対応を講じてきている(左図を参照)。

 

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